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    2016.03.09

    【写真家・角田明子さんに聞く:前編】まっさらなワクワク目線で楽しむチェンマイへの旅

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    書籍や雑誌、航空会社の機内誌、広告など、さまざまな分野で活躍する写真家の角田明子さんは、2012年から『REGENBOGEN』(ドイツ語で「虹」の意味)という小さな旅の写真集シリーズを個人で制作・販売しています。その最新刊となるタイ・チェンマイ編の刊行を前に、角田さんが今回の写真集に込めた思いと、取材で訪れたタイ北部の街チェンマイでのエピソードについてお話を伺いました。

    ——『REGENBOGEN』は、どういうコンセプトの写真集シリーズなんでしょうか?

    角田明子さん(以下角田):『REGENBOGEN』で提案しているのは、パッケージツアーではないけれど、バックパッカーの方々の旅でもない、でも現地の方々の暮らしや文化を肌で感じることのできる、スーツケースで行ける気軽な旅です。私自身、良い意味でミーハーな旅人でいようと思っていますし。初心で、常にワクワクしながら世界を見ていたいんです。もちろん、深く入り込まなければ見えないものもあるでしょうけど、まずは行ってみようよ、ガイドブックにはそんなに詳しく載ってなくても、こんなに素敵なところだよ、というのを伝えたいんです。

    ——最新刊で取り上げる場所として、タイ北部のチェンマイを選んだのは、どんな理由で?

    角田:きっかけは、タイ北部の山岳民族が織った古布を使った財布と出会ったことでした。その財布は、チェンマイの郊外で、身寄りのない孤児たちとHIVに母子感染した子供たちが生活している孤児院「バーンロムサイ」のスタッフの方々が作って販売したものだったんです。その財布があまりにも素敵だったので……きっかけは物欲からです(笑)。使われていた古布も本当に素敵で、こんなに美しいものを作るのは、どんな人たちなんだろうと。私は基本的にハンドクラフトがすごく好きで、それは『REGENBOGEN』のテーマの一つでもあるので、いつかチェンマイに行ってみたいと以前から思っていました。これまでなかなか行く機会がなかったんですが、『REGENBOGEN』を一緒に作っているデザイナーさんや編集者さんと新しい号の打ち合わせをした時に「チェンマイに行きましょう!」と言ってもらって、それに後押しされる形で行くことを決めました。

    ——角田さんのお宅には、同じくカメラマンをお仕事にされているご主人や、お子さんたちもいらっしゃいますよね。一人で旅に出ていいかどうかは、家族会議とかで決めるんですか?

    角田:ありますよ、家族会議。でも最近は、一年くらい前から少しずつ説得の準備をしますね。家族のスケジュール帳に「ここはお母さんはタイ」と入れたり、タイのガイドブックを本棚の見える場所に置いたり。そのガイドブックがやがて机の上に移動して、私がそれを読み込むシーンがあり……みたいにして、刷り込んでいくんです(笑)。でも最近は、どうせ行くんでしょ?という雰囲気になっている気がしますが(笑)。

    ——相当に用意周到ですね(笑)。チェンマイへは、何人で?

    角田:今回はデザイナーさんと編集者さんと3人で旅をしました。チェンマイを拠点にして、4泊5日。お二人ともとても忙しい方ですが、デザイナーさんは特にこの時期のスケジュールがタイトなのにもかかわらず日にちを調整してくださって、ロイクラトンのお祭りを見るために2泊3日で参加してくれました。

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    ——ロイクラトンというのは、毎年11月頃の満月の夜にタイの各地で、川にクラトンという灯籠を流したりする行事ですよね。チェンマイではその時期、メージョー大学の敷地内でコームローイという熱気球を一斉に空に放つ行事が、特に有名だと聞いたことがあります。

    角田:そのコームローイを空に上げる行事への参加は、スケジュールが直前にしかわからない地元の人用と、1年くらい前から予定が出る旅行者用があって、旅行者用はチケット制なんですよ。当日、会場の大学に行ったら、民族衣装を着た学生さんたちが、ブースでいろんな民族や織物の紹介をしていたり、伝統的な料理や飲み物を出してくれたりしていて。手作り感があって、楽しかったです。ゆるキャラまでいたりして(笑)。

     

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    ——会場に来ていたお客さんたちはどんな方々だったんですか?

    角田:日本や中国、台湾とか、アジア各国から来た人が多かったですね。アナウンスも英語、タイ語、日本語、中国語。そのアナウンスも学生さんたちが担当していました。最後にコームローイをいっせいに上げる時、写真を撮りながら、これは動画の方がよかったかも、と思いました。ちょこっとだけiPhoneのカメラで動画を撮ったんですけど……。

    ——おお〜、すごい。ふわ〜っと吸い込まれるような……。

    角田:まあ、ほんのちょっと、恐怖もあるんですけどね。こんな大きいのが急に横から飛んできたりするので(笑)。コームローイに関しては、動画の方が後でみんなで見る時に盛り上がると思います。

    ——こうしたアジアならではの仏教的な儀式に接する機会は、これまでにありましたか?

    角田:あまりなかったですね。私は今まで、北欧などに行くことの方が多かったので。自分のライフワークとしての撮影でアジアの国を訪れたのも初めてです。『REGENBOGEN』でアジアで初めて取り上げる場所としてチェンマイを選んで、よかったなと思います。チェンマイには、私が求めていた素材がいっぱいあったんです。積み重ねてきた歴史、ハンドクラフト、あの土地ならではの色や光、あたたかさとかやさしさとか、すごく凝縮されているように感じました。以前訪れた、メキシコのオアハカという街にちょっと似てるなと思いました。人のやさしさも。タイの人たちの方がちょっとシャイかなと思いますけど。

    ——チェンマイの街自体はどんな風にして回りましたか?

    角田:堀に囲まれた内側にある旧市街のあたりを中心に、歩いて回りましたね。タクシーも時々使って……タクシーかわいいですよね。トゥクトゥク(小型のオート三輪)や、赤いソンテオ(小型トラックの荷台にベンチを設置した乗り合いタクシー)。たまに、全然違う場所に行っちゃいそうになって、「違うよ違うよ」って運転手さんに言ったりもしたけど、それも面白かったです。あと、値切るのとか。「これくらいで行けるでしょ?」「しょうがないなあ」みたいに(笑)。

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    ——チェンマイの食事はどうでした?

    角田:食事は口に合いました。私、辛いのは割と好きなので。チェンマイに行く前は、私たちアジアの旅の初心者だから、おなかを壊さないように気をつけようと3人で言い合ってたんですけど、全然大丈夫でしたね。普通に街の食堂でごはんを食べてました。ガイヤーン(鶏の炙り焼き)も、パッタイ(米麺の焼きそば)も、おいしかったですね。衝撃だったのが、蒸したもち米にココナツミルクをかけたのとマンゴーが一緒になった、カオニャオマムアン。今回案内してくれた現地の知人が「これは食べといたほうがいいよ」と言って出してくれたんですが、私の中で想像以上の味で。

    ——あれはたぶん、カロリーもかなりのものですよね(笑)。

    角田:今回一緒に行ったデザイナーさんは調理師免許取得の勉強もしているので、ちょっと甘さを控えめにした(笑)カオニャオマムアンのレシピを作ってもらって、『REGENBOGEN』に載せています。

    次回のインタビュー後編では、角田さんがチェンマイ郊外にある村や施設を訪れた時のエピソードや、旅の中で感じている魅力、写真を通じて伝えたいと考えていることなどについて、引き続きお話を伺います。

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    角田明子 Akiko Tsunoda
    1976年、東京生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。フリーランスのフォトグラファーとして広告、雑誌や書籍、CDジャケット、写真展開催など、さまざまな分野で活躍している。2012年から刊行している写真集『REGENBOGEN』シリーズでは、より現地の暮らしや文化に触れることができる、スーツケースでも行ける気軽で魅力的な世界への旅を提案している。2016年春に『REGENBOGEN』の最新刊となるタイ・チェンマイ編を刊行予定。
    http://www.akikotsunoda.com/
    http://tsunoakko.blogspot.jp/

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    【写真家・角田明子さんに聞く:後編】

    聞き手:山本高樹 Takaki Yamamoto
    著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。2016年3月下旬に著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』を雷鳥社より刊行予定。
    http://ymtk.jp/ladakh/

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