オーストラリア国内で「リバーシティー(川の街)」と称されるように、町の中心部を蛇行した川が流れるブリスベン。その川沿いの印象的な遊歩道を紹介するシリーズの第5弾は、崖の下と崖の上を通る遊歩道です。楽しいパブリックアートも見ることができます。
まずは「崖下」遊歩道へ
その遊歩道の名前はオーストラリア・ブリスベンにある「ザクリフスボードウォーク(The Cliffs Boardwalk)」。市の中心部の対岸にある1平方キロメートルほどの「カンガルーポイント」という地区の南西の端から川に沿って北端近くまで進む1.8キロメートルほどの遊歩道です。
対岸の市の中心部から来る場合はフェリーを使うこともできますが、歩行者・自転車専用橋の「グッドウィルブリッジ(Goodwill Bridge)」も爽快です。前回も書きましたが背中の後ろに車が通っていない分、のどかな気分で橋からの景色を堪能できます。

「グッドウィルブリッジ」をカンガルーポイント側に降りたところ。
遊歩道に入ってまず見えてくるのがなにかに止まったペリカンの姿……と思いきや、鉄でつくられたアート作品!

作者のクリストファー・トロッター氏はボルトやナット、シリンダーやツルハシなど様々なくず鉄をもらいうえ、基本的にはそのままの形でただ組み合わせることによって、動物に見えるアートをつくる作風で知られています。
橋の下を通り過ぎると左から歩行者専用・自転車専用・車道にわかれています。

川にいちばん近いのが歩行者用というのがうれしいところ。

川の左側がブリスベン市の中心部。右側が今から歩くルートです。
ロッククライミングとアートの共存
すぐに道の右側が切り立った崖になりました。ロッククライミングをしている人たちがいます。崖の上から降るアブセイリングもここでは盛んです。

山の中ではなくこんな都会で本物の崖を登るなんて爽快……いや、景色を眺めている余裕はないですかね。

「ロッククライマー以外は立ち入り禁止」の看板も見えます。
このあたりから道は崖沿いと川沿いの二つにわかれますが、今回は後者を進みます。

途中、マングローブ林を堪能できるエリアがあったり。

こんなアートが出てきたり。ピーター・D・コール氏の一連の作品は「ザクリフスボードウォーク」のあちこちに置かれています。
そして崖沿いの道と合流します。するとまたまたクリストファー・トロッター氏の作品が現れます。作品名は「魚の化石」。以前インタビューしたときに訊いたら「地層が見える崖は化石が発掘されやすいから」という発想とのこと。

これもくず鉄を組み合わせたもの。もともとはどんな部品だったか想像するのも楽しいですね。

真正面から見たところ。キャンバス代わりのコンクリートの高さは2メートル程度です。
この先は車道がなくなり、歩行者専用道路と自転車専用道路のみ。板張りの気持ちいいボードウォークもあります。

ベンチも至るところに。

対岸の高層ビル群もさきほどよりも近づいてきました。
この先、新しい歩行者専用橋の建設のために遊歩道は一時的に通行止め。そのままUターンしてもいいのですが、帰りは崖の上からの景色も眺めてみましょう。
そして「崖上」遊歩道へ

この階段のあと坂道を登って、大きな通りに突き当たったら右に曲がります。
10分ほど歩くと崖の上に出てきます。

そこからまたこの階段を下って崖の下に行くことも可能 。

階段を降りたところ。崖のすぐそばを歩くこの道も魅力的ですが、今回は遠景を優先して崖上にもどります。
崖の上からの景色はなかなかのものです。同じビル群でも川面からと崖の上では見える印象がかなり違いますね。ここは「リバーテラス(River Terrace)」という道の歩道という扱いで、遊歩道名はついていないと思います。

芝生の向こう、石垣との間が遊歩道です。

切り立った崖の上。高所恐怖症の私としては下を見るのはかなり怖いです。
この崖の上の遊歩道は600メートルほど続きます。

ここから階段を下りると最初に来た川沿いの遊歩道にもどれます。
川沿いの「ザクリフスボードウォーク」とそれに沿った崖上の遊歩道。2つの角度から風景が楽しめるルートを紹介しました。崖上はブリジー(ブリスベンっ子)たちも大好きなピクニックエリア。食事と飲みものも用意して暮れ行く夕陽で表情を変える高層ビル群を眺めるのもなかなかオツなものです。

オーストラリア在住ライター(海外書き人クラブ)
柳沢有紀夫