写真/トリュフ博物館の展示より。
黒と白があるトリュフ。22万ユーロの値がついたことも!

クロアチアのイストラ半島は、イタリア語ではイストニア半島と呼ばれるアドリア海の奥に位置する三角形の半島である。北からイタリア、スロベニア、クロアチアの3カ国にまたがっている。この地は、トリュフのなかでも白トリュフの産地として知られている。食材としてのトリュフは、おおまかに黒トリュフと白トリュフに分けられる。黒トリュフは、フランス、スペイン、イタリア、スロベニア、クロアチアで生産されている。なかではフランスでの生産が多く、全体の45%を占めている。それにスペインの35%、イタリアの20%gが続く。季節によって収穫するトリュフの種が異なっていて、夏トリュフ(Tuber aestivum)、秋トリュフ(T. uncinatum)、冬トリュフ(T. melanosporum)などがある。
それに対して白トリュフは、圧倒的に産地が限られていて、生産量も少ない。そのひとつであるT. magnatumは、北イタリアと中央イタリア、そしてクロアチアなどの一部で生産されるに過ぎない。もうひとつの白トリュフT. borchiiは、イタリアのトスカーナ地方、ロマーニャ地方、マルケ地方を産地としている。おおむね黒トリュフは1kgあたり100〜1000ユーロ、白トリュフは1kgあたり6000ユーロで取り引きされている。大きな白トリュフはきわめて稀であり、イタリア・トスカーナ地方で収穫された世界最大1.8kgの白トリュフはマカオでオークションにかけられ、22万ユーロの値がついたという。
トリュフ産業の功労者の娘さんが経営するトリュフ園へ

今回は、イストラ半島のパラディニ(Paladini)という村を訪ねている。パラディニでのトリュフ・ハンティングは、1966年にイヴァン・ラスポディック(Ivan Rašpolić)さんが始めた。イヴァンさんは、妻のダニカ(Danica)さんや兄弟のルカノ(Lučano)さんと協力して、ブトニガ(Butoniga)湖とモトヴン(Motovun)の森の周辺で精力的にトリュフ・ハンティングをおこなって、イストラ半島がトリュフの生産地として大きな可能性があることに気がついた。
イヴァンさんがトリュフの価値を見出すまで、この村ではトリュフは「臭いジャガイモ」とまったく顧みられなかったと聞く。クロアチア国有林から正式にトリュフ採取許可を得て、いまではパラディニの住民約60人のほとんどがトリュフ産業に従事している。カルリック・トリュフ園(Karlić Tartufi)は、イヴァンさんの娘であるラドミラ・カルリック(Radmila Karlić)さんと夫のゴラン(Goran)さんによって事業を拡大して今日に至っている。
パラディニ村では人口の3倍ぐらいのトリュフ探索犬がいる?!

パラディニでは、イヌを訓練してトリュフ・ハンティングに使っている。トリュフ・ハンティングにイヌを使うことは1880年代にイタリア・アルバ地方のロッティー村で始まり、トリュフ探索犬の養成学校も設立された。とくに白トリュフは地下1m以上のところに埋まっていることもあり、トリュフ探索犬の嗅覚が頼りになる。トリュフ探索犬は扱いやすい小〜中型犬で、活発すぎず、飽きっぽくない性格が重要視される。
優れたトリュフ探索犬は、10〜20mの距離から深さ1mの白トリュフを探し当てるという。昼間は農作業に時間を費やし、また他のトリュフ・ハンターとの競合を避けるために、トリュフ・ハンティングは夜間に行われることが多かった。そのため、トリュフ探索犬は人工のライトに過敏に反応せず、また暗闇にも目立つ明るい毛色をしたものが好まれる。

犬種としては、ロマーニョ・ウォーター・ドッグがトリュフ探索犬として有名であるが、他の犬種、あるいはミックスでも、条件さえ満たせば優秀な探索犬になるという。カルリック・トリュフ園でも、ロマーニョ・ウォーター・ドッグだけでなく、ダルメシアンやラブラドール、コッカー・スパニエルなども使っている。ちなみにディズニー映画「101匹わんちゃん」で有名なダルメシアンは、クロアチアのダルマチア地方原産と考えられている。トリュフ探索犬は複数頭飼育が普通なので、パラディニでは人口の3倍ぐらいのイヌがいるらしい。

子犬のうちから始まるトリュフ探索犬の訓練法とは?

トリュフ探索犬は、生後3ヶ月から訓練を始める。まず子犬にトリュフの匂いを覚えさせる。次の段階ではトリュフを細かく刻んだもの、あるいはトリュフ油を染み込ませたパン切れを1〜3cmの深さに埋めて、それを前足で掘るように訓練する。そのあと、すでに訓練を受けた先輩のトリュフ探索犬とともに森に連れ出す。
先輩のイヌがトリュフを見つけると、そのイヌをトリュフから離し、かわりに子犬を呼び寄せてトリュフを掘り出させる。こうして子犬は森や匂いに慣れ、掘り方を学ぶのだ。黒トリュフと白トリュフは匂いが異なり、埋まっている深さも黒トリュフは数〜10数cm、白トリュフは1m以上と大きな違いがあるので、トリュフ探索犬は黒トリュフもしくは白トリュフに専門化しており、両方とも探索できるイヌは稀である。

写真はすべて湯本貴和さんの撮影です。




