南アフリカ最大の都市ヨハネスブルグから車で約2時間ほどのところにある、ノースウエスト州のピーランスバーグ国立公園。十数億年前には火山の噴火口だったと考えられているこの一帯は、湿地帯と乾燥地帯の中間に位置しているため、サバンナと低木の植生が共存するユニークな環境になっています。約5万5000ヘクタールの園内には、一般に「ビッグ・ファイブ」と呼ばれるゾウ、サイ、ライオン、ヒョウ、バッファローの他、キリン、シマウマ、カバ、ヌー、インパラなど、さまざまな種類の野生動物が生息しています。
このピーランスバーグ国立公園では、レンジャーの方々とともにサバンナを歩いて回るウォーキング・サファリを体験することができます。今回参加したのは、国立公園に隣接するロッジ、Kwa Maritane Bush Lodgeが催行するウォーキング・サファリ。早朝にロッジを出発したツアー一行は、車で少し移動した後、サバンナの真っ只中で車を降りて歩きはじめました。
Kwa Maritane Bush Lodge
http://www.legacyhotels.co.za/en/hotels/kwamaritane
ウォーキング・サファリでサバンナを歩く時は、銃を持ったレンジャーの方が先頭と最後尾にそれぞれ一人ずつ付いて、周囲を警戒しながら進みます。歩いている最中は、あまりおしゃべりなどをせず、できるだけ静かに歩くように指示されました。以前、アラスカのデナリ国立公園でハイキングをした時には「常におしゃべりをして人のいる気配を発していれば、クマもあまり近寄ってこない」とガイドの方に言われたのですが、ここでの流儀はむしろ逆のようです。
車で広い範囲を移動しながら動物たちの姿を探すゲーム・ドライブと違って、ウォーキング・サファリでは野生動物に直接遭遇するチャンスはそれほど多くありません。しかし、サバンナを歩いていると、さまざまな大きさの足跡や、いろんな形のフン、木の幹に身体をこすりつけた跡など、動物たちがまさにこの土地で生きている気配が、至るところに満ち満ちているのを感じました。そうした痕跡に遭遇するたび、レンジャーさんたちは立ち止まって、動物たちの生態について詳しく解説してくれます。
いろんな痕跡はあるけれど、動物の姿はなかなか見つけられない……と半ばあきらめかけていた頃、突然、シロサイの親子の姿が! 間に細い水流を挟んでいたからか、シロサイたちはそれほど警戒した様子もなく、悠々と草を食みながら、時折こちらを見やっていました。
シロサイの親子に会えたので、すっかり満足して帰りの車に乗っていると、今度はアフリカゾウの群れに遭遇しました。金色に輝くサバンナの草原に佇む、ゾウの親子たち。それは、現実のものとはとても思えないような、神々しい光景でした。
▼著者プロフィール
山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。2016年春に著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々』の増補新装版を雷鳥社より刊行予定。
http://ymtk.jp/ladakh/
▼取材協力クレジット
取材協力:南アフリカ観光局
http://www.south-africa.jp/