総距離400kmのロングトレイル!台湾の名物行事「媽祖繞境」をご存じですか? | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.04.18

総距離400kmのロングトレイル!台湾の名物行事「媽祖繞境」をご存じですか?

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(写真提供:臺中市政府文化局)

台湾に、ディスカバリーチャンネルに「世界三大宗教行事」のひとつと紹介されたイベントがあります。その名も「媽祖繞境(マーズーラオジン)」(媽祖巡礼)。

参加した人にどんなイベントなのか聞いてみたところ

「10日間かけて総距離340kmを歩くよ」

…それってもはや宗教行事ではなく、完全にアウトドアイベントなのでは?!

台湾の「国民的女神様」 媽祖って何者?

「媽祖巡礼」で信仰の対象となっているのは、その名のとおり「媽祖(まそ)」です。媽祖は台湾で「海の女神」として親しまれている神様。台湾の人口約2300万人のうち約1800万人が媽祖を信仰しているとも言われるほど。もはや「国民的女神様」と言っても過言ではありません。

媽祖。「天上聖母」などの別名もあります。

実は媽祖は実在の人物だと言われています。一説によると、10世紀中頃に中国大陸福建省の甫田県に住んでいた林氏の六女「林黙娘(リンモーニャン)」がその人だとか。誕生日は旧暦の3月23日だそうで、経歴も誕生日もずいぶん具体的です。

彼女は幼少の頃から賢く、神術を操り、海難事故から人々を救ったという伝説を持っています。28歳になった時、泣いて引き止める家人に別れを告げ、「人々を救わん」と海に入り、天に召されたそうです。その後、故郷の人々が彼女を祀る廟を作り、それらはやがて民間信仰として定着していきました。

媽祖が祀られている「台北天后宮」。

海の守り神となった媽祖は、主に台湾の人々からの篤い信仰の対象となっており、台湾全土には1000以上の媽祖廟があるそうです。中国沿海部や台湾にあるおびただしい数の媽祖廟は、人々がいかに媽祖を崇拝してきたかを物語っています。

それぞれの媽祖廟で大小さまざまなお祭りが行われていますが、ディスカバリーチャンネルで紹介された巡礼は台中市の大甲(ダージア)にある鎮瀾宮(ジェンランゴン)のもの。

媽祖を主神として祀っているこのお宮が出発点となって、神輿に乗せられた媽祖が往復約340㎞移動し、9日後に同じ場所に戻ってくる大規模な巡礼が行われます。

そして大甲鎮瀾宮の巡礼と並んで有名なのが、苗栗(ミャオリー)県の白沙屯(バイシャートゥン)にある拱天宮(ゴンティエンゴン)の巡礼。

白沙屯拱天宮を出発した媽祖と、後に続く人たち。(写真提供:苗栗県政府文化観光局)

こちらはもっと距離が長く、総距離400㎞。白沙屯拱天宮の巡礼は毎年、旧暦の1月~4月のどこかで行われますが、具体的な日時は旧暦の12月15日に白沙屯拱天宮で行われる「台湾式占い」によって決まります(鎮瀾宮の巡礼日時決定は毎年旧暦の1月15日)。

白沙屯拱天宮の巡礼は、所要日数も占いで決まります。2026年の所要日数は7泊8日。大甲鎮瀾宮の巡礼よりも60kmほど長距離なのに、日数は2日も短いという超ハードスケジュール。結果的に、移動はかなりの高速になります。

白沙屯拱天宮のほうが遠くから出発。どちらも台湾南部の嘉義県まで行って折り返します。

媽祖の乗り物(神輿)にかけられている布がピンク色であることと、その迅速な移動速度から、白沙屯拱天宮の巡礼には「ピンクのスーパーカー」との異名もあるほどです。

このように、台湾の二大巡礼として知られる大甲鎮瀾宮と白沙屯拱天宮の巡礼。2025年に筆者もこの大規模な行事(の一部)に参加してみました。この「宗教行事でもあり、壮大なトレッキングでもある」という不思議な行事の魅力を、たっぷりとご紹介しましょう。

総勢100万人が参加

筆者が参加したのは白沙屯拱天宮の巡礼。巡礼に参加する人数は年々増えており、2025年には30万人以上が参加しています。ちなみにこの数、「事前に一度拱天宮に出向いて参加登録を済ませ、正式に参加した人数」だけで30万人以上。実際には筆者のように飛び入りで一部区間だけ参加する人も相当数いるので、実際には総勢100万人が参加していると言われています。ものすごい規模。

参加登録をすると、このような腕章や各種グッズがもらえます。登録料は700元(約3,500円)。

神輿は、京都の祇園祭の山鉾のようなものを想像していたのですが…意外と小ぶり。関係者が数人で担ぎ、そのあとを数十万人の人たちが付き従って歩きます。

人の背丈よりもやや小さいぐらいの神輿。ここにご本尊が乗っています。

道中は至れり尽くせり

筆者が参加したのは8日目、復路の中盤にあたる一部区間。距離にしたら3㎞ほどでしょうか。

短い距離ではありますが、参加した区間には、マラソン大会のエイドステーションのようなブースが延々と続いています。食べ物を提供してくれるブース、巡礼グッズを販売しているブース、なぜか全く関係なさそうな日用品を販売しているブース、そして歩き疲れた人のためのマッサージブースなど、ブースの内容は多種多彩。

巡礼グッズを売るブース。

所々にトラックが待機。これ以上は歩けない!という方を次の拠点まで運んでくれます。ありがたい。乗っている人も結構いました。

「疲れたら乗ってね!」というフレンドリーな垂れ幕を掲げて走るトラック。

そして、すごいのは人の数。人、人、人…。どこを見渡しても人だらけ。巡礼に参加する人たちも、ブースで食べ物を提供している人たちも、一様に明るい笑顔。媽祖の巡礼に参加できることを、心の底から喜んでいる様子。媽祖のポジティブパワーがすごい。

媽祖ははるか先。人しか見えません。

小学生低学年ぐらいの男の子たちも参加していました。背中に「1歳の時から媽祖の巡礼に参加しています。今年はお兄ちゃんと一緒に、復路の踏破を目指します」と書いてあります。往路と復路で200㎞ずつと考えると、復路踏破とはすなわち200㎞を踏破するということ…!頑張れ!

しっかりとした足取りで歩いていた幼い兄弟。

なお、白沙屯の巡礼路線は、事前にある程度決まっています。あくまでも「ある程度」。進捗と行き先は当日の状況…というか、媽祖の思し召し次第で随時変更されます。突然、一般の民家に入っていくことも。媽祖が立ち寄った家には幸福が訪れると言われているので、立ち寄られた住民たちは大喜びです。

そんな自由気ままな巡礼路線だと、途中から参加する人はいつどこに行ったらいいんだ?と思っていたら、友人が教えてくれたのは「媽祖アプリ」。「参加したいのに、ご本尊がどこにいるかわからない!」という事態を防ぐため、なんとアプリが開発されています。

専用アプリをダウンロードすると、「媽祖の現在地」「本日の駐屯予定地」を知ることができます。さすデジタル大国台湾、巡礼までもがDX化されているんですね…。

こちらは大甲鎮瀾宮巡礼用のアプリ。

2026年、二大巡礼がいずれも4月に

媽祖信仰は中華圏の他の国・地域にもありますが、ここまで大規模な巡礼が行われているのは台湾だけ。一部区間参加するだけでも、台湾の人たちの信仰心の篤さとおもてなし精神を感じることができます。

白沙屯拱天宮と大甲鎮瀾宮の二大巡礼、今年はどちらも4月中旬~下旬に開催されます。二大巡礼の日程が重複するのはかなり珍しいそう。今年は、媽祖と一緒に台湾中部400㎞を踏破してみては…!

<白沙屯拱天宮>
苗栗県通霄鎮白東里2鄰白東8号。2026年の巡礼は4月12日~4月20日に開催。
Facebook公式ページ:https://www.facebook.com/bstmz/?locale=zh_TW

<大甲鎮瀾宮>
台中市大甲区順天路158号。2026年の巡礼は4月17日~4月26日に開催。
Facebook公式ページ:https://www.facebook.com/Dajiamazu/?locale=zh_TW

市川美奈子さん

台湾在住ライター

静岡県出身。一児の母。民間企業を経て2013年から行政機関で勤務、2023年4月から台湾に駐在。台湾の文化や風習に魅了され、台湾に関する記事を多数執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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