映画『炎はつなぐ』の監督に聞く、和ロウソクの炎がつなぐ職人技 - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.08.08

    映画『炎はつなぐ』の監督に聞く、和ロウソクの炎がつなぐ職人技

    全国の職人を長期取材、厳選した職人を収めたドキュメンタリー。知ってるようで何も知らない職人の世界。監督に聞く。

    大西暢夫監督にインタビュー

    「約15年、150か所もの職人さんを取材してきて。すると、〝そのゴミはどこへいくんですか?〟〝その話、どこかで聞いたな〟とつながりが見えて」
     
    そう語るのは大西暢夫監督。和ロウソクの取材で工房を訪ねたときのこと。「ロウってなんですか?」と聞くと、「ハゼの木の実です」と教えられるも、ハゼの木がもうわからない。そこから、ハゼの実を収穫する「ちぎり子さん」という職業が?芯は和紙と灯芯草と真綿が材料⁉知らないことが続出し、あまりの面白さにハマったそう。

    「例えば灯芯草はふやかした灯芯草の髄をナイフを使って抜いていきます。〝灯芯引き〟のおばあちゃんはマジシャンのようにしゅ~って。僕がやると、すぐ切れて話になりません(笑)」
     
    なんども足を運び、ときに泊まり込みで手伝う。そんな監督を前に、どの職人も饒舌に語る。それがまた面白い。映画は、そうして全国の職人を取材した記録。14か所の職人が登場するが、振り返ると和ロウソクの炎が洗練された職人技をつないでいた。

    「知るとそれぞれに奥がある。その面白さに気づくと、モノに物語ができます。モノの価値は、そこに行きつくまでの進化の物語にこそあるんだなと」
     
    登場する多くの職人は信じられないくらいに働き者。勤勉さや手先の器用さだけではない。ハゼの実の殻が藍染めの染料づくりに使われるなど、無駄なく資源を使いきる循環型のしくみや自然への畏敬の念。もくもくと続ける職人たちの技を見つめながら、改めて日本人ってスゴイ! と誇らしいような気に。

    「ここ10年ほどで、職人に興味を持つ若い人が増えています。どれも何百年と続いたもので、そう簡単にはなくならないだろうと思っているんですよね」

    和ロウソクは、技と知恵の交差点

    繭から真綿→真綿は芯に→芯には和紙も使用と和ロウソクが職人技をつなぐ。「炎が揺れたり飛んだり、流動的で飽きない」と監督。

    竹ひごに和紙、その上に灯芯草の髄を数本まき、薄く真綿で覆った芯。

    焚き火みたい!?

    芯が煙突の役割を果たし、空気を吸い上げるので炎が揺らぐ。

    登場する職人達

    養蚕農家

    ふた家族で40万頭の繭をつくる。一日になんども、桑を刈って与える重労働。90代後半のおじいちゃんも現役。

    真綿職人

    繭をのばし、木枠に4枚重ねて陰干し。それを職人ふたりで引きのばす。金箔の塗師も、仕上げに真綿を使う。

    ミツマタ農家

    和紙の原料。大鍋で蒸し、ふたりがかりで綱引きのように皮をむく。よく手伝う監督は、「主戦力です(笑)」。

    金箔職人

    金箔はミツマタが原料の箔合紙の間に1枚ずつ挟み、桐箱につめて出荷する。「金箔は、和紙が命やで」と職人さん。

    漆搔き

    映画には仏具に金箔を漆で貼る塗師屋も登場。漆は漆の木に傷をつけて採集し、集めた液を発酵させる。

    灯芯引き職人

    灯芯草をナイフでなでるように動かすと、髄が命を持った白いヒモみたいにくねくねと現われる。まるで魔法!

    絣工房

    藍染の染料づくり、冬場の発酵にハゼの実の殻を燃料として使う。実の搾りカスを畑にまくと、土地改良剤に。

    職人さんの技は進化した知恵!

    大西暢夫監督

    1968年生まれ、岐阜県出身。写真家・映画監督・作家。2025年日本写真協会賞受賞。「炎はつなぐ」(毎日新聞出版)も上梓。

    『炎はつなぐ』

    (配給:シグロ)
    ●監督・ナレーション:大西暢夫 
    ●撮影:大西暢夫、今井友樹 
    ●7/19~ポレポレ東中野ほか全国順次公開

    ©2025 シグロ/大西暢夫

    ※構成/浅見祥子

    (BE-PAL 2025年8月号より)

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