そして全国各地では、残暑の厳しい日々が続いています。皆様もどうか、お体にはくれぐれもお気をつけてお過ごしくださいね。
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「なつ旅」と「冬旅」

先月7月、僕は恒例の「なつ旅」という北海道ツアーを行いました。このエッセイでも度々ご紹介していますが、サーフィンとライブがセットになった、僕のオリジナルツアーです。
冬場は「雪旅」と銘打って、北海道中をスノーボードとライブで巡ります。つまり一年を通して、「横乗りと音楽」という二本立てで旅をしているわけです。
そんなことをもう10年以上も続けていますとね、最近では東京あたりの友人のサーファーやスノーボーダーたちの中から、僕のツアーを追いかけるように旅をする人まで現れ始めましてね。

かつてグレイトフル・デッドのライブツアーを追いかけたファンたちが「デッドヘッズ」と呼ばれたように、僕の旅も「東田ヘッズ」、あるいは「横ノリヘッズ」とでも呼びたくなるような、局地的に熱いツアーへと育ちつつありますので、以後お見知りおきを、はい。
ところで前回の「雪旅」にて、サーフボードの制作に携わらせてもらったお話を、このエッセイでお届けしたかと思います。

その時のサーフボードがね、シェイパーの美馬さんの手によって見事に仕上がっていました。そして今回の旅で、ついにそのボードが海へとデビューしましたので、ここに網走在住のカメラマン・Abechanの写真とともに、ご報告したいと思います。
Abechanインスタグラム
意気揚々とセルフプロデュースのサーフボードで海へ……
僕にとって、サーフボードのプロデュースに関わらせてもらうのは初めてでした。シェイプルームに入らせてもらい、フォームを選ぶところから立ち会ったのです。アウトラインなど、自分の好みや希望を伝えながら、シェイパーの美馬さんと時間を共有し、一本のボードを形作っていく。自分にもできる簡単な作業は、少しだけ手伝わせてもらいました。その模様は、このエッセイにも残しています。
https://www.bepal.net/archives/661273

方向性としては、ロングボードにもショートボードにも属さない、ミッドレングスのサーフボード。僕が最も好きなサイズです。
テイクオフが早く、それでいて扱いやすいボードになるよう意識しました。生まれる瞬間から見届けてきたボードですからね。この板で海に入る日を、旅が始まる前からずっと楽しみにしていたのです。
今回の旅の出発地・網走にて、すべての工程を終えて完成したそのサーフボードと、ようやく初対面しました。
いや〜、自画自賛のようで恐縮ですが、なんとも美しいフォルムではありませんか。北海道屈指のシェイパー、美馬さんの手による一本ですからね。その仕上がりは本当に見事です。どことなく醸し出されるオーラのようなものまで、じんわりと伝わってきます。

色はあえて入れずにね、基本中の基本とでも言いましょうか、シンプルな白でお願いしました。時の経過とともに、このオフホワイトは少しずつ表情を変えていくことでしょう。だんだんと黄ばみを帯びていく、あの経年変化が僕はたまらなく好きなのです。
シェイパーの美馬さんとAbechan、そして僕の三人で、あらゆる角度からボードを眺めます。乗る前からね、あれやこれやと三者三様に想像を膨らませながら語り合いました。
サーファーにとって、板を眺めながらうんちくを語る時間というのは、ある意味たまりません。ミュージシャンが、それぞれのギターを伝家の宝刀のように語る姿と、どこか似ている気がします。
翌朝、楽器と一緒にニューボードを積み込み、いよいよ旅が始まりました。
東川、小樽と二本のライブを終えた僕とカメラマンのAbechanは、南へと舵を切り、一路函館へ。
Abechanのリサーチによると、函館のライブ会場へ向かう途中、噴火湾のとあるポイントでちょうど波と出会えそうです。然るにこの日が、ニューボードの進水式となったのです、うん。
そのポイントには、すでに数名のサーファーが待機していました。レギュラーの波がきれいにブレイクしていますが、少しだけ風が海面を揺らしています。二日間続いた雨は上がり、空は快晴。洋上には、その時ちょうど一人のサーファーだけが浮かんでいました。
僕は車から真新しいサーフボードを引っ張り出し、ウェットスーツに着替えます。これ以上ないってくらいご機嫌な気分で、海へボードを滑らせ、そのまま身を預けてゲッティングアウトです。

しかしね、結果的にファーストセッションは、なかなか手強いものとなりました。もちろん何本かの波には乗れました。でも、自分でも納得できるライディングは一本だけだったのです。最初にパドリングした時の印象は、「こいつ、なかなかのじゃじゃ馬だな」と。
僕自身、久しぶりのサーフィンだったこともあるし、風もやや強めに吹いていました。その影響もあったのでしょうか。何となくこう、ビシッと安定しない印象が残りました。
ただね、手応えはあったのです。ひとたびテイクオフが決まると、そのスピード感やターンの気持ち良さには、かなりのポテンシャルを感じました。
直感的に、「これは面白い。」と思いましたね。
いきなりバシッとうまくいくよりも、このサーフボードとはじっくり付き合ってみたい。そう思ったのです。
この「なつ旅」を通して、お互いの理解を深め、少しずつ信頼関係を育んでいけたらいいなとね。
プロからの助言、たった5センチで激変
函館のライブも無事に終え、翌日もやはり波は残っていました。
ライブへ来てくださった人情味あふれる函館のローカルサーファーのコウキさんたちに、朝早くから手厚くサポートしていただきながら、数か所のポイントをチェック。その末に、とあるビーチへと着地しました。そこには、なかなか迫力のある波がブレイクしているではありませんか。はやる気持ちを抑えながら、それぞれ準備に取り掛かります。

するとそこへ、Abechanのかねてからの友人で、昨晩のライブにも足を運んでくださったプロサーファー・越後将平さんが合流してくれたのです。
越後プロは仙台を拠点に活動されていて、「DUSK」というウェットスーツブランドのオーナーでもあります。後進の育成にも大変力を注がれていて、初心者から上級者まで、レベルを問わずどなたでも彼のサーフレッスンを受けられるそうです。
これは絶好の機会だと思い、僕はここぞとばかりに、自分のボードを見てもらいました。
「ほう、なかなか良さそうですね。」
越後プロは、ボードをじっくり眺めながら言いました。
東田「ありがとうございます。」
越後プロ「どんなフィンを使ってますか?」
東田「これなんですけど……。」
越後プロ「あ、いいサイズですね。フィンの位置って、もう決まってます?」
東田「いえ、それがまだ……よく分かってなくて。」
越後プロ「じゃあ、基本的なフィンの位置の決め方をお教えしますね。」

なんとね、思いがけずプロの教育的指導を受けることになったのですよ。
サーフボードにとって、フィンは欠かせない存在です。
簡単に言えば、「タイヤ」と「舵」の役目を果たしています。走りにもターンにも極めて重要なパーツですし、時にはブレーキにもなれば、エンジンにもなる。
フィンの形や大きさ、そして位置を変えるだけで、まるで別のサーフボードになったかのような乗り味になることさえあるのです。
今回、僕のボードはシングルフィン。一般的には、安定感があり、クラシックな大きなラインを描くサーフィンに向いていると言われています。
ところが前日のサーフィンでは、その安定感をどうしても引き出せませんでした。
そんなタイミングで、越後プロから、まさに有料級とも言えるフィンセッティングのレクチャーを受けることになったのです、はい。
そして、越後プロが勧めてくれたフィンの位置は、前日の進水式で僕がセットしていた位置より、およそ5センチ後ろだったのです。
フィンセッティングの基本。いやぁ、まったく理解していませんでしたね、そのセオリーたるものを。
越後プロから教えていただいた内容を、ここで詳しくお話しするのはあえて控えておきますが、一つだけお伝えすると、「見た目」もとても大切なのだそうです。セオリーに沿ってフィンの位置を決めたら、一度少し離れて、ボード全体のバランスを眺めてみる。これも大事なのだとか。

僕の場合、何につけても「かっこよさ」を優先してしまいそうですが。とにかく、フィンの位置が決まりました。皆さん、この5センチ、甘く見てはいけません。もうね、ほとんど神の領域ですわ。

というのも、早速、越後プロ推奨のフィンセッティングで海に入ってみたのですが、これがもう全然違うのです。
まず、パドルしている時の安定感が違う。故に、推進力まで増したように感じます。そうなのです。たった5センチ、されど5センチ。
そのわずかな違いだけで、僕とこのボードとのパフォーマンスは、グッと向上したのです。なんてデリケートな世界なのでしょう。

新たな気づきと、新たな始まり
前日のサーフィンから、ずっとファインダー越しに僕を見ていてくれたAbechanが、海から上がった僕に開口一番、
「昨日と全然違いますね。めちゃくちゃ走ってました!」と。第三者の目から見ても、その変化は明らかだったようです。
こうして改めて、フィンセッティングの大切さを痛感しました。
こんなにもインポータントなことを、なぜ僕はこんなにもロングタイムに渡ってリーヴアローンしてきたのでしょう。すみません。興奮のあまり、ついルー大柴的な表現になってしまいました。
そして我が身を顧みますと、反省すべきことの何と多いことか。あまり深く考えず、ざっくりと物事をスタートさせてしまう性格。
例えば何かを買っても、説明書などろくに読まずに捨ててしまい、あとになって「あぁ、読んでおけばよかった」と後悔することが、本当に多いのです。
今回、フィンをずいぶん蔑ろにしてきたという事実が判明したことで、自分の中にある「丁寧さの欠如」に、改めて気づかされました。
サーフボードは、美馬さんが一本一本、細部まで神経を研ぎ澄ませながら削り上げてくださったものです。
その一本を預かる僕が、「まぁ、このくらいでいいか」とフィンを適当に付けていたのでは、ボードに対しても失礼というものです。
道具には、それぞれ理由がある。形にも、位置にも、積み重ねられてきた経験と理論がある。
そんな当たり前のことを、この5センチが僕に教えてくれたような気がしました。
とはいえね、気づいたのなら、あとは気をつければいい。そう切り替えて、僕らは次なる目的地、十勝方面へ向けて旅を折り返しました。
襟裳岬の東、十勝地方のあるポイントにも、低気圧が運んできた波が押し寄せていました。今回の「なつ旅」は、サーフィン的には大当たりです。

そのポイントには、多くのサーファーに混じって、僕らが来ていることを知ってか知らずか、北海道各地から名だたるスノーボーダーたちも集まっていました。
彼らは日本中にその名を轟かせるような、生粋の「横ノリスト」。雪ばかりでなく、波も追い求めて旅をしています。
そんな仲間たちと、こうして海で再会できるのも、このツアーならではの醍醐味です。素晴らしい波を、僕らは終始穏やかな雰囲気の中でシェアしました。
僕について言えば、ニューボードのフィンもようやく適正な位置に収まりましたので、海にいる時の安心感は、初日とは比べものになりません。僕とこのサーフボードとの絆も、少しずつ形になってきたようです。
たかがフィン、されどフィン。
サーフボードは、自分の好みに合う一本を選べばそれで終わり、というものではありません。フィンもまた、適切なセッティングがなされているかどうかで、そのパフォーマンスは大きく変わります。
パフォーマンスが向上すれば、危険を回避する能力も高まることでしょう。ひいては、自分だけではなく、誰かの命を守ることにつながるかもしれません。そう考えると、フィン一枚といえど、決して侮れない存在です。
僕はこれまで、「感覚」だけで何とかしてきたことが、案外たくさんありました。もちろん、それは悪ことではありませんし、直感に助けられたことも、一度や二度ではありませんから。
でも、その直感を支えてくれるのは、やはり経験だったり、理論だったり、先人たちが積み重ねてきた知恵だったりするのでしょう。
今回、たった5センチのフィンの位置が教えてくれたことは、そんな当たり前の事実でした。
音楽もきっと同じです。ギターに弦を張ることも、一つの歌を作ることも、ライブで演奏することも。
「このくらいでいいか」を積み重ねるより、「もう少し丁寧に」を積み重ねた方が、きっといい音になる。
そして、人生もまた、きっとそうなのでしょうね。このサーフボードとは、まだ付き合いが始まったばかりです。これからいろんな波に乗り、いろんな海を旅して、お互いをもっと知っていくことでしょう。
その過程も含めて、この一本を育てていくのが楽しみでなりません。
まずは、フィン一枚にも真摯に向き合うこと。案外、人生ってそんなところから変わっていくのかもしれませんね。
丁寧さを忘れずに、これからも波に乗り、歌を歌い、旅を続けていきたいと思います。


今回のエッセイでご登場いただいたプロサーファー・越後将平さん。サーフレッスンに関するお問い合わせは、インスタグラムのDMで受け付けていらっしゃいます。
ご興味のある方はこちらからどうぞ。 越後将平インスタグラム
今回のアウトドアおすすめの一曲
ジュリアン・ラージ「Something more」
ジュリアンのギターは、素晴らしいサーファーが残すライディングラインのようです。
東田トモヒロNEWS
現在、東田トモヒロが代表を務める一般社団法人Change The Worldでは、令和8年熊本地震の被災地への支援活動を計画しています。
募金の窓口は設けておりませんが、Change The Worldのオリジナルグッズをご購入いただくことで、その収益が活動の継続と支援の力になります。



ご購入をご希望の方は、こちらよりお願いいたします。
【2026.11.07~ camp in (sat-sun) TOMO CAMP CLUB @sotosotodays 山中湖みさき】
東田トモヒロPresents、特別な音楽とキャンプの時間。目の前に富士山と山中湖を望む最高のロケーションで、心地よい音に包まれながら、素晴らしい2日間を過ごしましょう!

■ 開催日:2026年11月7日(土)〜11月8日(日)
■ 会場:sotosotodays CAMPGROUNDS 山中湖みさき
(山梨県南都留郡山中湖村平野2431-2)
■ 出演:東田トモヒロ、時川大輔&more…?
■ Opening Act:Ryo-uta
■ チケットのご案内
東田トモヒロのオフィシャルWeb Shopにて販売いたします。
料金・種類について
※当日にキャンプ宿泊(キャンプイン)をされる方は、人数分の【ライブチケット】と【キャンプインチケット】の両方が必要となります。別々のお買い求めとなりますので、買い漏れのないようカートへ一緒にお入れください。
① ライブチケット(必須 ※中学生以下無料)
・Tomo Surf Club メンバー:3,000円(税込)(メンバー専用クーポンを配布)
・一般:4,000円(税込)
② キャンプインチケット(宿泊される方:お一人様につき ※中学生以下無料)
・4,000円(税込)
③ ファミリーキャンプインチケット(大人2名分のライブ料+キャンプイン料込※クーポン対象外)
・12,000円(税込)
※大人2名、または「大人2名+中学生以下のお子様連れ」のご家族でお得にご利用いただけるパッケージチケットです。
④ 高校生割チケット(ライブ料+キャンプイン料込)
・1,000円(税込)
※16歳〜18歳はお得に入場券を購入できます。
※中学生以下の方は保護者同伴に限り入場無料となります。




