ネコノメソウは全国に分布する身近な植物

ネコノメソウってどんな野草?
ネコノメソウはユキノシタ科ネコノメソウ属の多年草で、全国の山地の湿った場所や沢沿いの林、渓流のふちなどに群生します。花の直径は数ミリ程度、草丈はおおむね足首以下~足首くらいまでです。名前は知らなくても写真を見れば、「ああ、あの野草か!」とピンと来る人も多いと思います。
見分けが難しい
現在、世界で86種、日本では20種が確認されています。種類が多く、見分け方が難しいことでも知られています。一般的には、ガク裂片の色と平開するか直立するか、雌しべの数や色、茎の毛や葉のつき方、根生葉の有無などが目安になります。専門的には種子の表面の状態も重要視されます。そこで、誰もが見分けがしやすいように、自生環境、単体、パーツを分解したものなど、写真をふんだんに使った図鑑をつくることにしました。
ネコノメソウの魅力とは?

まだわからないことが多く、沼にはまった!
ネコノメソウについては、特に専門分野にしようという意識もなかったのですが、ざっと日本に自生する全種の写真が揃ったので、どこかの版元から小さな本にして小遣い稼ぎをしようくらいの意識を持っていました。ところが、2018年、2020年にそれぞれ新しい分類群(新種みたいなもの)が発表され、さらに、まだまだよくわかっていないことがいろいろあることを知り、沼にはまってしまいました。それが2022年ごろのことです。
クラウドファンディングとも自費出版とも異なる方式で出版を決めた
注目度は高いものの、まだまだマイナーな植物のネコノメソウ。出版にあたっては考えに考えを重ねて、自費出版のひとつの方法、ダイナミック・クラウド・パブリッシング(変動型予約部数印刷方式)とすることにしました。
いがり式図鑑の中身をチラ見せ
いがりまさしさんが作る図鑑の特徴といえば、識別のための花や葉、雌しべや托葉の超アップ、群落のようすなど、見分けに必要な情報が写真と文字でていねいに解説してあるのが特徴。もちろん、本図鑑もその流れを踏襲しています。


図鑑ではボタニカル・フォト・アートと名づけている黒バックの詳細写真で、各パーツが分解図のように解説付きで紹介してあり、特徴が一目瞭然です。ネコノメソウは小型で、根元などは落ち葉に隠れていることも多いので、このスタイルで見せることで種の特徴が明らかになります。また、花の断面、茎の断面などの写真はこれまで例がなく、新しい発見にも満ちています。また、その写真を駆使した比較表もスミレや野菊以来の伝統です。撮影にまつわる物語や研究史に関する解説も存分に盛り込みました。

日本はネコノメソウ大国
図鑑には変種、品種などを含めて33分類群といくつかの交雑種、また、いつくかの海外の種を収録しています。日本はそうとう種類が多い国になります。ネコノメソウはほとんど例外なく早春の花で、いちばん早いものはバレンタインデーのころに盛りになるものもあります。スミレやサクラよりも花期が早いものが一般的です。
比較的新しい時代に分化したものが多く、遺伝子解析でも分類が困難なものが多いと言われています。特に、高尾山周辺で見られるハナネコノメは有名で、花期には被写体の前で順番待ちの列ができるとか。3月の関東の里山ではそれを探しに来た「ハナネコ女子」にもよく会います。
なぜ、紙の図鑑を出そうと思ったのか?

残りの人生でやりたいことについて考えてみた
話せば長くなりますが(笑)、1996年に「日本のスミレ」、2007年に「日本の野菊」を出しましたが、この間に出版界は様変わりしました。取材に11年ほど費やした「日本の野菊」の印税は多くはありませんでした。それからしばらくは、出版では食っていけないと、ワークショップや講演、音楽活動などに軸足を移し、なんとか食いつないでいた感じです。しかし、その間も「世界のスミレ」への思いはふつふつとありました。機会があるごとに海外のスミレをちょっとずつ撮りためていました。
そして迎えた還暦の歳。やっとできた少しの蓄えで、5月にヨーロッパアルプス、12-1月に南アメリカと南アフリカのスミレの旅を計画した矢先でした。すべてがコロナ禍で失われました。海外への渡航は論外、やっとできた蓄えは糊口をしのぐ、あるいは急場をしのぐ配信への投資に消えました。
そもそも、その年の取材が実現していたとしても、それを目指し始めた2000年前後とは状況が一変していて、SNSを通じて地球の裏側から未記載種の素晴らしい写真がどんどん流れてくる時代になっていました。撮影に一定のノウハウと機材が必要だった時代と比べて、南アメリカや南アフリカに自分が一度や二度出かけて撮影したとしても、地元の人がスマートフォンで千載一遇のチャンスを捉えた写真には敵うはずがない。その点で確実に時代が変わっていました。
次世代に手渡すには紙に残すしかない
それと同時に60歳を迎えて残りの人生で何ができるかということを考え始めました。まずは、2001年40歳の時から取り組んできた「撮れたてドットコム」をはじめとしたデジタルコンテンツですが、自分の命が終わると同時に、レンタルサーバーへの支払いが滞り、消えてなくなります。紙よりデジタルのほうが永続性があるような気がしていましたが、それはデータを更新する人がいてこそのこと。自分の死後、次の世代に手渡すべきものは、紙にしておくしかないということを理解しました。
編集を学べば少部数の本でも出版できる!


その時(2021年頃)から、「手紙を書くように本を作る」を合言葉に、InDesign(編集作業ソフト)をインストールして、少しづつ編集の勉強を始めました。編集レイアウトまで自分でこなせば、これからの時代は少部数の本でもそれなりに形にする方法は見つかるだろうと思っていました。
自分が残したい本、少数でも必要な人、あるいは自分の死後に見つけて必要としてくれる人に届けるべき本を出版する方法として苦慮して決めたのが、ダイナミック・クラウド・パブリッシングです。成功するかどうかは未知数でしたが、蓋を開けてみれば自分としては大成功。「人生初の成功体験」と呼べるものになりそうです。予約してくれた人が、
1.予約者が増えれば自分の支払いも少額になる
2.予約が何部まで伸びるかスポーツ観戦のような興味で応援してくれる
という要素があったため、SNSシェアなどで拡散してくれたようです。推し活みたいなものですかね(笑)。おおよそ、予約金を印刷費に当て、その後の売上が利益になる計算です。
『日本のネコノメソウ』図鑑を手に入れる方法

いがりまさしさんが運営するサイト「撮れたてドットコム」から予約・申し込みが可能です。締め切りは12月いっぱいなので、お急ぎください。締め切り後は一般販売も予定していますが、その際は、予約価格よりも高くなります。
現在の図鑑の価格はハウマッチ?
ダイナミック・クラウド・パブリッシングは、予約部数が多くなればなるほど価格が下がり、内容もアップグレードされるというものです。最初に予約金、2,000円を支払ってもらい、最終的に差額を追加で支払っていただくことになっています。図鑑の価格ですが、発行部数200部までだと1冊が4,800円、500部までだと2,600円、1,000部までだと2,200円。12月3日現在の発行予定部数は983部で、2,200円まで下がりました。1,000部を超えると、1冊2,000円になりますので、あと、少し(笑)。興味のある方はぜひ、ご予約ください。
「撮れたてドットコム」と完全リンク
図鑑の種ごとのページのどこかに 撮れたてドットコム の該当ページへのQRコードがあり、簡単にリンクできるのも特徴です。また、刊行後は撮れたてドットコム各ページにも本書のページ数が入り、相互にインデックスの役割を果たせるようになります。
ネコノメソウブームがもうすぐ来そう!?
ネコノメソウは30年前にスミレがそうであったように、ブームの局面を迎えている気がします。30年前は「スミレの本など売れるわけがない」と目されていましたが、一般の野草をひととおりマスターした人が多くなり、それまで一般の図鑑では多くが掲載されなかったスミレの詳しい図鑑が求められる局面にあったように、今、ネコノメソウがその局面に来ているのではないかと感じます。近年新種が次々に発表されていることも追い風です。SNSを通してニッチながらも各地に「ネコノミスト」は確実に存在することがわかりました。反応も上々です。
*図鑑は現在、編集中のため、掲載した図鑑ページが変更される場合があります。ご了承ください。







