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    2025.12.29

    アメリカ・ユタ州の“アドベンチャーの聖地”モアブへ。80歳でも楽しめるショートハイクとワイナリー

    アメリカ・ユタ州の“アドベンチャーの聖地”モアブへ。80歳でも楽しめるショートハイクとワイナリー
    アメリカ・ユタ州の南東部に位置する小さな町モアブ。人口は約5000人ですが、その周囲には世界でも指折りの赤い岩の大地が広がっています。町の近くには「アーチーズ国立公園」や「キャニオンランズ国立公園」といった、アメリカを代表する大自然が集中しています。

    「アドベンチャーの聖地」とも呼ばれる町ですが、若者だけの場所ではありません。80代の人でも無理なく楽しめる「ゆっくりモアブ時間」があります。

    81歳になる夫のお父さん夫婦といっしょに訪れた2025年10月のモアブ。今回は短いハイキングや絶景ドライブを中心に、体にやさしく、心に残る旅をご紹介します。
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    無理をしない冒険と、赤い大地でゆるむひととき

    まず、モアブとは?

    町を流れるコロラド川の川沿いには緑が広がり、ひとたびクルマで走り出すと、赤茶色の岩山と青空のコントラストが一気に視界に飛び込んできます。日本ではなかなか出会えない、「赤い大地の風景」が日常にある町です。

    自然遊びの玄関口として、今では世界中から人が集まるモアブを流れるコロラド川。

    もともとは農業と鉱山の町でしたが、1960年代に映画のロケ地として注目され、次第に観光とアウトドアの拠点へと姿を変えていきました。ちなみに、日本でも広く知られている作品には、『テルマ&ルイーズ』や『ミッション:インポッシブル2』、『127時間』などがあります。

    崖の上まで、ゆっくり一歩ずつ「デッドホースポイント州立公園」

    最初に向かったのは、赤い大地を見渡せるデッドホースポイント州立公園。BE-PAL.netで以前ご紹介したアンテロープ島州立公園と同様に、十数年前までは私たち夫婦にとって、そっと深呼吸しにいくような、人の声より風の音のほうがよく聞こえる場所でした。

    コロナ禍のあと、展望台の駐車場は朝から満車、夕日の時間帯には世界各国の言葉が飛び交います。アンテロープ島と同じように、デッドホースポイントも、いまや「ユタ州を代表する絶景スポット」として、多くの人が訪れる場所になりました。

    あの静かな時間をもう独り占めにはできませんが、感動を世界中の人と分かち合える場所には違いありません。

    東側と西側のトレイルを示す看板。

    駐車場から展望台まで歩いて数分。日本でよく知られるグランドキャニオンを、ぎゅっと凝縮したような景色が広がります。柵の高さが低くて、端までいくにも心臓がバクバクする私の目の前で、笑顔でセルフィーを撮る怖いもの知らずのリズは、もうすぐ80歳。

    コロラド川の渓谷が足元に広がる王道の絶景コース。低い石造りの柵が、高所恐怖症の私にとってはちょっと怖い。

    視界をさえぎらない低めの柵が、この場所らしさです。小さな子どもや高齢の人と歩くときは、そっと声を掛け合いながら進むと安心です。

    岩の大地や空の広がりを感じることができる舗装トレイル。
    舗装トレイルはアップダウンが少ないので、年齢を問わず歩きやすい。

    足元に目を向けると、赤い大地と同じ色をしたリスやトカゲが、影のように動いていきます。自然の中の小さな発見も、トレイルウォーキングの楽しみのひとつですね。

    人なれしている様子で近づいてくるリス。
    地面と同化して見失いそうになりながら、なんとか一枚。

    このデッドホースポイントは、先述した映画『テルマ&ルイーズ』の主演女優、スーザン・サランドンとジーナ・デイビスが走り抜けた舞台でもあるのです。そして、トム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル2』のオープニング・ロッククライミングのシーンも、デットホースポイントなのです。

    「アーチーズ国立公園」で無理せず楽しむ短距離トレイル

    アーチーズ国立公園は、本格的なロングハイクも、70代80代でも安心して歩けるショートハイクもそろう場所です。長時間歩かなくても楽しめる代表ルートは、バランスロック。ちょっと疲れたら途中すぐに車に戻れる安心感もあります。

    「どうして倒れないの?」と、思わず聞きたくなる岩「バランスロック」。
    色違いのペアルックを着て、腕を組んでゆっくり歩くふたりの後ろ姿にほっこり。

    がっつり歩く日も、ほどほどの日も。枝分かれするトレイルを前に、その日の調子で行き先を選べる。それがアーチーズ流の楽しみ方です。すれ違う同じくらいの年齢のハイカーたちにも、積極的に声をかけて会話を楽しんでいるふたりの様子に、自然と私まで笑顔になります。

    「パインツリーアーチ」と呼ばれるトレイルを、荒野の雰囲気を五感で味わいながら歩く。

    時おり足元で動く砂漠の生き物たちや、頭上を飛ぶカラスたちの姿も。ベンチでひと休みしていると、大人の指2本分くらいの長さと太さがあるバッタが、リズの上着に着地。

    ふたりで悲鳴をあげていると、小学校低学年くらいのアラブ系の元気な男の子が、「何、なに??」と、興味津々で寄ってきました。

    ふさふさの毛で体が覆われた黒い巨大バッタ(多分……)が飛んできてびっくり仰天。

    無我夢中で遊ぶ子どもの好奇心ってすてきですよね!知らない大人とおしゃべりしている我が子を心配してか、すぐに遠くからご両親に呼び戻されて、小走りで去ってしまいましたが(笑)。

    無理せず楽しく!ヘルズリベンジで“少しだけ”オフロード体験

    本格的なオフロードドライブは無理でも、入口付近でドライブ体験を楽しめるのが、サンドフラッツ・レクリエーションエリア内にある「ヘルズリベンジ・オフロードトレイル」です。駐車場で出発の準備をする夫のお父さんの、童心に返ってワクワクする気持ちが、見ているだけで私まで伝わってきます。

    サンドフラッツ・レクリエーションエリア入口にあるゲートで入場料を払い、地図を受け取る。
    私たち夫婦だけで訪れるときは、3時間ほどかけて地図上の赤いトレイル(全長10.5キロメートル)を走るが、お父さん夫婦は最初のほんの少しだけに挑戦。
    駐車場でRZR(オフロード車)に乗るお父さんの、シートベルトの安全チェックをする夫。
    ヘルズリベンジのオフロード車専用入口。近くには、マウンテンバイク用の入口もある。

    ヘルズリベンジは初心者向けではありませんが、岩のうねりを乗り越えていくスリルと、崖の上からの眺めは格別です。モアブの町からは観光ツアーも出ていて、この日も多くの観光客が、プロの運転で安心して“非日常のドキドキ”を味わっていました。

    私たち夫婦のRZRは2人乗りなので、私は駐車場で待機。ヘルズリベンジのトレイルヘッドには、トイレもあるので安心。

    夕方は砂漠に囲まれたブドウ畑で地元ワインのテイスティング

    ショートハイクとオフロードドライブで、体をほどよく動かしたあとは、赤肌の岩を眺めながらワインテイスティングです。日本人にとって、アメリカ産ワインと言えば、カリフォルニア州やオレゴン州をイメージする人も多いと思います。でも荒野の砂漠地帯ユタにも、ステキなワイナリーがあるのです。

    観光地のにぎわいから少し離れた場所にある、小さなワイナリー「スパニッシュバレーワイナリー」。
    赤い岩の絶景を眺めながら、モアブ旅に乾杯!

    体力に自信がなくても、ユタの大自然はちゃんと迎えてくれます。年齢は、旅をあきらめる理由ではなく、楽しみ方が変わるだけなのかもしれません。「挑戦する旅」から、「感じる旅」へ。そんなモアブの楽しみ方を、みなさんもぜひ体験してください。

    ユタ州モアブ公式サイト
    https://www.discovermoab.com/

    トロリオ牧さん

    アメリカ・ユタ州ライター

    2001年渡米、ユタ州ウチナー民間大使。パンデミックをきっかけに「いつ死んでもOK!な生き方」を意識するようになり、17年間務めたアメリカ政府の仕事を2023年に辞職。現在はNHKラジオ出演や日本のWebメディア執筆など幅広く活動中。編著に電子書籍『型の中に答えはある』がある。夫婦でRVキャンプを楽しむのが最高の癒し時間。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。「海外書き人クラブアウォーズ2025」最優秀新人賞受賞

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