今回は大人の子ども心をくすぐる冒険心と、マンモスの眠りを感じる静けさが同居する場所をご紹介します。
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ダートロードを走る、史跡と冒険のルート
前例のない高所で発見された、コロンビア・マンモスとは?
氷河期の北米大陸をのしのしと歩いていた巨獣、コロンビア・マンモス(以下、マンモス)。背の高さは4メートルを超え、体重は10トン近く。まるで山のような巨体に、ぐるりとカーブした長い牙を備えている姿は、まさに氷河時代のシンボルといえます。
そんな彼らが最後に姿を消したのは、約1万年前。気候の変化に加え、人類の狩猟も絶滅の要因だったとされています。太古のロマンを運ぶその存在感は、今なお私たちを冒険の旅へと誘ってくれます。
ユタ州のさまざまな場所で、マンモスの化石は発見されていますが、このハンティングトン・キャニオンでの発見は、保存状態・標高ともに「ハンティングトン・マンモス」として特筆される代表的な例なのです。
キャンプ場をあとに森のゲートを突破!目指すはマンモス発見の地
マンモスが発見されたハンティングトン・キャニオンは緑が多く、オフロード・ドライブ中も森の匂いが車内に流れ込んできます。何度も通った道ですが、今回初めて「今日は立ち寄ろう!」と決めて、発見地を示す標識を目指します。
相変わらずあちこちで枝分かれするトレイルが気になって、寄り道だらけの夫婦です。森の中では、RZRのボディに枝がカサッと触れるたびに、自然の中にいる実感が湧いてきます。
夫の運転技術を信じてはいるのですが、たまにRZRの前方部分で押された小枝が、勢いをつけて助手席の私めがけて飛び込んでくるので、風景に見とれてボーっとしていると、ピシッと顔や腕を枝打ちされます(笑)。


訪れたのは8月。ユタ州ではアーチェリーの狩猟シーズンがちょうど始まる頃で、森のあちこちでハンターの姿やDWR(ユタ州野生生物資源局)のトラックが巡回しているのを見かけました。


土ぼこりにまみれて自然と歴史を感じる旅
寄り道をしながら、キャンプ場から2時間ほどかけて、マンモス発見場所の駐車場に到着しました。
標識にある発見日に注目してほしいのです。1988年8月8日。占星術では「ライオンズゲートが開くピークの日」で、新しい流れが始まる節目だそうです。
科学とは関係ありませんが、偶然とはいえ、この日にマンモスが見つかったと思うと、どこかロマンを感じてしまいます。






偶然のひと掘りが呼び起こした太古のロマン
ここで、発見時のエピソードをサクッとご紹介しますね。ユタ州中部の山あい、ハンティングトン・キャニオン。1988年の夏、ひとりの作業員が建設中のダム現場で、ブルドーザーのような建設用重機のレバーを握っていました。いつも通り土を押し上げていたその時、「ガリッ」と鈍い音とともに、丸太のような何かが地面から顔を出したそうです。
運転手のクリス・ニールセンさんは、最初は木の根っこだと思ったそう。しかしそれは、太古の森の木ではなく、数万年前の巨獣の骨だったのです。

駆けつけた地質学者たちは、その保存状態に息をのんだそうです。標高2700メートル、氷点下の泥がまるで天然の冷蔵庫のように骨を包み、牙から助骨までほぼ完全な姿で残っていたのです。まさに「冷凍マンモス」のような奇跡。


しんとした山あいの静けさの中に立ち、「この下に他には何が眠っているのかな?」と標識を読みながら思いにはせている私の横で……。

発見されたマンモスは、「スピリット」という愛称で地元の人たちに親しまれ、現在はユタ州立大学の先史博物館に保管されているそうです。
たき火がなくても、オリジナルカクテルがあれば十分心地いい
マンモス発見の地で深呼吸しながら散策を楽しんだ後は、またRZRに乗り込んで冒険続行です。帰り道が真っ暗にならないうちに、夕方にはキャンプ場へ引き返すことに。

私たち夫婦にとってキャンプ場での夜は、たき火はマストなのですが……。実はこの時、猛暑と降水量の少なさで山火事のリスクが高く、キャンプ場はたき火禁止だったのです。
山の中をドライブ中も、山小屋トイレやゲートで、たき火禁止のサインが。ちょっと残念でしたが、自然相手の外遊びには、こういうこともありますよね。

というわけで、火の代わりにオリジナルの夫婦カクテルを作って、RVの中で窓を全開して過ごしました。BGMは風で木が揺れる音や、遠くを走るオフロード車のエンジン音です。

旅の最後に起きたちょっとしたハプニング
チェックアウトの朝、RVを動かそうとした瞬間、タイヤのひとつがぺしゃんこになっているのに気づいた夫。つくづく、メカに強い夫で本当に良かったと、“ホッ”とする瞬間です。

旅は予定どおりにいかないことも多いですよね。でもこういう“ちょっとした番外編”こそ、あとでいちばん話したくなる思い出になります。
思わぬパンクも、高速道路ではなく、ここで気づけて良かった。そんな小さな幸運も含めて、ユタ州の旅はやっぱり面白いです。








