
この街には、今も伝統的な⾷⽂化が⾊濃く残っています。砂嵐も治まる6⽉、⽞奘三蔵の⾜跡を辿り、探検家・ヘディンやスタインが発⾒した仏教遺跡を巡りつつ、ウイグル料理の探検に出かけました。
(写真)ラワク遺跡:玄奘三蔵が説法をした仏教寺院跡。
地中の巨⼤窯で焼いた丸ごと⼀匹の⽺から作る「巨⼤ハンバーガー」
店名:和⽥市喀克夏勒⼲枯烤全⽺
街中の⾏列のできる焼き⾁店。⼈集りの奥の1階は地中に巨⼤な窯を10余り構え、10⼈ほどの男達が働いています。外気温が35度Cなので、室内温度はゆうに50度Cを超えているのではないでしょうか。彼らはそれをものともせず窯の内部温度調整のために⽔をうち、もうもうと⽴ち上がる⽔蒸気と煙の中で焼き具合をチェックしています。
⾁は⽺、ガチョウ 、鶏、鳩など。砂漠の⽊コヨウ、ポプラなどの薪を熾⽕にし、クミン、唐⾟⼦などで⾵味付けし⼿際良く焼き上げます。


⽺は1kg(145 元)からの注⽂。ナン※に挟んで出されます 。直径30cm程の巨⼤なバーガーです。一般的な料理が 10〜15元なのでかなり⾼価です。⾹ばしく焼き上げられた⽺⾁は、中まで⽕が通りお腹に安⼼です。
※ナンはインド、中央アジア、中近東で⾷べられる⼟窯で焼かれたパン。
ほどよい⾁汁で⼒強い⽺⾁なのに、なぜか砂漠の乾いた味が感じられます。飲料はチャイでも良いですがウイグル産ビールWUSU※がさらによく合います。

イスラム教地域なのでほとんどの料理店はアルコールを置いていません。酒好きにはちょっと⾟いですが、近くの酒屋で購入し持ち込むことができます。瓶は目立たないようにテーブルの下に置くのがマナー。持ち込み料は取られません。
新体験なブラシが付いてくる「焼き⾁饅頭」
店名:⽟⿓喀什烤包⼦
同じく⾏列のできるウイグル料理店。⾃慢げに⼤声で焼き上がりを告げる料理⼈、その名物は焼き⾁饅頭。⾹⾟料などで味付けした⽺を餡にナンの⽣地に包み込んで窯で焼き上げたものです。
⼀緒に運ばれてくる見慣れないブラシ…実はこの饅頭は、岩塩を練り込んで作られた窯の淵に貼り付けて焼くので、岩塩が付着します。それをこのブラシでゴシゴシ擦り落としいただきます 。パリッを通り越してかなり硬めで乾パンのようですが、適度な塩味で餡のミンチ状の⽺はクミン⾹を強く感じます。



⼝直しのデザート、⾒かけも味もトコロテン 。でも材料は地元産えんどう⾖のスターチです。ニンニク 、唐⾟⼦、パクチーをトッピング、酢で味付け。喉越しが良く暑い季節にぴったり!

砂漠の真ん中に寿司屋、海鮮料理屋が出現!海⽼、烏賊、蛸、シャコまである観光屋台
「和⽥(ホータン)夜市」
海から内陸5000kmの砂漠のオアシスでは海⽼や鯛が夜毎舞い踊ります。
漢⺠族好みの満艦飾(まんかんしょく)の通りは⻑さ1kmほど。両側に数⼗軒の飲⾷店がびっしりと軒を連ねています。店頭で⾷材を決め、調理された料理をその店の背後のテーブルで⾷べるスタイルです 。ビールなど飲料は脇の冷蔵庫に⽤意されていますので持ち込む必要がなく安⼼です。ワインは⾒かけませんでした。


漢⺠族旅⾏者の多い屋台市は海産物で溢れています。

寿司屋までありますが、日本の味を求めている方にはあまりお勧めしません。おそらく機械で成形された物で、飯に酢は感じられません。


好物のシャコも試しましたが、中華⾵の味付けで⾝はパサパサ、シャコの味は感じず…といった具合でした。
それよりも、⼤鍋でぐつぐつと煮込まれた串は、⼀⾒おでんの様ですがこれはイケます!多種多様な串がここにはありますが、エノキダケがお勧め。


海産物の産地、寿司の⽣産地を尋ねるといずれもウルムチからとの事でした。海辺の街からウルムチへ冷凍で輸送され、その後この地まで届けられるということでしょう。寿司は1つ2〜5元なので輸送コストを考えるとかなり安価です。

市場の中ほどにあるステージでは、ウイグル民族⾳楽と踊りで観光客を楽しませてくれます。

⽬をひく鳩スープ焼きスイカ鍋はこの地の名物料理で、鳩にナツメ 、クコなどで味付けされています。140元ほどしますので、好奇⼼が有ればの⼀品ですね。
ウイグル⾷材、料理が⼈々の活気とともに溢れる「農⺠市場」
休⽇に開かれる市場は地元⺠で溢れかえり、⼈々は⽇⽤品、⾷材を求め何よりも屋台の⾷事を楽しみに集まります。この⽇はクルバン祭※と⾔う事で⼈の海状態!ウイグル料理は⾁料理が中⼼で焼肉屋を多く見かけます。


またパミール⾼原、天⼭、崑崙⼭脈からの豊富な雪解け⽔で川、湖が多いため、草⿂、雷⿂、鯉など淡⽔⿂がとても豊富です。


旅をした2025年6⽉は最⾼気温35度Cを越え、湿度は40%以下。ここでは⻄⽠、メロン 、桑の実、ザクロなど⽣果物はどれも喉の渇きを潤してくれます。

※クルバン祭は犠牲祭とも⾔われイスラム教の重要な祭。昔は、⽺などの家畜の2/3を貧者に分ける習慣がありましたが、近年は家族、友⼈だけで⾷べる様です。
熱した砂漠の砂で焼く卵(鶏、鳩、ガチョウ)はゆで卵ではなく焼き卵。⼤⼈には漢⽅の強精剤など 、⼦どもには蜂蜜を⼊れたり様々な⼯夫を凝らした卵料理で⼤⼈気です。

伝統的なウイグルの料理、ラグメンの替え⽟にオリーブ油をかけたら
ウイグル民族がほぼ毎⽇⾷べるラグメン。この腰のある麺は⼿打ちで店でも家庭でも作られています 。これは様々な野菜に⽺や鶏を⼀緒に炒め、トマトベースのスープを⾜して麺と絡め、汁多めの焼きうどんのようです。麺を⾷べ終え残った汁も無駄にはしません。
なんと替え⽟を頼めます!そこでその素の麺にオリーブ油、塩、胡椒で絡めて⾷べてみました。ラグメンはうどんにに似ていると良く⾔われますが、このアルデンテ感はパスタに近い感触です。


【油の話】
ウイグル料理で通常使われるのは、主に菜種、コーン、紅花油ですが、⾼級⾷材店ではオリーブ油もあります。でもその値段は 120元/Lで約10倍です。
新しいウイグル料理はまるでイタリアン!


店名:万宴城
ホータンから1000km北にあるウルムチは、人口350万人を超える新疆ウイグル⾃治区最⼤の都市です。漢⺠族⽐率は70%を越えるほど⾼く、⾼層ビルが⽴ち並び近代化が進んでいます。その中の評判のウイグル料理店を訪れました。そこでの⽜⾻の髄はウイグル料理の概念を覆す物でした。
まずは斬新さを感じる盛り付け。⾻から髄をこそぎクミン、コリアンダーなどと混ぜ合わせ薄焼きナンに乗せた姿は、まるでピッツァ!オッソブッコとは違い、スパイスの効いた砂漠の味です。数々の洗練された料理を、店に⽤意されている地元トルファンの⾚ワインと合わせて堪能しました。
ウルムチには回転寿司店もできていますが、イタリアン、フレンチ料理店はまだありません。経済の発展状況をを⾒ると、できるのも時間の問題に思えます。

氷河の氷で乾杯、!新疆ウイグル⾃治区でワイン 、酒を楽しむには


新疆ウイグル⾃治区はトルファンを中⼼に葡萄の産地で、近年幾つものワイナリーができています。地元種や欧州種の葡萄で作る⾚ワインが多く、サンテミリオン⾵で⽺⾁に良く合います 。この地は枝のままの⼲し葡萄も作るので、ソーテルヌの様な⽢⼝の⽩ワインを期待してワイナリーを訪れました。
いくつか試飲し、予想通り⽢⼝の⽩はありましたが、異様に豪華な箱⼊りで 400元と聞きコスパが悪いと判断し購⼊しませんでした。また、酒屋でもドライな⽩はまるで⾒かけませんでした。ワインは地元産も⾼額で⼀般的ではありません。輸⼊品もありますが、よく見かけるロワールの⽩が500元近くするとありびっくりしました。ワイン、ウイスキーなどほとんどのアルコールは⼿に⼊りますが、品種は限られ⾼価格です。
ほとんどのウイグル民族はイスラム教徒なので酒を飲む習慣がありません。ビールを含め酒を飲んでいるのはほぼ外国⼈か漢⺠族です。ここでは⾼アルコールの⽩酒などが好まれてます。

新疆ウイグル⾃治区はローマと奈良のちょうど中間地点です。民家や店でメン(麺)を打つその姿は素麺・奈良に、アルデンテの麺はパスタ・ローマに通じます 。じんわりとシルクロードを感じます。新疆ウイグル⾃治区・都市部では経済発展に伴い漢⺠族の⼈⼝⽐率が⾼くなっています。
ウルムチでは75%が漢⺠族ですが、ホータンでは5%未満です。ホータンにはウイグルの味がまだまだ⽣きています。この魅力的な砂漠の味は⻑く続いて欲しいものです。

※今回の旅のコーディネートは⻄安 XIN 信国際旅⾏社にお願いしました。個⼈旅⾏⼿配を得意とする社です。
⻄安 XIN 信国際旅⾏社:https://nwcts.com.cn
※1元=約 20円(2025年6⽉現在)