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WIND from ONTARIO~森の海、水の島~ #22 氷の大地を歩く人
by Tomoki Onishi
撮影・文/尾西知樹
トロント在住のフォトグラファー、マルチメディア・クリエイター、カヌーイストでサウナー。オンタリオ・ハイランド観光局、Ontario Outdoor Adventuresのクリエイティブ・ディレクターを務める。カナダの大自然の中での体験とクリエイティブを融合させたユニット magichours.caを主宰。
厳冬期を迎え表情を変えるカナダ・オンタリオの湖。凍てついた湖上へ歩を進めると、異次元の空間に遭遇する。

低い太陽の光を反射した氷原が深い碧に輝く。氷の大地に初めて挑む人たちが、未知の異世界へ嬉々とした好奇心と畏れを胸に足を踏み入れる。足下の氷の中には、亀裂や水草も見えて、ツルツルとした浮遊感がドキドキを加速、その反動も相まって笑いが絶えない。
カナダの厳冬期、寒い寒いとぼやく日本から来た人たちを壮大で楽しい冬の体験に連れ出す活動、THE ICE-WALKERS。
合理的思考のカナディアンなら、スノーモービルや雪上車で行なう氷上の移動を、あえて歩いていく小さな旅。自らの足で歩くことにより、氷の大地の摩訶不思議な神秘が、自分たちの生活の延長線へとつながる。
氷の上を1㎞ほど歩いたら、そこは360度見渡す限り雪と氷しかない別の惑星だ。巨大な手動のドリルで、50㎝超の厚さの氷に穴をあける。重いソリを引っ張って汗をかき、ドリルで氷と格闘してまた汗をかく。そうした体験が、五感を通じて記憶に刻まれ、大自然との距離感や水の循環を理解する。体験者は観客ではなく、環の一部となり、氷の上には笑顔がはじける。
苦労して開けた穴に、餌をつけて釣り糸を垂らせば、糸は氷の大地と交信する糸電話。ピクピクッと小さな合図に合わせれば、黄色く可愛い魚たち(Yellow Perch)が顔を出す。

あえて手動の巨大なドリルで厚さ50㎝超の氷を穿ち、大自然の威容と存在感を体感する。

遠く岸辺から離れて、帰りの目印は大きなスノームーン、2月の月に向かって歩く。

(BE-PAL 2026年4月号より)




