ユーコンでソト遊び暮らしを実現! 7年の軌跡
初めて迎える春夏シーズン

ユーコンでの最初の冬をどうにかこうにか乗り切った私たち家族。こちらでは、何年ここに住んでいるかではなく、何回ここで冬を越えたかをカウントする文化があるようです。そういう意味では私たちも晴れて“ユーコン1年生”になれたのかもしれません。
初めて迎える春夏シーズン。しかし日本でもソト遊びの経験がほとんどないアウトドア初心者の私たち。移住を決めた理由のひとつに「自然の中で、もっと土を踏める生活がしたい」という思いもありました。さて、そのほとんどが手つかずの大自然。土なんか好きなだけ踏めるユーコンで、私たちはいかにソト遊びを始めていったのでしょうか。
ユーコンの大地をクルマで走ってみよう

春、現地カレッジでの一年目が終了。秋に授業が再開するまでの間、私は庭師として働き始めました。庭師といっても仕事は主に個人宅の芝刈りや庭木の剪定など簡単なこと。しかし労働時間自体は結構長くて、朝から深夜まで働いた一日も。ユーコンの夏はほぼ白夜なので、いくらでも働けてしまうのです。妻も朝から夕方までホテルの清掃の仕事、毎日誰よりも早くデイケア(保育所)に着き、一番遅く帰る息子。思えば家族全員苦労していた、最初の春夏シーズンでした。
「でもせっかくだし、何か楽しいことしよう」
ユーコンで過ごす最初の春夏、このままでは終われません。私たちが選んだのは、ホワイトホースから北に約500km、かつてクロンダイク・ゴールドラッシュの舞台となったドーソンへのロードトリップでした。
約100年前のゴールドラッシュの中心地へロードトリップ

ドーソンへ向けていよいよ出発。クロンダイク・ハイウェイを一路北へ。ハイウェイといっても片側一車線の普通の道路。しかし道中の景色は、目を見張るものばかりでした。夏草や木々の葉が青青と茂り、時折ピンクや黄色の花々が顔を覗かせます。道路沿いに湖が現れたかと思えば、どこまで走ってもその湖が終わらない……でかい! いくつもの山や谷を越え、目的地ドーソンに無事到着です。
北米の人なら耳馴染みのある歴史的な街、ドーソン。クロンダイク・ゴールドラッシュの頃の趣をそこかしこに残した街並みは、観光客でいっぱいでした。ゴールド・パニング(金さらい)ができる川で一攫千金も目指してみました。街を見下す丘にも登り、100年前の光景も想像してみました。ロードトリップって楽しい。目的地で遊ぶのはもちろんですが、でもどちらかというと道中、景色を見ながらのドライブが最高。たぶんこれが、私たちのユーコン初めてのソト遊び。しかしこの時はホテル泊、食事も毎回レストランかスーパーで。それでも当時の私たちにとっては大冒険でした。
滞在先での過ごし方にもっと自由がほしい!

ロードトリップにすっかりハマった私たちは、その後も夏が来るたびに州内の主要な街を目指して“大冒険”を続けました。ただ、何というか、どこに行っても街は素朴……。どこかの街を目指して走り、着いたら現地の小さなホテルにチェックイン。ご飯は萎びたレストランのハンバーガーかスーパーで買ったサンドイッチという日々。でも音楽を聴きながら、話しながら、きれいな景色の見える場所で休憩しながら、楽しく過ごせます。問題は滞在先でした。
「行った先でもっと自由が利けばいいのに……」
キャンプという最適解が目の前にあるにも関わらず、私は何となくそこから目を背けていました。コロナ禍に差し掛かろうかという当時、日本はまさに空前のキャンプブーム。私もその様子を、YouTubeを通して垣間見ていました。その頃は、「道具を集めるのが大変そう」「難しそう」「自分には敷居が高そう」というのが正直な感想。そんな、多くのアウトドア初心者が一度は通るであろう不安に苛まれ、飛び込めずにいました。
ユーコンのキャンプ場はフリースタイル

そんな状況を打破するきっかけとなったのは、とあるロードトリップの途中、休憩のために州営キャンプ場に立ち寄ったときのこと。初めて見るユーコンのキャンプ場の印象は想像とは全然違いました。たこつぼ型のサイトひとつひとつが木々で区切られていて、それぞれにキャンプを楽しむ人々の姿。ずーっとキャンプチェアに座って動かない老夫婦、ずーっと肉を焼いているグループ、巨大なキャンピングカーから一切出てこない家族……。それぞれが思い思いに楽しんでいる雰囲気でした。
「これだったらできそう」
キャンプに対する、気持ち面での不安を一掃する出来事でした。
やりたかったソト遊びを実現

あとはキャンプデビューに向けて、少しずつ道具を揃えるだけ。テント泊、キャンプ飯など、夢が広がりました。実はこの間に娘も誕生し、4人家族となっていた私たち。赤子を連れてのいきなりのテント泊は難しかったので、まずはデイキャンプから始めていくことにしました。初めてのデイキャンプ、大きな湖沿いのキャンプ場に出かけ、たき火台に火を起こしてメスティンでご飯を炊いたりスープを作ったり。タープを張る文化はこちらのキャンプ場にはあまり無いようですが、日本から仕入れたDDタープを見よう見まねながらも張ってみると、そこは一気に部屋になりました。シートを敷いて子どもが寝転んで本を読んだり、ちょっとした荷物置き場にしてみたり……。
「これこれ!やりたかったことって、こういうこと」
街から遠く離れたどこかまでクルマで出かけ、道中を楽しむ。着いた先では、揃えた道具を実際に使って自然の中で快適に過ごす。特に何かをするわけでもなく、自然の中でぼーっとする。お腹が空いたら何かを焼いて食べる。退屈になったら湖を眺めに行ったり散歩してみたり。何でもある街から一歩外に出ると、逆に自由になれるんですね。
でも、私たちはまだ知らないのです。キャンプの一番の醍醐味、テント泊を! テント選び、寝具選び、すべてを間違えたアウトドア初心者の成長譚はまた次回に。





