71歳にして、やっと名もなき桜たちに思いを馳せられるようになりました
ウリウリばあちゃんの田舎暮らしに春がやってきた。桜の花に山菜。山の春は、ばあちゃんの生活に潤いを与えてくれます。

いつのまにか4月です。この記事が公開されるころは4月も終わり、5月に入るころでしょうか。
世界も日本もそれなりに大変ですが、私のまわり数キロはこの上なく平和です。様々なことに思いを巡らせつつも、森の安泰をありがたく享受させていただきます。
皆さんがこれを読むころは、桜の花はすっかり散っているところも出てきているのでしょう。ただ今、 おらが山は桜があっちこっち満開です(編集部注※2026年4月半ば)。この時季、桜を求めて右往左往している皆さま、 普通に里山へ行ってごらん。
あっちもこっちも、桜が咲いてるよ。
ソメイヨシノばかりが桜じゃないし、昔々の人々も愛でたであろう、名もなき桜たちを愛でるのも良いものだと思う。
71歳にして、やっと名もなき桜たちに思いを馳せられるようになりました。
さて、私は染め物などを生業としています。 桜の開花頃の枝を煮出して染めると、この桜色が染まります。 桜が咲くぞというエネルギーを溜め込んでいるんでしょうか?
山桜を枝を煮ます。 飽きずに、飽きても辛抱強く煮ます

難しいことはわかりませんが、綺麗な桜色はありがたいので遠慮なくいただきます。
まず、我が家のまわりにある山桜をちっといただきまして、煮ます。 飽きずに、飽きても辛抱強く煮ます。

途中は省略しまして。
布が桜色になったら、最後に灰汁(あく)で色の発色と定着のために媒染をします。終わったらよく洗ってから天日干しして出来上がりです。
桜染めは桜が咲く前の私のお花見みたいな感じかな

私は以前、小さなアパレル会社の糸を染めていたことがあります。色見本が届いてこのとおりに、この糸を10キロくらいだったかな? 染めてくださいと言われて送られてきました。
化学染料の場合はまず目指す色があって、その色に向かって色の調合をして染めていきます。まあいろんな染料を混ぜてライブ感覚で作る人もいるでしょうけど。商用の場合はその色に向かって染めるんだと思う。
草木染めの場合は大まかに赤っぽい色、茶色、青色くらいの目星をつけて染めます。染める木や草の状態や使う水の状態などさまざまな要因で、色は微妙に変わります。
本当に草や木で染めるということは、染めるたびにたくさんの気づきがあって楽しいものです。この桜染めも然り。
私の家では綺麗な桜色に染まりますが、染め物教室をしていたときに行なった桜染は桜色には染まらなくて、薄い茶色っぽい色にしかなりませんでした。
教室も我が家も井戸水です。何かわからないけど、水の種類といえば硬水と軟水というのがありますが、そういう違いなのでしょうか。
桜の木で桜色を染めようというイベントだったので、桜色が染めらなくて少し焦ってしまいました。煮出していても桜色はでず、仕方ないので最後の灰汁で媒染を始めました。
灰汁につけると少し赤味が出ます。しかも我が家の水で作った灰汁だったので、それも良かった。かろうじて、桜色になりました。
皆様も桜の木が手に入ったら染めてみてください。

それから、知人の家で八重桜の花びらをいただいたので、塩漬けにしておきます。お茶やお饅頭や甘酒にトッピングします。

桜が咲いたら、色んな山菜がぼちぼち出てきます
桜が咲く前に、まず、フキノトウやツクシ。開花とともにワラビやハス、タンポポ、ドクダミの葉、遅れてコゴミ、そのほかそのへんの草も、食べてみたらそれなりに美味しい。
桜の花が散りかけるとタラの芽が出ます。
我が家のまわりでも、気の早いタラの芽がぼちぼち芽を出してきました。

この森へ住んで34年、まわりにあるたくさんのタラの芽を34年間とり続けています。山の上にも34年。自称タラの芽とり名人!の一歩手前と自負しています。

私の身長は150cmです。まわりのタラの木は、2mから3m以上のものもあります。
幸い、タラの木はすくすくと伸びて、バネのように弾力があります。てっぺんについているタラの芽をとって、エイヤっと手を離すと勢いよく跳んでいきます。
棒高跳びの棒を想像してください。私は棒高跳びを見るたびにタラの芽とりを想像してしまいます。
いえ、タラの芽をとるたびに棒高跳びを想像してしまいます。タラの木でエイヤっと森の中を自在に跳んで駆け巡れそうな。
しかしですねえ、棒高跳びの棒にはトゲはありませんが、タラの木にはかなり硬いトゲがついています。
タラの木を扱う時は、帽子が必須です。これは、恐ろしい私の体験でございます。
タラの木というのは、芽が出ていないときはただの不細工な木です。しかも、不細工な木には硬いトゲまでついている。ああ邪魔くさい。オフシーズンは本当に要らん子扱いです。

タラの木が要らん子のシーズンに、草取りをしていました。
要らん子ではあるのですが、宝の子にもなるので、うっとおしいと思いながらタラの木を避けたつもりが、バネのように勢いよく私のデコめがけてきました。やばい!
邪険に扱ったタラの木の仕返しだったのでしょうか…。 勢いが良かったのでタラの木のトゲがぐさっと、私のおでこに刺さりました。
しっかりトゲが私のおでこに納まってしまいして。自力で抜けそうもないので、病院で抜いてもらいました。「抜けた!」と、気のいい優しい先生がおっしゃいました。やれやれと、私も安堵しました。
が、その後。
心優しい先生は申し訳なさそうに、「抜けたんですけど、血がかなり出てきました」と、私のおでこを抑えつつおっしゃった。外科、内科など、よろずに診ていただける医院です。血ぐらいいっぱい見てるだろうに、そこまで青い顔しなくてもいいのにと、こっちまで恐縮してしまいました。
そう言うわけで、タラの木はバネのような柔軟性があります。
よって、かなり高い木の上の芽も2本のタラの芽とり棒を引っ掛けて、その上にまた引っ掛けてと、交互に木を手繰り寄せると芽がとれます。
この棒はまっすぐ伸びている細からず、太からずの木、1mから1.5mくらいで下部分にしっかりした枝がついているもので作ります。
ほとんどの食べ物は大きいほど大味で美味しくないことが多々ありますが、タラの芽は大きい方がふくふくとして美味しいです。
ふっくら大きくなるのは一番芽です。一番芽が美味しいです

タラの木はある程度大きくなると枯れてしまうようです。かなり太くなった木はしならないので、取るのも大変です。太くなったら枯れるのも近いし、木ごと切って芽だけいただきましょう。
この太い木のタラの芽は絶品です。しかも、お宝がわんさかついている。タラの芽はやっぱり天ぷらでいただくのが一番美味しい。山菜の野生味と油料理はとっても相性が良いように思います。
その次に、この風味をカマドご飯で味わいましょう。私の好きな食べ方です。お釜の中に季節の風味を閉じこめていただく。山に住んでいる醍醐味です。

桜染めで、春を取り込む。そして、タラの芽や山菜をいただいて、寒さに縮こまっていた体も気持ちも春モードにしましょう。
それから、森の木々と共に芽吹き、大きく芽を膨らませ、私たちもどんどん春から新緑の季節へ、ズンズン膨らんでいきましょう。
森の中から、小鳥たちも気持ちよくさえずっています。そのさえずりの中からホーホケキョと、幾度も念をおすように、ウグイスが鳴いています。
我が家の桜が満開です。
我が家を見守ってくれる頼もしい木です。
一年で一番好きな時です。
森のみんなも、きっと同じ気持ちだと思います。

※文、写真/ウリウリばあちゃん





