高地トレーニングと大自然のゲートシティ——アリゾナ州フラッグスタッフ【100周年を迎えるルート66の点と線・その6】 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

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2026.01.24

高地トレーニングと大自然のゲートシティ——アリゾナ州フラッグスタッフ【100周年を迎えるルート66の点と線・その6】

高地トレーニングと大自然のゲートシティ——アリゾナ州フラッグスタッフ【100周年を迎えるルート66の点と線・その6】
ルート66はたくさんの町を通り過ぎます。ゴーストタウンのように寂れてしまった町もあれば、昔も今も賑やかな町もあります。

そのなかで、旅行者として立ち寄るだけではなく、ここになら長期で滞在してみたい、あるいは住んでみたいと思えるような町となると、その数はさほど多くはありません。

むろん、これは私見です。あくまで個人的な好みだとお断りしておきますが、今回紹介するアリゾナ州フラッグスタッフはその数少ない例のひとつかもしれません。カリフォルニアとの州境に近く、コロラド高原の南西端にある町です。
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●前回はこちら

風景と文化の交差点——ニューメキシコ州アルバカーキ【100周年を迎えるルート66の点と線・その5】 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

高地に築かれた学園都市

アリゾナというと砂漠や赤茶けた岩ばかりの荒野にサボテンがまばらに生えている風景をイメージするかもしれません。実際にこの州をドライブしてみても、そんな土地が大部分を占めているように思えます。なにしろ、州の公式ウェブサイトによるニックネームが” The Grand Canyon State”(グランド・キャニオンの州)なのです。

しかし、そのアリゾナ州の中では、このフラッグスタッフ周辺の景観は良い意味で異色と呼べるかもしれません。樹々の緑が濃く、空気が澄み、四季の移り変わりが感じられる。そんな町です。

フラッグスタッフの人口はおよそ7万5千人。けっして小さくはありませんが、州都フェニックスやツーソンのような大都市ではありません。市中心部には北アリゾナ大学があり、アカデミックな雰囲気も漂います。

そんなフラッグスタッフの象徴と呼ぶべきは郊外にあるローウェル天文台でしょう。冥王星が発見された場所として知られ、現在も最先端の観測が続けられています。星空の暗さを守るため、市全体で光害対策が徹底されている点も特徴的で、夜になると街中からでも満天の星が見上げられます。

“Lowell Observatory Flagstaff AZ 01610” by bobistraveling is licensed under CC BY 2.0.

クルマと鉄道が交差する交通の要衝

フラッグスタッフは交通の要衝です。ルート66とともに発展し、それが州間高速道路40号線に変わった今でも市内を東西に貫き、南北を走る州間高速道路17号線と交差しています。西のロサンゼルスへはまだ700㎞ほどありますが、南へ向かって約230㎞で州都フェニックスに着きます。

“Route 66” by xomiele is licensed under CC BY 2.0.

そして、フラッグスタッフはクルマと鉄道という二つの「移動の線」が交差する場所でもあります。長距離鉄道アムトラックが運行する「サウスウェスト・チーフ」の停車駅でもあるのです。駅のホームにはルート66のロゴが描かれています。

“Historic Route 66 – Flagstaff, AZ – May 2023” by Thank You (25 Millions ) views is licensed under CC BY 2.0.

ダウンタウンには歴史あるホテルやネオン看板が残り、ルート66黄金時代の面影を今に伝えています。一方で、近代的なホテルやレストランにも不自由しません。過去と現在が対立するのではなく、静かに重なり合っている。そんな印象を私は受けました。

どうです? 静かで知的で風光明媚な町がイメージできるでしょうか? しかし、フラッグスタッフの魅力はそれだけではありません。スポーツおたくにしてアウトドア愛好家の私がフラッグスタッフに惹かれるポイントはあともう2つあります。ひとつは標高、もうひとつは絶好の立地条件です。

標高2,100メートルが生む高地トレーニングの環境

フラッグスタッフの標高は約2,100mです。大体、富士山5合目くらいの高さです。そんな場所に町があること自体が驚きなのですが、そのことがフラッグスタッフを高地トレーニングの名所にしました。

数多くの長距離ランナー、水泳選手、トライアスリート、といったスポーツ競技者がこのフラッグスタッフに拠点を置き、あるいは長期合宿で心肺能力の強化を図ってきました。日本からもマラソンの大迫傑選手、北島康介さんら日本代表水泳チームもここで合宿していたそうです。

ただ標高が高いだけではありません。スポーツ関連の施設が充実していることに加えて、住環境が整っていて長期の生活に便利なことも、フラッグスタッフがアスリートたちに選ばれる理由です。

専門の競技者だけではなく、一般のジョガーやハイカーにとっても、フラッグスタッフは魅力的な土地です。町の周囲には森林に囲まれたトレイルや未舗装路が無数に広がり、舗装路と自然道が途切れることなくつながっています。高地でのトレイルラン、ハイキング、サイクリング、などを日常の延長として行える環境は、なかなか他では得られないものです。

残念ながら、私自身はフラッグスタッフに長期滞在したことはありません。せいぜい1泊か2泊して、目についたトレイルを走ってみたことがあるだけです。

薄い空気に心臓がバクバクしますが、静かな森の中を走るうちにこの上もなく爽快な気持ちになったことを覚えています。なにしろ自然が豊かなところで、町のすぐそばで鹿の群れに出くわしたこともあります。

もっとも、運動生理学的には高地トレーニングの効果を得るためには最低でも3週間くらいの日数が必要だということですので、鍛えたぜ、と感じたのは単なる気のせいか自己満足、あるいはランナーハイだったのでしょうけど。

フラッグスタッフ市内のトレイル。

グランド・サークルという巨大なアウトドア圏のゲートシティ

フラッグスタッフがアウトドア愛好家にとって特別な場所である理由は、町そのものだけではありません。その立地が、「グランド・サークル」と呼ばれる広域観光エリアの入口のような役割を担っていることも重要なポイントです。

グランド・サークルとは、アリゾナ州北部とユタ州南部を中心に、グランド・キャニオン、モニュメント・バレー、ブライス・キャニオン、ザイオン、アンテロープ・キャニオンなど、アメリカが誇る世界的に有名な国立公園を円環状に結んだ巨大な自然圏の総称です。渓谷、岩山、砂漠、高地林と、性格のまったく異なる自然が、驚くほど近い距離で共存しています。

フラッグスタッフは、その南端近くに位置しています。大自然へ向かう前に1泊して体を休める、最後のきちんとした食事を楽しむ、必要な買い物を済ます。そんな人たちのニーズに応えるゲートシティです。
 

グランド・サークル。赤い印がフラッグスタッフの位置。

近いところでは、北へ向かえばグランド・キャニオン、東にはモニュメント・バレー、南にはセドナ。少し頑張れば、いずれも日帰りでのアクセスも可能です。この3つの地名、どこかで見た気がするという人は記憶力が素晴らしいですね。過去にこちらで紹介したことがあります。

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どれをとっても、私にとっては一生のうちに何回もないと思えるほどのアウトドア体験をした場所です。フラッグスタッフという町の存在にどれほど感謝しているかは分かっていただけるでしょう。

ルート66上の町ではあるけれど、ルート66とは関係なくても行ってみたい町。それがフラッグスタッフです。

角谷剛さん

米国在住ライター(海外書き人クラブ)

日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員

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