登山靴は使うたびに洗うのが基本
日帰り登山でも、登山靴は意外に汚れています。長く使うためには小まめな手入れが欠かせません。帰宅後はできるだけ早く洗うことを心掛けましょう。
汚れを落としながらダメージをチェックしよう
一日中履いた登山靴はあまり汚れていないように見えても、汗・皮脂ホコリなどでダメージを受けています。そのまま放っておくとカビや臭いの原因になりかねません。
次に使うときに慌てないよう、登山から帰宅したらその日のうちか、遅くとも翌日には洗うようにしましょう。
汚れを落としながら、靴紐や金具が傷んだり破損したりしていないか、ひび割れや生地の破れはないか、アッパーとソールの結合部が緩んでいないかなど、靴のコンディションをチェックします。
早めに手入れをすれば、お気に入りの登山靴をより長く使えます。
登山靴の洗い方【準備編】
登山靴を洗うといっても、いきなり水につけたりブラシでゴシゴシ擦ったりするのは厳禁です。登山靴を傷めず、きれいにするためには、事前に準備しておきたいことがあります。順番に見ていきましょう。
いきなり洗うのはNG!必要な事前準備
中敷きと靴紐を外す
汗や皮脂を吸い込んでいる登山靴の中敷きは、履くたびに取り出して水洗いをします。汚れがひどい場合は中性洗剤を使うとよいでしょう。すすいで水気を絞ったら、陰干しをしてしっかり乾燥させます。水分が残っていると登山靴の内部がカビたり、臭いが発生したりするので注意が必要です。
靴紐を外すときは、劣化していないか、紐穴に砂や泥が詰まっていないかをあわせてチェックしましょう。紐は中敷きと同様に水または中性洗剤で洗い、陰干しをしておきます。靴紐を外す前に写真を撮っておくと、掛け直すときにスムーズです。
外側の汚れを軽く落とす
外側の砂ボコリや泥汚れは、靴ブラシや古い歯ブラシで軽く擦って落としておきます。登山靴の履き口にもブラシをかけておくとよいでしょう。
この段階では汚れをしっかり落とすのが目的ではないので、強く擦る必要はありません。手入れの時間が十分にとれないときも、外側のブラッシングだけはしておきましょう。
汚れを落としながら、アッパー部分にひび割れや生地の破れはないか、ソール部分がはがれかけていないか確認しておくと安心です。
登山靴の素材をチェック
洗う前は、登山靴の素材を必ずチェックします。登山靴を長持ちさせるには、素材に合った手入れが不可欠です。
例えば、ヌバック・スエードといったデリケートな革素材の登山靴を、水につけたりブラシで強く擦ったりすると傷んでしまう恐れがあります。せっかくの手入れが、逆に靴の寿命を縮めることになりかねません。
専用ブラシやクリームなど、手入れに必要なものがある場合は準備しておく方が無難です。登山靴を長く使うための出費と考えて、そろえておくとよいでしょう。
登山靴の洗い方【実践編】
登山靴の洗い方は素材によって多少異なりますが、タオルやスポンジに水やクリーナーを付けて拭き取るのが基本です。洗った後はしっかり乾燥させて、水分が残らないようにしましょう。
登山靴の洗い方
登山靴を洗うのに必要なもの
登山靴を洗うには、スポンジ・タオル・古い歯ブラシがあれば十分です。全て家にある使い古しで構いません。タオルは汚れを拭ったり、水気を取ったりするのに使うので、複数枚用意しておきましょう。
また、登山靴の中に詰めて湿り気を取るために、新聞紙もあると便利です。汚れがひどく、水洗いだけでは不安なときのために、靴クリーナーもそろえておきましょう。
洗った後の手入れに使うはっ水・防水スプレーも必要です。また、ヌバック・スエード素材の登山靴は、専用ブラシやケア用の保革クリームも準備しておきましょう。
タオルやスポンジに水を付けて洗う
登山靴のアッパー部分は、タオルやスポンジに水を付けて洗います。汚れがあまりひどくなければ、ぬらして絞ったタオルで拭くだけでもよいでしょう。
クリーナーを付けて洗う場合は、汚れを落とした後、乾いたタオルでしっかり拭き取ります。素材によってはクリーナーを吹き付けるとシミになるものがあるので、目立たないところで試してから使うと安心です。
登山靴の中の汚れや細かいゴミが気になるときは、ブラシなどで出してから固く絞ったタオルやスポンジを使います。アッパー部分と同様、クリーナーを使ったら残らないように丁寧に拭き取りましょう。
アウトソールはブラシでしっかり洗う
アウトソールを洗うときは、アッパー部分ほど気を使わなくても大丈夫です。水でぬらしてブラシでゴシゴシ洗いましょう。溝に詰まった小石や木の枝などのゴミは、マイナスドライバーのような棒状のもので取り除きます。
安全に履くためには、アウトソールのチェックも不可欠です。傷んでいたり、すり減っていたりしないかも確認しましょう。
車のタイヤと同じで、すり減って溝の薄くなったアウトソールは岩場などで滑りやすくなります。場合によっては、張り替えも必要です。
洗った後は十分乾燥させる
洗った後は、タオルで水分を吸い取ってから十分に乾燥させます。直射日光は避け、風通しのよい場所に登山靴を立てた状態で乾かすのが基本です。乾きにくい登山靴の中には、タオルや新聞紙を詰めておきます。
カビや臭いの発生リスクを軽減するために、乾燥には2~3日かけるのが理想です。
どうしても早く乾かしたいときは扇風機を活用してもよいでしょう。登山靴に詰めたタオルや新聞紙を時々交換しながら、微風をあて続けると乾くまでの時間を短縮できます。
登山靴を洗った後のお手入れ方法
洗って乾かした後の手入れも、登山靴のコンディションを保つのに重要です。次の登山でも快適に使うための習慣にしたい、素材に合った適切なケアや保管方法を知っておきましょう。
洗った後にもお手入れを
はっ水・防水処理を忘れずに
はっ水・防水スプレーをかけておくと、登山靴に水がしみ込みにくくなるだけでなく、汚れが付くのも防げます。屋外や風通しのよい場所で行うようにしましょう。
はっ水スプレーは文字通り水を弾く効果があります。ただし、大雨や水たまりに踏み込んでしまったときなどには効果は期待できません。
一方で、防水スプレーは水が内側には入りこまないようにしてくれますが、通気性が阻害される可能性があります。それぞれの特徴を知って、使い分けるとよいでしょう。
レザーには保革クリームを
ヌバック・スエードなどのレザー素材の登山靴や、部分的にレザーを使っている登山靴には、はっ水・防水スプレーの前に保革クリームを塗っておきます。
人間の肌と同様に、洗って乾かしただけのレザーは固くなっており、ひび割れやシワになりやすいのです。保革成分が入っているはっ水・防水スプレーなら一度に済ませられるので、時間のない人に適しています。
保革クリームを塗ったら乾燥が必要です。風通しのよい場所で一日ほど乾かし、ブラッシングでツヤを出してから保管します。
保管は風通しのよい場所で
登山靴は保管するときも通気性が第一です。
箱や袋に入れて下駄箱にしまったり、押し入れのように空気のこもる場所に入れっぱなしにしたりするのは、おすすめできません。湿気でカビや臭いが発生する恐れがあります。特にレザー素材は、カビに弱いので注意が必要です。
紐を緩めて立てた状態で、風通しのよい場所で保管するのがベストですが、スペースがなく難しい場合は、時々出して風にあてるようにします。中敷きは外して新聞紙を詰めておくと、湿気だけでなく型崩れも防げます。
登山靴を洗うときの注意点
登山靴は水洗いできる素材もありますが、水につけて丸洗いできる訳ではありません。また、汚れを落としたいからとゴシゴシ洗うのも厳禁です。登山靴の劣化を招かないように、洗うときに知っておきたい注意点を紹介します。
気を付けたい注意点
登山靴全体を水につけない
登山靴のアッパー部分とアウトソールをつなげている接着剤は、時間の経過とともに劣化します。使い続けていれば、だんだんとはがれてくるのは自然なことです。
しかし、水につけると接着剤が変質(加水分解)して、劣化のスピードが速める恐れがあります。
また、登山靴の中いっぱいに水を入れてしまうと、内側から水圧がかかるため、防水機能が低下する原因になりかねません。完全に乾くまでにも時間がかかります。
登山靴を洗うときは、ぬらしたタオルやスポンジで拭く程度にとどめましょう。はっ水・防水スプレーをかけて、汚れにくくすることも大切です。
乾かすときや保管するときは直射日光を避ける
紫外線はひび割れなどの劣化の原因につながります。レザー素材はもちろん、化学繊維を用いた登山靴も、乾燥や保管の際は直射日光を避けましょう。
下駄箱に保管すれば直接紫外線は当たりませんが、内部が高温になる恐れがあります。登山靴にとってダメージにつながる可能性があるので注意が必要です。
また、気を付けたいのが、雨に降られたり水たまりに踏み込んだりしてぬれた登山靴を乾かすときです。早く乾かしたいからと天日干しにしがちですが、登山靴にはよくありません。
ぬれてしまった登山靴は、まず水分を拭き取り、中にタオルや新聞紙を詰めて風通しのよい場所に置いておきます。乾燥剤も使うとよいでしょう。
まとめ
登山靴を使った後は、汚れ落としや適切な手入れが不可欠です。コンディションに気を配っていれば、次に登山するときに気持ちよく履けるだけでなく、より長く使えます。帰宅したらできるだけ早く洗い、手入れをすることを習慣にするとよいでしょう。
縁があって登山の相棒になってくれた、お気に入りの登山靴を長持ちさせるためにも、正しい洗い方や手入れ方法を身に付けておきましょう。