ただし標高の高いドロミテは、真冬になると寒さも積雪も厳しく、気軽に楽しむには少しハードルが高いのも事実です。
そこでおすすめしたいのが、春先のシーズンです。雪はしっかり残りながらも、気温は少しずつやわらぎ、雪山の魅力を“ちょうどよく”味わえるベストタイミングになります。
今回は、そんな春のドロミテで訪れたトレ・チーメを舞台に、初心者や家族でも楽しめる絶景スノーハイキングの魅力をお届けします。
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“アウトドア天国”のドロミテとは?

イタリア北東部に広がるドロミテは、アルプス山脈の一部で、ユネスコ世界自然遺産にも登録されている絶景の山岳地帯です。3つの州にまたがる総面積約 15,000 km²の広大な土地には、標高3,000mを超える鋭く切り立った岩峰や深い谷の風景が広がり、まさに“アウトドア天国”。
初心者から上級者向けのトレイルが無数にあり、夏のハイキングシーズンには世界各地から多くのハイカーが訪れ、その自然の美しさを楽しんでいます。
今回訪れたTre Cime(トレ・チーメ)は、その中で最も人気を誇るスポットのひとつで、ドロミテのシンボル的存在です。イタリア語で「3つの頂」を意味する大迫力の岩山がそびえ立ち、その周りをぐるっと一周しながら様々な角度からの景色を楽しむことができます。
雪のトレ・チーメは春がおすすめ!

春のドロミテは、雪に覆われながらも行動しやすい“ちょうどいい雪山”が楽しめるシーズンです。冬の厳しさは想像以上で、気温は氷点下が続き、積雪も多く、簡単なルートも上級者向けになってしまいます。そのため、初心者や家族連れには少しハードルが高く、思いきり楽しむのは難しいのが現実です。
一方、春先は標高も高いため雪が長く残り、3月〜5月上旬頃まで楽しめることが多く、それでいて気温も少しずつ緩んで行動しやすくなります。日照時間も長くなり、外で過ごせる時間が増えるのも魅力的。
また、冬季には雪の影響で、いくつかのセニックロードやアクセス道路が閉鎖されますが、春になると開通し、アクセスもスムーズになります。雪景色を、無理なく心地よい気候で楽しめるのが春の狙い目ポイントです。
私たち夫婦は、キャンピングカーでヨーロッパを旅しており、夏の時期にドロミテを訪れたことがあり、そのときの雄大な自然も印象的でした。
今回は雪景色のドロミテをぜひ見てみたいと思い、2月下旬の春先に再訪。標高の高い山々に残る白銀の世界を、のんびりと楽しむことができ、また違った体験となりました。
雪に覆われたトレ・チーメで絶景スノーハイキング

夏であれば、標高2,320mのトレ・チーメの麓にあるRifugio Auronzo(アウロンツォ小屋)まで、車やバスでアクセスでき、そこからハイキングをスタートできます。しかし、雪が積もる冬〜春先は道路が閉鎖されるため、オフシーズン中は歩いて麓まで上がる必要があります。

私たちは標高1,700mにあるMisurina(ミズリーナ湖)周辺の駐車場に車を停め、そこからハイキングを開始しました。登るルートは大きく分けて2つ。「ハイキングコース」と「道路コース」で、どちらも利用者が多く整備されており、雪上でもルートはしっかりトレースがついています。

特に、道路コースはスノーモービルを使ったり、スノーシューやアイゼン無しでも登れるため、初心者でも安心して楽しめます。私たちは自然の中を歩く感覚を味わいたくて、登りはハイキングコースで、下りは道路コースを選びました。

序盤は森の中を進み、程よく積もった雪の中を、登っていきます。静まり返った山の中で、雪を踏みしめるザッザッという音が気持ちよく響き渡り、白く染まった木々の間を縫うように進む時間は、まるで別世界に入り込んだかのような感覚です。


少しずつ標高を上げていき、森を抜けると視界が広がり、目の前に雪で覆われた広大なドロミテの山岳風景が広がります。


途中からハイキングコースを抜けて、道路コースを登る形になります。ここではスノーモービルやソリで降りている人たちもいるので、歩く際は左側通行で進むようになります。


歩き始めてから約2時間半で、標高2,320mのアウロンツォ小屋に到着です。目の前に広がるトレ・チーメの三つの尖峰と、その周囲に連なる雪山の大パノラマに、思わず言葉を失いました。雪に覆われた岩肌、谷間に広がる白銀の大地、遠くに連なる壮大な山々。冬の静けさと春のやわらかい日差しが同時に感じられる、特別な時間でした。


トレ・チーメを望みながら、奥地へと続くRifugio Lavaredoへ

アウロンツォ小屋まで登ってそのまま引き返す人も多いですが、実はトレ・チーメの周りをぐるっと一周することも可能です。ただしこの時期は雪が深く積もっているため、私たちは無理をせず、サイドにあるRifugio Lavaredo(ラヴァレード小屋)を目指して歩くことにしました。

ここから先は、片側がやや傾斜になった細いトラバース道が続きます。踏み固められたトレースはあるものの、場所によっては滑りやすく、アイゼンやチェーンスパイクなどの雪装備があると安心です。ルート自体は緩やかで、慎重に足元を確認しながら進めば初心者でも無理なく歩ける距離感です。


歩き始めると、トレ・チーメをさまざまな角度から望めるようになり、その迫力に何度も足を止めてしまいます。少し進んでは立ち止まり、その美しさにうっとりして、またシャッターを切る。そんなことを繰り返していると、1時間弱の道のりもあっという間に感じられます。

途中、真っ白な雪原の中にぽつんと佇む小さな教会「Maria Ausiliatrice(マリア・アウジリアトリーチェ)」が現れます。周囲をぐるりと雪山に囲まれたその姿は、どこか静かで神聖な雰囲気をまとい、この場所の特別さをより一層引き立ててくれます。

やがてラヴァレード小屋に到着。さらに奥へと進むこともできますが、この日はここまでの景色ですでに大満足。目の前に広がる雪景色を眺めながらゆっくりとランチを取り、来た道を戻ることにしました。

春のトレ・チーメで“ちょうどいい”雪山体験を
帰りは来た道とは別の、道路ルートを使ってゆっくりと下ることにしました。登りとは違い、なだらかな広い道は歩きやすく、景色を楽しみながらリラックスして進むことができました。
道中では、スノーモービルで駆け抜けていく人や、ソリで楽しそうに滑り降りていく家族連れ、ツーリングスキーで軽やかに下っていく人の姿も見られ、それぞれが思い思いに雪山を満喫している様子が印象的でした。
春先であれば、厳冬期ほどの厳しい環境はなく、雪景色はしっかりと残りながらも、気温はやわらぎ、アクセスもしやすくまさに“ちょうどいい雪山”を楽しめるタイミングです。
トレ・チーメ周辺では、ハードな装備や経験がなくても、スノーハイキングやソリ遊びなど、家族や初心者でも気軽に楽しめるアクティビティが揃っているので、手軽に雪山を楽しみたい!と感じている人にこそ、一度訪れてみてほしい場所です。






