
今回は東京都中央区の築地駅から港区の浜松町駅まで歩く「東京湾口GREEN-WAY」です。
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14th ルート:東京湾口GREEN-WAY
前回はこちら↓
勝どきエリアから築地駅まで歩いた、前回のFILE.13「勝どきGREEN-WAY」。その際、勝どき見晴らし公園から隅田川の対岸にある浜離宮恩賜庭園を眺めました。
せっかくなら、築地駅から帰宅せず、浜離宮周辺まで足を伸ばして東京湾を眺めてみようと思い立ちました。ということで、今回はその名も「東京湾口GREEN-WAY」です。
今回のルートを歩くにあたり、地図を見てふと思ったことがあります。どこからが海(東京湾)で、どこまでが川(隅田川)なのだろうと。
FILE.8の「裏箱崎河岸GREEN-WAY」で霊岸島検潮所を紹介しました。ここで計測した数値を東京湾の平均潮位と定義する、という場所です。でも、霊岸島検潮所があるのは明らかに隅田川でした。
前回、歩いて渡った築地大橋は、霊岸島検潮所よりもはるかに東京湾に近い場所にあります。ただ、築地大橋の周辺は明治以降の埋立地や運河がいくつもあり、地図を見ても「ここが隅田川河口です」という場所がはっきりしません。
試しに、日ごろから愛用している「大江戸今昔めぐり」という古地図のアプリを起動してみます。すると、江戸末期の地図上では、月島も豊洲も海でした。そういえば、前回めぐった勝どき周辺の埋め立ても明治以降のことです。
そこで、隅田川に関する資料などを調べると、やはり築地大橋から上流が隅田川、築地大橋から南が東京湾となっているようです。僕自身、隅田川の河口付近を歩きつつ「東京湾との境目って、このあたりなのかな」と思っていたのですが、その体感は正しかったようです。ただ、勝どきや有明、お台場などの埋立地が増え、「ここから東京湾」という場所が分かりづらくなっていたのでした。

疑問が解決したので、築地から浜離宮恩賜庭園の大手門口の方へ歩いていきます。
浜離宮恩賜庭園
ここは、江戸時代初期は将軍家の鷹狩り場でした。甲府藩主の徳川綱重が、四代将軍家綱から拝領して下屋敷としてからは、甲府浜屋敷と呼ばれるようになります。その後、六代将軍家宣の時代になると、浜御殿と称される将軍家の別邸となりました。大名庭園の面影を現代に伝える潮入りの池と鴨場を備える、国の特別名勝・特別史跡の庭園です。

浜離宮恩賜庭園は、周囲をぐるっと水路で囲われています。築地側の一辺の水路が築地川、汐留・竹橋側の二辺の水路が汐留川です。大手門出入り口から中の御門出入り口後面に向け、水路(汐留川)の脇を歩いていきます。水路の反対側には、街路樹のように浜離宮恩賜庭園の緑があり、何とも良さげな道のりです。

中の御門出入り口に進む途中、多くの外国人観光客とすれ違いました。FILE.5「水天宮・松嶋・浜町(川)GREEN WAY」で紹介した人形町の「浜町(川)緑道」でも、写真を撮ったりベンチで休憩したりしている外国人を見かけました。浜離宮恩賜庭園はメジャーですが、東京在住の日本人にもあまり知られていない緑道や公園でも、欧米人観光客の姿をよく見かけます。どこで調べているのでしょうか。
水路沿いの道を歩いていくと、浜離宮恩賜庭園の端に着きました。このまま汐留川沿いを進むと、東京湾へと至ります。
浜離宮恩賜庭園から海岸通りを道なりに進み、新橋日の出埠頭線に入ると、自由劇場が見えてきました。そのまま建物の中に入ると、アトレ竹芝がありました。アトレといえばJR東日本の駅ビルなどでおなじみの商業施設です。でも、ここは劇場で、駅ではありません。気になって調べてみると、アトレ竹芝は初の「駅ソト開発」となる施設だそうです。なるほど。

アトレ竹芝の建物の横には通路が伸びていて、観葉植物などが飾られています。その通路をたどっていくと、フェリー乗り場とアトレ竹芝の広場がありました。目の前には汐留川が流れ、とても心地良い場所です。景色を楽しみながら、しばらくベンチで休憩しました。


広場の目の前には、イベント会場のニューピアホールが入ったビルがあります。そのビルの外階段を上ると、竹芝客船ターミナルがありました。
(実際に役割を果たしているかどうかは微妙ですが)防風林らしき松並木が続いていました。対岸には前回歩いた勝どきエリアが広がっており、その先にはレインボーブリッジやお台場がよく見えます。いい道のりだなと思いながら、どんどん先へと進んでいきます。
竹芝客船ターミナル
伊豆・小笠原諸島への玄関口として利用されている竹芝客船ターミナル。近年はオフィスビルやホテル、レストランなどが海上公園と一体的に整備され、海の景色を楽しみつつ散策や食事などができる場所になっています。
竹芝客船ターミナルに初めて訪れましたが、もはや客船の利用者だけの場所ではないんですね。何もせずに1日ゆっくり過ごせちゃう場所だなと感じました。目の前に広がるのは隅田川ではなく東京湾なので潮風になると思いますが、とにかく気持ちいい風が吹いています。


竹芝客船ターミナルの先には小型船舶の発着所があります。そのすぐそばの竹芝埠頭・日の出埠頭連絡橋を渡ると、これまたおしゃれなレストランがありました。
竹芝客船ターミナルまでは潮風を感じる心地よい道のりでしたが、ここからは首都高の高架橋の下を歩く地味な道が待っていました。東京らしい道のりといえなくもないですが、落差が大きい。竹芝でやめとけばよかったかな…と思いつつ、ゴールのJR浜松町駅方面に進みます。
首都高速都心環状線の下を歩き、東京ガス本社へ来ると、良い感じの庭が広がっていました。江戸時代の石垣も整備・保存され、よく手入れされた花が咲いています。首都高の高架下を抜けたあとということもあって、街路樹なども植えられた緑豊かな空間に人心地がつく思いです。


そのままビル沿いに進むと浜崎公園があり、モヤイ像が建っていました。ここまで来ると、もうJR浜松町駅は目と鼻の先です。ということで、今回はここでフィニッシュ。
今回のルートのうち、浜離宮恩賜庭園以外は初めて足を踏み入れた場所でした。個人的に、ウォーターフロントなどといわれると、縁遠いおしゃれな場所と思って敬遠しがちです。でも、水辺散策が楽しめるルートとして捉えると、とても気持ちよく歩ける素晴らしい場所でした。
特に竹芝客船ターミナルは、フェリーに乗らず景色を満喫するだけでも、ゆったりくつろいだ時間を過ごせます。これからも少しぐらいおしゃれな場所でも臆さず面倒がらず歩いていこうと気持ちを新たにしたのでした。
ちなみに、前回のFILE.13「勝どきGREEN-WAY」と今回の「東京湾口GREEN-WAY」をつなげて歩いてもいいかもしれません。明治以降の埋立地の歴史と今どきのおしゃれなウォーターフロントの雰囲気が一度に感じられる、江戸〜東京水辺散策が楽しめるのではないでしょうか。
■今回歩いたルートのデータ
|距離約4km
|累積標高差約4m
今回のコースを歩いた様子は動画でもご覧いただけます。
●東京湾口GREEN-WAY
●FILE.13「勝どきGREEN-WAY」 to FILE.14「東京湾口GREEN-WAY」