本記事では、その仕組みや薪ストーブとの違い、自作に必要な一斗缶・煙突・断熱材・工具類のポイント、初心者でも扱いやすい断熱材の選び方、一斗缶ロケットストーブの基本的な作り方、安全に楽しむための注意点をまとめて解説しています。
DIYで自分だけのロケットストーブを作ってみたいキャンパーに向けた入門ガイドです。
(出典)photoAC
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ロケットストーブって何?

仕組み
ロケットストーブは、L字型やコの字型に組んだ燃焼室と煙突(チムニー)を組み合わせ、煙突の中を熱い空気が勢いよく立ちのぼる強い上昇気流(ドラフト)を利用して一気に燃焼させるストーブです。
下部の焚き口から薪や小枝に空気が流れ込み、縦方向の煙突部分で高温・完全燃焼に近い状態をつくるのが特徴。高温の燃焼ガスが一気に立ち上がることで、上部に乗せた鍋ややかんを素早く加熱できます。見た目はシンプルな構造ながら、少ない薪で強い火力を生み出す高効率ストーブである点が、ロケットストーブのいちばんの特徴です。
原理
ロケットストーブの原理とは、上昇気流と断熱による高温維持です。燃焼室から煙突にかけて通路を狭く・縦長にすることで、熱せられた空気が一気に上昇し、その勢いで焚き口から空気がどんどん吸い込まれ、薪がよく燃える仕組みになっています。
さらに煙突まわりを断熱材で覆って、熱を保ち、内部温度は数百度まで上昇します。これにより未燃焼ガスまでしっかり燃やし切り、煙やススを減らす、高効率な燃焼が可能になります。シンプルな構造の小さな高効率ボイラーのイメージです。
薪ストーブとの違い

一般的な薪ストーブは、広い燃焼室で太い薪をゆっくり燃やし、輻射熱で室内全体を温めるのが得意です。
一方、ロケットストーブは、細い薪や小枝を少量ずつ投入し、高温で一気に燃やす点が大きな違い。火力の立ち上がりが早く、鍋やフライパンの直火調理に向いています。また燃焼効率が高いため、同じ調理をする場合でも、必要な薪の量を抑えられるのがメリットです。その反面、燃料の追加やドラフトの調整など、こまめな操作が必要になる点は理解しておきましょう。
ロケットストーブの自作で必要なもの

一斗缶
もっとも一般的な自作方法が、一斗缶やペール缶を本体に利用するタイプです。一斗缶は軽量で加工しやすく、入手しやすいのがメリット。燃焼室と煙突を収める外側のケースとして使い、内部に断熱材を充填することで、ロケットストーブの「熱を閉じ込める構造」をつくります。
ただし、中古の一斗缶を使う場合は、内部に油や塗料が残っていないか必ず確認し、最初に空焚きしてから使用しましょう。また、加工作業では切断した縁が非常に鋭利になるため、ケガ防止のためにサンダーで面取りしておくと安心です。
煙突
ロケットストーブの心臓部が、縦方向に立ち上がる煙突(チムニー)です。市販の金属製煙突パイプ(直管・エルボなど)を組み合わせて、L字型もしくはコの字型になるよう設計します。
直径は一斗缶サイズであれば、おおよそ100〜120mm程度が扱いやすい目安です。煙突の高さが十分ないとドラフトが弱くなってしまうため、一斗缶上部から少なくとも数十センチは立ち上がるようにしておくと安定しやすくなります。高温にさらされるため、薄いアルミ製ではなく、スチール製やステンレス製を選ぶと耐久性の面でも安心です。
断熱材
ロケットストーブの性能を左右するのが断熱材です。煙突と一斗缶のすき間に詰めて使用します。断熱材として、耐火レンガ・パーライト・バーミキュライト・耐火モルタルなどが使用できます。
効果的な耐熱材を使って、内部の温度を高く保てるほど燃焼が安定し、煙も少なくなります。屋外使用が前提なので、耐熱性と扱いやすさのバランスを見て、手に入れやすい素材を選びましょう。
初心者のDIYであれば、ホームセンターで入手しやすく、そのまま流し込むだけで使える園芸用バーミキュライトやパーライトを詰める方法が手軽でおすすめです。
五徳
鍋やフライパンを安定して載せるための台が五徳です。燃焼口をふさがないように、鍋底とのあいだにすき間をつくりつつ、しっかり支えられる形状を選ぶことがポイントになります。
初心者であれば、自作にこだわらず、市販のシングルバーナー用五徳やBBQ用の頑丈な焼き網をロケットストーブの天板サイズに合わせて載せる方法が簡単でおすすめです。必要に応じて、ボルトや金属プレートでズレないように軽く固定しておくと安心です。
工具など

そのほか、自作には工具と安全装備も欠かせません。ディスクグラインダーは一斗缶のカットや切り口のバリ取りに、金切りバサミは細かな切り込みや調整に、ドリルはネジ止め用の下穴あけに使います。こうした基本工具に加え、革手袋・保護メガネ・耳栓などの保護具も必ず用意しましょう。作業時には金属の切り粉や火花が飛び散るため、長袖・長ズボンで肌の露出を避けることも重要です。
ロケットストーブの自作手順
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一斗缶と煙突のレイアウトを決める
まずは一斗缶のどの位置に焚き口・煙突を配置するかレイアウトを決めます。一般的には、一斗缶の側面下部に焚き口、内部にL字型(またはコの字型)になるよう煙突を配置し、上部のフタ中央付近から煙突の出口を出す構成が扱いやすいです。
紙に簡単なスケッチを書き、寸法をあらかじめ決めておくと、切断ミスや部材不足を防げます。この段階で、鍋やフライパンをどこに置くか、五徳をどう固定するかまでイメージしておくと、調理しやすい実用的なストーブに仕上がります。
一斗缶と煙突パーツの加工
レイアウトが決まったら、一斗缶の側面と上面に煙突や焚き口用の穴を開けます。
金属用のホールソーやディスクグラインダーを使い、煙突径より少し大きめの開口部を確保しましょう。切断面は非常に鋭くなるため、ヤスリやグラインダーでバリ取りし、手が触れても安全な状態にしておきます。
次に、エルボパーツなどを利用して煙突をL字型に組み、一斗缶内部に仮固定。位置が決まったら、リベットやネジなどでしっかり固定しておきます。すき間が少ないほど空気の流れが安定し、火が安定して燃えやすくなります。
断熱材を充填し、仕上げを行う
煙突の位置が決まったら、一斗缶内部の空いているスペースに断熱材を充填していきます。バーミキュライトやパーライトを流し込みながら、棒で軽くつついて隙間をなくすイメージで詰めていきましょう。上部には耐火モルタルを薄く塗り、断熱材がこぼれないよう蓋をする方法もよく使われます。最後に、焚き口に薪を置きやすいよう簡易の棚やロストル(金属網)を設置し、天板には市販の五徳を載せて鍋が安定して置けるようにします。外観を整えたい場合は、耐熱塗料で塗装するとサビ防止にもなります。
試運転する
組み立てが完了したら、必ず試運転を行い、ドラフトや燃焼状態を確認します。少量の薪や小枝を焚き口に入れ、煙突から勢いよく炎が立ち上がるか、煙が横から漏れていないかをチェックしましょう。
うまく燃えない場合は、焚き口が狭すぎないか、煙突の高さが足りないか、断熱材の詰め方にムラがないかを見直します。また、実際に調理で使う前に数回は試し焚きを行い、金属の歪みや塗装の焼けを落ち着かせておくと、本番のキャンプやアウトドアで安心して使えるようになります。
ロケットストーブおすすめ自作キット
一から全て自作するのが不安な場合は、ロケットストーブ専用の自作キットを活用する方法もあります。例えば、ペール缶と煙突を組み合わせるタイプの自作パーツキットであれば、必要な金属パーツがセットになっているため、加工の手間を大きく減らせます。
また、ロケットストーブとして完成しているモデルを購入し、燃焼原理や使い勝手を体験してから、自作に挑戦するのも一案です。
キットをベースに構造を理解したうえで、一斗缶や断熱材を自分好みにアレンジすれば、実用性と安全性を両立したオリジナルストーブに近づけやすくなります。
ロケットストーブを自作する際の注意点
ロケットストーブは高温になるため、自作・使用ともに安全面の配慮が不可欠です。まず、加工時には保護メガネ・革手袋・長袖などの保護具を必ず着用し、火花や金属片が飛んでも安全な環境で作業しましょう。特にディスクグラインダーは、刃の跳ね返りやディスクの欠けで大きなケガにつながりやすいため、材料をしっかり固定し、両手で本体を持って無理な力をかけないようにすることが大切です。
完成後の使用時は、平坦で不燃性の地面(耐火レンガや土の上など)に設置し、テントや木製デッキ、可燃物から十分な距離をとることが大切です。風の強い日は火の粉が飛びやすく、山火事や延焼のリスクが高まるため、使用を控える判断も重要になります。
また、屋内や換気の悪い場所での使用は、一酸化炭素中毒の危険があるため厳禁です。必ず屋外で、消火器や水バケツを用意したうえで安全に楽しみましょう。
ロケットストーブを自作できればプロキャンパー!
ロケットストーブづくりは、金属加工や断熱の知識、安全管理など、キャンプスキルの集大成ともいえるDIYです。市販品を使うだけでは見えない「火の性質」や「燃焼効率」の感覚がつかめるようになり、焚き火台や薪ストーブの扱いにも自信がつきます。
もちろん、無理のない範囲で少しずつステップアップしていくことが大前提ですが、自分の手でつくったストーブでお湯を沸かし、料理を楽しめたときの達成感は格別です!安全第一を守りつつ、ロケットストーブの自作に挑戦して、一歩先のプロキャンパーを目指してみましょう。







