コロンビア・マンモスはユタ州の沼に眠っていた! 巨獣発見の地を四駆で駆け抜ける | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.12.20

    コロンビア・マンモスはユタ州の沼に眠っていた! 巨獣発見の地を四駆で駆け抜ける

    コロンビア・マンモスはユタ州の沼に眠っていた! 巨獣発見の地を四駆で駆け抜ける
    北米ユタ州中部、標高およそ2700メートルのハンティングトン・キャニオン。ここは、氷河期時代の巨獣、コロンビア・マンモスが泥の中から姿を現した地です。その地を目指してRZR(四駆のオフロード車)のエンジン音を響かせながら進む山道は、まるで太古と現代が交差するタイムトンネル。

    今回は大人の子ども心をくすぐる冒険心と、マンモスの眠りを感じる静けさが同居する場所をご紹介します。
    Text

    ダートロードを走る、史跡と冒険のルート

    前例のない高所で発見された、コロンビア・マンモスとは?

    氷河期の北米大陸をのしのしと歩いていた巨獣、コロンビア・マンモス(以下、マンモス)。背の高さは4メートルを超え、体重は10トン近く。まるで山のような巨体に、ぐるりとカーブした長い牙を備えている姿は、まさに氷河時代のシンボルといえます。

    そんな彼らが最後に姿を消したのは、約1万年前。気候の変化に加え、人類の狩猟も絶滅の要因だったとされています。太古のロマンを運ぶその存在感は、今なお私たちを冒険の旅へと誘ってくれます。

    ユタ州のさまざまな場所で、マンモスの化石は発見されていますが、このハンティングトン・キャニオンでの発見は、保存状態・標高ともに「ハンティングトン・マンモス」として特筆される代表的な例なのです。

    キャンプ場をあとに森のゲートを突破!目指すはマンモス発見の地

    マンモスが発見されたハンティングトン・キャニオンは緑が多く、オフロード・ドライブ中も森の匂いが車内に流れ込んできます。何度も通った道ですが、今回初めて「今日は立ち寄ろう!」と決めて、発見地を示す標識を目指します。

    相変わらずあちこちで枝分かれするトレイルが気になって、寄り道だらけの夫婦です。森の中では、RZRのボディに枝がカサッと触れるたびに、自然の中にいる実感が湧いてきます。

    夫の運転技術を信じてはいるのですが、たまにRZRの前方部分で押された小枝が、勢いをつけて助手席の私めがけて飛び込んでくるので、風景に見とれてボーっとしていると、ピシッと顔や腕を枝打ちされます(笑)。

    この道幅を通れる車両だけ通行OKの「無言の通行チェック」。残念ながら、わが家のRZRはここでストップ。
    道幅を示す標識の背後には、入りたくてウズウズする山道が続く。

    訪れたのは8月。ユタ州ではアーチェリーの狩猟シーズンがちょうど始まる頃で、森のあちこちでハンターの姿やDWR(ユタ州野生生物資源局)のトラックが巡回しているのを見かけました。

    冬は積雪で閉鎖される、トレイルのゲート。
    「私有地のため立ち入り禁止」のサイン。ハンター向けに最近設置されたようだ。

    土ぼこりにまみれて自然と歴史を感じる旅

    寄り道をしながら、キャンプ場から2時間ほどかけて、マンモス発見場所の駐車場に到着しました。

    標識にある発見日に注目してほしいのです。1988年8月8日。占星術では「ライオンズゲートが開くピークの日」で、新しい流れが始まる節目だそうです。

    科学とは関係ありませんが、偶然とはいえ、この日にマンモスが見つかったと思うと、どこかロマンを感じてしまいます。

    静かな山道の途中にひっそり現れる、マンモス発見地点を示す標識。
    長いダートロードを走り切り、土ぼこりに包まれたRZR。
    私たち夫婦も全身土ぼこりまみれ。これもアウトドア旅のいい味ですね。
    マンモス発見地にあるハンティングトン貯水池で、手を水にひたしてリフレッシュする夫。
    静かなハンティングトン貯水池の水辺。
    標識左の舗装された州道31号線からもアクセス可能なので、オフロード車がなくても安心。

    偶然のひと掘りが呼び起こした太古のロマン

    ここで、発見時のエピソードをサクッとご紹介しますね。ユタ州中部の山あい、ハンティングトン・キャニオン。1988年の夏、ひとりの作業員が建設中のダム現場で、ブルドーザーのような建設用重機のレバーを握っていました。いつも通り土を押し上げていたその時、「ガリッ」と鈍い音とともに、丸太のような何かが地面から顔を出したそうです。

    運転手のクリス・ニールセンさんは、最初は木の根っこだと思ったそう。しかしそれは、太古の森の木ではなく、数万年前の巨獣の骨だったのです。

    風が抜けるキャニオンの静けさの中、駐車場から見る発見場所。

    駆けつけた地質学者たちは、その保存状態に息をのんだそうです。標高2700メートル、氷点下の泥がまるで天然の冷蔵庫のように骨を包み、牙から助骨までほぼ完全な姿で残っていたのです。まさに「冷凍マンモス」のような奇跡。

    マンモス発見のけいいを伝えるパネルが並ぶ、屋根付きエリア。
    パネルに描かれたマンモスの姿を見ながら、想像が膨らむ静かな時間。

    しんとした山あいの静けさの中に立ち、「この下に他には何が眠っているのかな?」と標識を読みながら思いにはせている私の横で……。

    昼寝する夫……。夢の中で太古へタイムスリップしているのでしょう、多分(笑)。

    発見されたマンモスは、「スピリット」という愛称で地元の人たちに親しまれ、現在はユタ州立大学の先史博物館に保管されているそうです。

    たき火がなくても、オリジナルカクテルがあれば十分心地いい

    マンモス発見の地で深呼吸しながら散策を楽しんだ後は、またRZRに乗り込んで冒険続行です。帰り道が真っ暗にならないうちに、夕方にはキャンプ場へ引き返すことに。

    ライダーの冒険心をくすぐるトレイル入口。

    私たち夫婦にとってキャンプ場での夜は、たき火はマストなのですが……。実はこの時、猛暑と降水量の少なさで山火事のリスクが高く、キャンプ場はたき火禁止だったのです。

    山の中をドライブ中も、山小屋トイレやゲートで、たき火禁止のサインが。ちょっと残念でしたが、自然相手の外遊びには、こういうこともありますよね。

    チェックインの際にオフィスで配っていた「たき火禁止」のお知らせ。

    というわけで、火の代わりにオリジナルの夫婦カクテルを作って、RVの中で窓を全開して過ごしました。BGMは風で木が揺れる音や、遠くを走るオフロード車のエンジン音です。

    ウォッカ入りアイスティにレモンを絞り、ブラックベリーで仕上げたキャンプの一杯。

    旅の最後に起きたちょっとしたハプニング

    チェックアウトの朝、RVを動かそうとした瞬間、タイヤのひとつがぺしゃんこになっているのに気づいた夫。つくづく、メカに強い夫で本当に良かったと、“ホッ”とする瞬間です。

    ジャッキと工具を手際よく取り出して、キャンプ場の駐車場でスペアタイヤと取り換える夫。

    旅は予定どおりにいかないことも多いですよね。でもこういう“ちょっとした番外編”こそ、あとでいちばん話したくなる思い出になります。

    思わぬパンクも、高速道路ではなく、ここで気づけて良かった。そんな小さな幸運も含めて、ユタ州の旅はやっぱり面白いです。

    トロリオ牧さん

    アメリカ・ユタ州ライター

    2001年渡米、ユタ州ウチナー民間大使。パンデミックをきっかけに「いつ死んでもOK!な生き方」を意識するようになり、17年間務めたアメリカ政府の仕事を2023年に辞職。現在はNHKラジオ出演や日本のWebメディア執筆など幅広く活動中。編著に電子書籍『型の中に答えはある』がある。夫婦でRVキャンプを楽しむのが最高の癒し時間。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。「海外書き人クラブアウォーズ2025」最優秀新人賞受賞

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