有名温泉地である草津。近年また人気が高まり某有名旅行サイトで「もう一度行きたい温泉地」ランキングに3年連続で1位に選ばれています。ホットな温泉地ですが、標高約1200メートルで夏の平均気温は20度前後とクールな場所。そこにある涼と自然を満喫できるハイキングコースを紹介します!
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準絶滅危惧種のヒカリゴケも見れる!
“鬼の相撲場”で行われる神事とは?!
肝心のハイキングコース紹介の前に…。
「氷室の節句を見学に行かないか?」
先日、高橋さん(仮名)がコーヒーを飲みながら誘ってくれました。温泉好きが高じて退職後に草津温泉へ移住、そして、この地の自然の豊かさに魅了され日々散策をしている私の師匠的な方です。
しかし…氷室?節句?
「スキー場がある天狗山があるだろ?そこにある氷室の氷を切り出して、神様に捧げる行事なんだよ。毎年行われていてね」
「今、もう7月に入りますよ?(*6月下旬に交わされた会話)」
「あそこの氷室は7月くらいまで氷があるんだよ」
「へえ~~っ!」
詳しく話を聞いていくと、江戸時代、草津温泉の湯宿の主人たちが旧暦の6月1日(現在の7月上旬頃)、ここで氷を切り出し、山に咲くシャクナゲの花を添えて、湯治客に供していたそう。それが健康と厄除けを祈る“氷室の節句”という式典へと変わったとか。
「面白いですね!是非ご一緒させて下さい」

そして、式典の当日(7月1日)。草津温泉の有名な湯畑から西へ約1キロ、鬼の相撲場という場所があります。ここ、何と江戸時代の戯作者十返舎一九が出版した「上州草津温泉往来」に“当所名勝”として記されている場所。
名前の由来ですが…むか~し昔、この辺りに大きな石が真ん中にあって周りを小さな石が土俵のような形に並んでおった。遊び場所が欲しい鬼たちに、お地蔵様が「悪いことをもうしないなら」と約束させ、ここを相撲場として使わせたそうじゃ…という訳です。ちなみに、整備され、その大きな石はありませんが、その名が今も受け継がれているのです。

氷室からの氷を中心に、シャクナゲやお神酒、野菜などの供物が祭壇にセットされています。恭しい雰囲気の中、神主様が祭壇の前に立ち祝詞を唱え、神様を降臨しまたお見送りしました。
儀式が終わると、この式典を運営している和風村(古き良き時代の草津温泉を再現しようと集まった15の老舗旅館の総称)の村長である田村長三さんが集まった私たち見学者たちの前に立ち挨拶。

「ぜひ、氷室からの氷をもっと近くで見てください。触っても大丈夫ですよ。氷室の入り口に立つと、冷気が漂い、まさに中に物の怪でもいるのではないかと思う不思議な場所です。是非、機会があれば行ってみてください」

「え、氷室って見に行けるのですか?」と小声で高橋さん(仮名)に訊きました。
「もちろん。氷室を目指すハイキングコースがあるからね」
これは行かなければ!
アウトドア好きが楽しめるグリーンリゾート!

草津温泉の中心部から約2キロの場所にある天狗山。冬はスキー場として活躍し、グリーンシーズンはジップスライダーやマレットゴルフなどのアクティビティができ、ドッグランや車中泊用のキャンプ地も併設。アウトドア好きに人気の場所です。麓からゴンドラを乗った先には草津温泉を一望できる展望台もあります。



ここにある“氷谷コース”のゴールが目指す氷室なのです!ゲレンデの左にあるコースに入り、少し傾斜のある坂道を歩き始めると…。

「トンボがたくさん!」
指を一本立てると、一匹が乗ってくれました。シオカラトンボです。黄色と黒のまだら模様なのでメスか若いオスでしょう、思いがけないお出迎えに気分がますます盛り上がってきました。

コースの脇にはミズナラやブナ、カラマツなどが茂っていて、それらの落葉が絨毯のようになっています。靴を通じて感じるフカフカが気持ち良い!15分ほど歩くと、「氷室入口まで5分」の表示がありました。


夏にまだ雪が残っている氷室!
氷室の姿が見え、近づいて行くと…。
「さ、寒い」
10メートルほど手前で、ヒヤッとした冷気が!エアコンの効いたコンビニの前に来て、突然、ドアが開いたような感じ、って例えが下手ですね。

木の幹を乗り越え、苔むした岩を踏み越え更に近づいて行きます。大きな岩の下に、頑丈な木製の四角い枠組みが囲む氷室の入口、高さは約1メートル。屈みこんで中を覗き込んで見ると、雪が奥までぎっしりと詰まっています、その下には氷があるのでしょう。真夏なのに!(*訪問日は7月21日、東京都心の最高気温は36.4度)。

この氷室、約6500年前の火山活動によってできた物。本白根山の噴火で流失した溶岩が固まり、その隙間に寒い時期に雪が入り込み凍ります。そして、岩の断熱効果で夏までそれが残っているという訳です。正に自然の神秘!周囲の状況と相まって、何か別世界にいるような気分になります。和風村の村長さんの言葉通りでした。

準絶滅危惧種指定の貴重なヒカリゴケを発見!
氷室に感動した後、周囲の岩の隙間を覗き始めました。
「何、怪しいことをしているんだ?」と誰かが横にいたら言われそうですが、実は、今回のハイキングの別な目的はヒカリゴケを探すこと。環境省が準絶滅危惧種に指定している貴重な存在。環境の変化に弱いため、すぐ枯れてしまうデリケートな苔なのです。その生息地の一つが、この氷室周辺です。
「氷室周辺の岩の間にそれらしい物を見つけたら、スマホのライトで照らしてごらん。光を反射するからすぐ分かるよ」というのが師匠の高橋さん(仮名)からのアドバイス。
「おっ、これかな」
氷室入口のすぐ横の岩の裂け目奥に、それらしき物を発見。アドバイス通り、スマホを近づけてライトで照らすと…光ってる!蛍光色のように鮮やかなエメラルドグリーンです。美しい、まさに自然の宝石やあ~。


さて、この光るシステムなのですが、ホタルや深海魚のように自ら光っている訳ではありません。デリケートであるが故に弱い存在なので岩の奥に潜んでいます。そこに入って来る微かな光を原糸体のレンズ状細胞がキャッチし、葉緑体に届け光合成を行う。その過程で光が跳ね返ってくることで光って見えるのです。
辺りを探すと、他にも数か所でヒカリゴケを見つけることができました。

氷室とヒカリゴケに感動し帰途へ着き、高橋さん(仮名)に報告の電話をしました。
「今度は春先に行ってみるといいよ。地面から上に向かって伸びている氷筍が見られるからね。つららの逆バージョンだな。あれもまた神秘的で綺麗だよ」
是非、来年の春に行かねば!皆さんも草津温泉を訪れた際は、是非こちらのハイキングコースにお立ち寄りください!




