【写真家・三井昌志さんに聞く:後編】「あなたたちはすごいんだ」と、写真に託して伝えたい思い | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

海外の旅

2016.05.25

【写真家・三井昌志さんに聞く:後編】「あなたたちはすごいんだ」と、写真に託して伝えたい思い

Text

india16-07

アジアの国々をバイクを借りて自由に旅しながら、働く人々の魅力的な写真を撮り続けている写真家、三井昌志さん。インタビューの後半では、三井さんにとって4周目となるインド全土をバイクでめぐる旅の中で、写真を通じて見つけたもの、感じ取ったことについて、お話を伺いました。

——インドをバイクで回る旅も今回で4周目ということですが、出発前に「今回はこうしよう」というイメージのようなものはあったんですか?

三井:場所的にこのあたりを中心に、というイメージはありましたね。今回はインドの北西部、グジャラート、ラジャスタン、パンジャーブのあたりで時間の配分を厚めにしました。

——インドの北西部、どうでしたか?

三井:面白い。あのあたりの人たちはパキスタンの人たちの顔立ちに近くて、まあ、かっこいいんですよ。男の人たちが。無駄に(笑)。素敵だなあと思える人たちがいっぱいいます。すごく親切だし。グジャラートとか、インド国内の工業生産の4割近くを担っているような場所なのに、昔ながらの遊牧民みたいな、頭にターバンを巻いた白装束のおっちゃんも大勢いるんですよね。特にグジャラートの半島部は面白かったです。観光客も全然いない。ラジャスタンは観光地が多いので、観光客もいっぱいいましたけど。

india16-08

——写真を撮るにあたって、何かテーマにしていたことは?

三井:今回は「働く人」と、それから「色」というものをテーマにしていました。今までの旅でも色はずっと意識していたんですが、今回はインドの人々がまとっているサリーの色や、染色工場で働く人々の姿などを撮る中で、インドの「色」の美しさを自分なりに残せたらいいなと。

——撮影の際に何か新しい試みはされましたか?

三井:僕の場合、表情のある人物写真を撮る時は、出会ってすぐに一瞬で撮る場合が多いんですが、今回、働く人たちの現場に密着して撮る時は、同じ工場に3日間通うということもしました。工場のオーナーと仲良くなって、働いてるおっちゃんたちも僕が撮影していることをわかって……という状況を作るようにしたんです。旅を通じて何カ所かで、ですけどね。そこまで密着して撮りたいと思える工場も、なかなかないんですけど。

——同じ現場で時間をかけて撮る中で、どんなことを感じましたか?

三井:いろんな情景の写真を複合的に見てもらう時には、「こういう場所でこの人たちは働いて生きているのか」ということを、より深いアプローチで届けられるかなと思いました。ただ、そうは言っても僕は、その工場で何千枚と撮る中でも「一枚」を求めているんですけどね。その一枚でこの情景のすべてを一瞬で伝えられるような写真……それが可能なら、写真というメディアの持つ一番の特性を最大限に活かすことができる。僕が工場に何日も通い続けたり、何カ月も旅をしたりするのも、そのためです。伝えたいことを一枚に凝縮したいという目標は常にあるんですが、うまくいく場合もあれば、そうでない場合もあります。

——時間と枚数をかける中で、「これだ」という一枚を求めていると。

三井:でも面白いのは、僕の場合、同じ工場に3日間通ったとしても、結局選ぶのは最初の頃に撮った写真なんです。他の写真家の方々はどうなのかわかりませんが、僕の場合は、「うわー、これすごいなー」と思った時のテンションで撮った写真が一番いい出来なんですよ。もう1日、あともう1日、と同じ場所で粘っても、なかなかそれを超えるものは撮れないです。

india16-09

——同じ場所に通い続けていると、そこで働いている人たちも三井さんのことを受け入れてくれるようになりますか?

三井:それはありますね。最初は撮られている意識や緊張感も相手から感じますけど、2、3日経ったら全然気にされなくなります。でも、必ずしもそれがいいとはかぎらない。自分は撮られてるぞっていう意識が相手に少しある方が、実はうまくいったりする。そこは微妙なところなんですけど。

——そもそも自然な写真って何なんでしょうね?

三井:難しいですよね。写真家がいる時点でその場所に介入しているわけですから、まったくの自然な表情にはなりえないんですよね。ある程度作られた自然さというか、意識してないように見せている写真というか。僕はどちらかといえば、写真家が介入していることが前提になっている写真の方が好きだし、潔いと感じます。「カメラ目線の写真はダメだ」という人もいますけど、そんなことはないんじゃないかな。相手がこちらを見つめている写真は、結構いいものだと僕は思うんです。そのあたりをうまく処理している写真家の方は、優れた写真を撮っていますよね。

NEW ARTICLES

『 海外の旅 』新着編集部記事

ブルネイの無人島で枯れ木を集めてバーベキュー!綺麗な海を探検隊が独占

2026.10.31

ブルネイのワイルドすぎるジャングル飯!燃料も調理器具も「現地調達」が基本です

2026.10.30

野生の猿も出没!ブルネイでは首都の中心地にある公園で本格的なジャングル・ハイキングが楽しめます

2026.10.29

アメリカの首都から日帰りで紅葉狩り。シェナンドー国立公園を走って歩いて絶景を探せ!

2026.10.28

ヨーロッパの大河・ライン川をたどって目にしたものとは?「もうひとつの源流」にバイク&ハイクで行ってみた

2026.10.27

アメリカ・ユタ州の「小さなスイス」でサウナと露天風呂体験。秋風を感じながら“ととのう”休日

2026.10.26

大きなパンプキンの下で。ロサンゼルス郊外の「馬の町」を見下ろすハイキングに行ってきた

2026.10.25

SUPで行く対岸のローマ浴場!トルコのエーゲ海沿岸で満喫する天然温泉

2026.10.25