アオリイカの産卵はオス、メスのペアで行われます。産卵の準備が整ったメスは海底近くの産卵床におりてきて、周囲を確かめるようにしながら、そっと産卵床の隙間へ腕を伸ばし卵を産み付けます。
南さつまの海ではシコロサンゴに卵を産みつける
オスは、産卵しているメスを守るように寄り添います。アオリイカの産卵床としては、海藻が広く知られています。また、アオリイカの資源保護を目的に、切った木を束ねて海底に沈めた「イカシバ」も産卵場所としてよく利用されます。

一方で、私が観察している南さつまの海ではサンゴへの産卵が観察されます。特に今年は、板が折り重なったような格子状の群体をなすシコロサンゴが産卵床として多く利用されていました。

このシコロサンゴの複雑な形状は様々な生き物の生活の場を提供しており、周辺海域の生態系の基盤となっています。しかし、アオリイカの卵が託されるシコロサンゴには頻繁にイカ釣りで使われる擬似餌のエギがひかかっている様子を目にします。

長期的に観察していると、引っかかったエギは次第にシコロサンゴの中に取り込まれていきます。このような釣り由来の海ゴミはサンゴ本体だけでなく、そこに息づく多くの生き物たちに悪影響を及ぼしているように見受けられます。
誰しも自分の大事なものをどこかに託す時、「その場所」を信頼した上で託すと思います。イカ釣りを後世に渡って楽しんでいく為には、アオリイカにとっての、「その場所」である海藻やサンゴが健全な状態で維持されていくことが重要ではないでしょうか。広く用いられる人工的な産卵床のイカシバだけでなく、自然な産卵場所の保全に向けた取り組みも考えて行かなければならないと実感しています。

鹿児島県知覧出身。鹿児島市「ダイビングショップSB」の現スタッフ。地元、鹿児島を拠点に海中の魅力を日々発信中。 休日は身近な自然写真の撮影活動。 海中生物の生態行動の観察を積み重ねている。
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