
毎年6月中旬の雪解け後に開通して、秋まで楽しめるトレイルです。人気のアクセス拠点になる町のひとつが、前回ご紹介したマウントプレザント。今回はRVトレーラーにRZR(アメリカ・ポラリス社が製造するオフロード車)を積んで、オフロード・ドライブを満喫してきました!
ちょっと臆病な私と、RZRの幅が通る道さえあれば、どこへでも突っ込んで行く怖いもの知らずの夫。さて、今回はどんな冒険が待っているのでしょうか?
ユタ州中部で走りぬく「道なき道を進む冒険」
香りで目覚めるキャンプ場の朝ごはん
前回訪れたときは、まだ山の大半が雪で覆われているのが分かっていたので、RZRは持って行きませんでした。その代わり、キャンプ場でゆっくり何もしない時間を楽しんだスローライフ。今回訪れたのは7月。もちろん目的は、オフロード・ドライブです。

到着初日はキャンプ場を散策したり、町まで下りて食材を調達するのが私たち夫婦のルーティン。もちろん、行く場所によっては周辺地域にお店がほとんどないキャンプ場もあります。そんなときは、自宅を出発する前に、必要なものはすべてそろえておきます。
サイトでRVと生活インフラをつないだ後は、翌朝の食材を買いに、RZRに乗り込んで町まで。ユタ州では特定の安全装備を備え、登録を済ませたオフロード車は「ストリートリーガル(公道走行可)」として、一般道路を走れる制度があります。


アラピーンOHVトレイルとは?
さて今回の記事の舞台、ユタ州中部に広がる「アラピーンOHVトレイル」は、全長900キロメートル以上、標高3000メートル級の山岳地帯を縦横に走る、巨大トレイルシステムです。バギーやダートバイクなど、オフロード車でしかたどり着けない絶景の宝庫。
緑豊かな高山林、視界が開けた尾根道、湖畔のキャンプ地、遭遇する野生動物たちなど、走るたびに新しい風景が現れます。
そして昭和の山小屋を思い出すような「ぽっとん式のトイレ」が、ところどころに設置されているのは、アウトドア好き女性にとってはありがたいのです。



標高の高い道沿いには、ところどころ雪が残っていたり、まるで牧場の柵かと見まがうような木製フェンスがずらりと並んでいます。実はこれ、冬になると山から吹きつける風にのって、雪が道路へ流れ込むのを防ぐ「スノーフェンス」なのです。冬の交通を守る、頼れる存在です。

この幅通れる?無言の通行チェック
ユタ州でオフロード・ドライブを楽しんでいると、時おりゴロリと置かれた大きな岩や、太い丸太が道の両側に現れます。
これは、「この幅を通れる車両だけ通行OKですよ」という、無言の通行チェックなのです。「自然の素材でジャッジされる」あたりが、いかにもこの土地らしいと感じます。






湖畔キャンプする人を横目にアクセルをゆるめて走る
湖畔に差しかかると、水辺ではしゃぐ子どもたちの声が聞こえてくることも。この辺りは、オフロード車専用トレイルのすぐ横をハイウェイが通っているため、人が多くなる場所です。
家族連れのキャンパーさんたちとすれ違ったり、笑顔で手を振って挨拶しながら、RZRのアクセルを少しゆるめます。冷たい水に足をひたす人や、カヌーを浮かべてのんびりと漂う人。自然の中で過ごす休日の何気ない一面に、心が和みます。



しばらく、舗装されたハイウェイを走り抜けます。再び岩と砂利の混じる荒れた斜面へと戻り、キャンプ場へと向かいます。
ユタ州の小さな町では、RZRやバギーがスーパーやガソリンスタンドに、普通にとまっている光景が珍しくありません。
ムースは気ままに、こちらは緊張気味に
全身土ぼこりにまみれながら、キャンプ場への帰り道。ふと前方の草むらに目をやると、いたのです、ムースが!
先に気づいて、すでに路肩に駐車していた数台の車の後ろに、私たち夫婦もRZRをとめてしばし見とれていました。森の中で遭遇するものと思っていたのに、まさかこんな、町からそれほど離れていない草原で会えるとは。

その筋肉質な体格は遠くからでもしっかり確認でき、こちら人間側をちらっと見ながらも、マイペースでゆったりと草を食べているようでした。
ちなみにムースとは、北米に生息するシカの仲間で、シカ科の中では最大級。体高は2メートル近くになり、大きなオスの体重は500キロを超えることもあります。特徴は、長い脚と、幅の広い平たい角(オスのみ)。
ムースはもともと単独で行動する動物です。だからこそ、草原のど真ん中にぽつんと立つ姿が、妙に堂々として見えるのです。「安全に道を渡って、ちゃんと森まで帰ってね!」
夜は星空を眺めながら焚き火タイム
キャンプ場での夜は、雨や強風の日以外は決まって、焚き火と星空観察です。かと言って、星に詳しいわけではないのですが、星空を眺めながら動く物体があると「あれ、UFOかな?」とワクワクする私(笑)。

飛行機や流れ星、国際宇宙ステーション(ISS)や人工衛星などが、山の夜空を彩っていました。個人的には、それらの中にUFOも含まれていると思うのですが…。夫の「いや、絶対ちがう」と言う即答で、会話終了でした。

標高およそ3000メートルのトレイルで出会った景色や香り、そしてムースとの遭遇。すべてが旅の一部になって、帰り道さえも次の冒険の入り口に見えたキャンプでした。
アラピーンOHVトレイルの公式サイト
https://www.utahatvtrails.org/