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    2025.07.31

    モンゴルの大草原で“風になった”!? 憧れの「フリースタイル」乗馬ツアー体験記

    モンゴルの大草原で“風になった”!? 憧れの「フリースタイル」乗馬ツアー体験記
    椎名誠さん監督の映画『白い馬』が公開されたのは1995年。モンゴルの草原を舞台に少年と馬の友情を描いたこの作品のキャッチフレーズは、「少年と馬は、大草原の風になった」でした。

    それから30年が経ち、私自身も「少年」という年代からはずいぶんトシをとってしまいましたが、モンゴルの草原を馬で走るという長年の夢をこの夏に叶えることができました。笑止千万な表現を許してもらえるなら、私も「大草原の風」になりました。

    とは言っても、私が夢を実現させるために苦労をしたわけでも努力をしたわけでもありません。モンゴル語はまったく話すことができないままですし、それまで馬に乗った経験もほとんどありませんでした。

    そんな私がモンゴルの草原で馬に乗ることができたのは、『風の旅行社』という詩的な社名を持つ旅行会社が運営する乗馬体験ツアーに参加したからです。さらに言えば、そのツアーを見つけてくれた妻のおかげです。「モンゴルなら俺も行きたい」とついてきた息子も加えて、久しぶりの家族旅行でもありました。

    空港から草原へ直行直帰。「拍手絶賛パチパチ」したい団体ツアー

    風の旅行社直営キャンプ村『ほしのいえ』。

    風の旅行社はモンゴルを始めとして、チベットやネパールなど、個人では訪れることが難しそうな地域を中心にさまざまなツアーを提供しています。

    今回、私が家族ともどもお世話になった『ほしのいえセレクト乗馬6日間』ツアーは、日本旅行業協会(JATA)による「ツアーグランプリ2025」において大賞にあたる国土交通大臣賞を受賞しました。つまり、日本一のツアーに選ばれています。私もまったく同感です。

    このツアーの特徴のひとつは5泊6日の期間中ずっと遊牧民の伝統的な住まいであるゲルに宿泊することです。初日はチンギスハーン空港に到着後、すぐに草原のキャンプ村へと向かい、最終日はキャンプ村から空港へ戻ってきます。市内観光もショッピングもありません。

    残りの4日間の予定はすべて終日、草原乗馬。きわめてシンプルです。無駄なものは何ひとつありません。

    その代わり、ツアー期間中はいつも草原の風に吹かれています。ゲルを出ると、目に入るものは見渡す限りの草原、ゆっくり移動していく動物たちの群れ、そしてどこまでもくっきりと青い空と白い雲。夜になると、一面の星空です。

    草原に放牧されている牛。

    モンゴル遊牧民への羨望と憧憬

    さて、馬についてです。ゲルが立ち並んだキャンプ場のそばには簡単な柵で囲まれたスペースがありますが、早起きの私が散歩をしていた早朝は空っぽでした。

    やがて、遠くから馬の群れがやってくるのが見えました。その後ろに1台のオートバイがゆっくりと馬を追い立てているようでした。馬たちが柵の中に入りました。オートバイに乗っていたのは少年とも青年ともとれる若い男性です。

    日本語を勉強中というチョギ君(と、私には聞こえました)によると、私たちツアー客がその日乗るための馬を連れてきたとのこと。どこから?と聞くと、「あっちの山の向こうから」と数キロ先はあるだろう丘陵を指さして教えてくれました。

    このツアーには日本人の添乗員が2人、日本語を話せるモンゴル人ガイドが3人、キャンプ村の管理と料理を担当するスタッフ数人に加えて、馬を手配し、乗馬のサポートをしてくれる遊牧民が10人ほどいました。チョギ君はそのひとりです。

    チョギ君と筆者の息子。

    後から徐々に分かってきたことですが、私たちが乗る馬たちはキャンプ村で飼われているわけではなく、旅行社が周辺の遊牧民から夏の間だけ借りているのだということです。

    こうして朝に集められ、乗馬の時間が終わる夕方にはまた草原に放たれます。夏以外の季節はずっと放牧されています。人間からエサも水も貰わず、ずっと草を食べて生きています。

    そんな半野生でありながら、私のような乗馬初心者でも背中に乗せて歩いてくれるのですから、モンゴル馬の性質は驚嘆するべき従順さです。むろん、人間と同じように、馬にもそれぞれ個性があります。大人しい馬もいれば、荒々しい馬もいます。

    私にはまったく見分けがつきませんが、馬に熟知した遊牧民スタッフが、初心者にはこの馬、上級者にはその馬と、それぞれのレベルに合わせた馬を選んでくれます。

    遊牧民に介添えされながら騎乗する筆者。

    なかにはどうしても言うことを聞かない馬もいれば、逃げ出す馬もいます。そんな馬はツアー客には回りません。遊牧民がまるでロデオのような荒馬慣らしをするところを何回か目にしました。

    群れから逃げ出した馬を追いかけ、長い竿の先端につけたロープで引っ掛けるシーンもありました。まるで映画のようで、カッコイイ!以外の言葉が思いつかず、今でも脳裏に焼き付いています。

    実を言いますと、私の前世はモンゴル人だったのですが、来世はまたモンゴル人になるぞと心に決めました。

    逃げ出した馬を追いかける遊牧民スタッフ。

    一生の思い出に感謝

    私の乗馬技術ですが、一応は上達しました。ツアー企画者の山田基広さんが日本人向けに練り上げた乗馬練習プログラム「モリン・スクール」(モリン=馬の意味)のおかげで、トコトコと歩くだけではなく、パッカパッカと走らせることもできるようになったのです。

    もっとも、風のように草原を馬で駆け抜けている、とはあくまで主観に過ぎません。あとで山田さんが並走しながら撮影してくれた動画を見ると、せいぜい小走りってところでした。私はランナーでもありますので、たぶん自分で走った方が速かったと思います。

    乗馬以外では、モンゴル人とモンゴル相撲をしたことも良い思い出です。

    ある日、朝食の後にゲルの外でのんびりとしていると、「カクタニさん親子はちょっとこっちに来てください」と山田さんからお声がかかりました。何だろうと思いながら行ってみると、この辺で一番強いという青年を含めて、放牧民スタッフが集まっていました。

    馬たちが繋がれた広場の一角で、日本人アホ親子対モンゴル遊牧民の親善マッチが始まりました。突然のことでココロの準備もウォームアップもできていませんでしたが、私は故アントニオ猪木さんに心服しています。「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」のです。モンゴル相撲、負けましたけど。

    ご存知の通り、モンゴルは人口わずか約350万人でありながら、大相撲の横綱を6人輩出しています。世界一の相撲どころかもしれません。そんな彼らの強さの秘密は大草原で動物たちを相手にしてきた生活そのものにあるのだな、と肌で感じることができました。

    熱戦中の筆者(右側)。
    戦い終えた力士たち。左から日本人、モンゴル人、日本人、モンゴル人。

    日本人の祖先がどこから来たか、については諸説がありますが、DNA研究ではモンゴル高原を移動していた人々と共通している点が多いそうです。実際、モンゴルで出会った人たちの顔立ちは驚くほど親近感がありました。

    旅から帰って1か月近く経った今でも、私の心はまだモンゴルの草原にあります。ツアー関係者の皆さんに心から感謝するとともに、読者の皆さんにも強く、強く、お勧めしたいと思います。

    風の旅行社『ほしのいえセレクト乗馬6日間』ツアー:
    https://www.kaze-travel.co.jp/mn-sp-67.html

    角谷剛さん

    米国在住ライター(海外書き人クラブ)

    日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員

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