「サーフボードシェイパー」がボードを作り上げる貴重な現場に立ち会った | 海・川・カヌー 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

海・川・カヌー

2026.04.11

「サーフボードシェイパー」がボードを作り上げる貴重な現場に立ち会った

「サーフボードシェイパー」がボードを作り上げる貴重な現場に立ち会った
どうもどうも、みなさんいかがお過ごしでしょうか。随分とご無沙汰しておりました、シンガーソングライター、旅人、サーファー、そしてスノーボーダーの東田トモヒロです。

ちなみに、植物愛好家でありながら猛烈な花粉症に悩まされている僕ですが、改めましてどうかよろしくお願いいたします。

長旅に出ておりましたため、こちらへの寄稿もままならず、しばらく間が空いてしまいましたが、ようやく一息つきましたのでね、ある非常に貴重な体験のご報告をしたいと思います。
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いまやシェイパーは貴重な存在

なんと、念願でありましたサーフボードシェイプに立ち合わせていただいたのです。しかも、ただ立ち会うばかりではなく、その作業にほんの少し携わらせてもらいました、はい。自分のイメージ、あるいは好みをシェイパーさんに伝えつつ、一緒に作り上げていく——そんな貴重な体験をしたのです、うん。

ところで、皆さんはサーフボードがどのように作られているか、ご存知でしょうか。

現在では、シェイパーが最初から最後まで手で削り上げる完全なハンドメイドは、全体の2割前後にとどまると言われています。一方で、8割ほどを機械で成形し、最終調整に人の手を加える「セミクラフト」がそのうちの5〜7割。さらに、全工程がオートメーション化された量産モデルも、およそ2割を占めています。

つまり、一本のボードを最初から最後まで自らの手で仕上げる技術を持つシェイパーは、いまや貴重な存在なのです。

作業する美馬さん。普段の穏やかな雰囲気とは一変して、豪快な手綱捌きです。奥で見ているのが東田さん。

舞台は、愛すべき北の大地・北海道。東部の町、清里町にひっそりと佇む、とあるコンテナハウスです。そのシェイプルームのオーナーは、美馬真人(ミマ マコト)さん、44歳。「HICA」というオリジナルブランドを立ち上げて、やがて10年になる、北海道屈指のオルタナティブボードのビルダーです。

オルタナティブサーフボードとは、これはあくまで僕の主観ですが、競技サーフィンなどで用いられるボードとはまた指向性の異なるもの。つまり、得点を獲得するために研ぎ澄まされたハイパフォーマンス向けの作りではなく、実験的で個性的な設計のサーフボードの総称、といったところでしょうか。1990年代以降、競技志向のショートボードが主流になる中で、「もっと自由に、もっと楽しく乗りたい」という反動から生まれたカテゴリーとも言われています。まさに「オルタナティブ=既存への対案」という言葉どおりの存在です。デザイン性も重視されるため、カラフルなものが多いのも特徴のひとつです。

僕が所有するサーフボードは、そのほとんどがこのオルタナティブボードに分類されるものです。なんせ何につけても見た目から入りがちな男ですから、はい。とはいえ、デザインにばかり比重を置くわけにもいきません。乗り手にストレスを与えないよう、機能性も極限まで追求しなければならない。とても奥の深い世界であることも、間違いありません。

そのような世界で、多くのサーファーに支持され続けているブランドのひとつが、美馬さんの「HICA」サーフボードなのです。

今回はありがたいことに、僕もシェイプルームに入らせていただき、今年の夏の北海道ツアー「なつ旅」用の板を、セッションしながら作り上げようという贅沢な試みを実行することとなりました。

東田チョイスはミッドレングス

サーフボードのフォームはポリウレタンでできているので、削り出すと細かいフォームダストがルームに充満します。僕はゴーグルとマスク、そして全身を覆う不織布製のスーツをお借りして入室しました。もう外見は誰だか分かりませんが。

シェイプルーム入室前に、身だしなみを整える東田さん。

それはさておき、いよいよシェイプの始まりです。

美馬さんが用意してくださったフォーム2種類のうち、ピンときた1つを選んだところで、まずは長さを決めます。

僕にとってサーフィンは、いつもライブツアーとセットです。毎日サーフィンができる環境で暮らしているわけではないので、少し間が空いてしまい、サーフ筋(サーフィン時に必要とされる筋肉、パドル筋とも呼ばれる)がやや鈍っている時でも、安心して身を預けられるような、そんなボードを好みます。

それにはある程度のボリュームが必要ですので、ショートボードは不向きです。ロングボードは基本的には好きだけど、持ち運びに苦労する場合もある。そこで、よく僕の選択肢として登場するのが、ミッドレングスのサーフボードです、はい。所有するサーフボード10本のうち、実に7本がこのミッドレングス。今回の「HICA × 東田トモヒロ」サーフボードで、8本目が出来上がることになります。長さは7フィート2インチ、およそ218cmにしました。

2枚のフォームから、1枚を選びます。ここはあえて直感で。
2枚のフォームから、1枚を選びます。ここはあえて直感で。

長さが決まると、美馬さんはすぐさま、ブワーッとフォームを一皮、プレーナーと呼ばれる電動カンナで削り始めました。呆気に取られるほどの豪快さです。それは、大学入学したばかりの頃、サークルの4年生の先輩の豪快な焼酎の飲みっぷりと老けっぷりを目の当たりにした時のような衝撃でした。ノーズ部分とテールの上下2箇所は、細身のノコギリで切り落としますが、これはケーキ入刀的パフォーマンスとして、僕がやらせてもらいました。

長さが決まり、ノコギリを入れてカットを試みる東田さん。

サーフボードの肝、コンケーブって?

それからアウトラインを決めます。ボードの最大幅、全体的な厚み、ノーズ部分のボリューム感、そしてテールの形状など、自分の好みを伝えつつ、おおまかにディレクションさせてもらいました。

そしていよいよ、カーブを削り出していきます。ノーズからテールにかけてどのようなカーブを描いていくのか。美馬さんによれば、ここが最も神経を集中させるところだそうです。僕には到底手出しできるゾーンではありませんので、固唾を飲んで見守るだけです、うん。ここはシェイパーが見せてくれる、痺れるほどにかっこいいパフォーマンスの瞬間ではないでしょうか。

繊細さを要求される作業は、さらに続きます。

サーフボードにおける最重要部のひとつ、コンケーブを削り出していきます。

コンケーブはサーフボードの要。繊細さと美しさが要求される場面。

コンケーブ(Concave)とは、サーフボードのボトム面(水と接する面)に彫られた凹みの形状のこと。これが水の流れをコントロールすることで、スピード、リフト感、ドライブ感に影響を与えます。凹みに水が入り込むことで水流が加速し、ボードを押し上げる力(リフト)が生まれるのです。まさにサーフボードの肝となる部分です。

今回採用したのは、中央部分にズバーンと太く刻むシングルコンケーブ。外側のレイルにかけて、ふっくらとした段差が生まれます。僕はこのスタイルを「田んぼコンケーブ」と呼ぶことにしました。コンケーブとレイルの段差が、ちょうど田んぼと畦の関係に似ているからです。完全な余談ですがね。

美馬さんによると、

「ボトム構造は、ハルボトムをベースにレイル付近はトライプレーン。ハルボトムにコンケーブを施し、ドライブ性、操作性を加えた、いわゆるトライプレーンハルボトムです」

とのこと。専門的すぎてね、自分にはそれらのワードを噛み砕いて皆さんにお伝えすることは叶いませんが、とにかく「かっこいい」のと「調子良さそう」なことだけは、僕にも分かります。

コンケーブを整える工程で、シェイピングスクリーンという、ヤスリのような役割を果たすスポンジ状の道具を使った作業を、少しばかり手伝わせてもらいました。

このサーフボードだけの唯一無二のカーブが描き出されました。

「あれ、作れるかも」美馬さんの出発点

さらにシェイプは進みます。決定されたカーブに合わせてレイルが削り出され、テールやノーズ、細部にわたる調整が加えられていきます。みるみるうちに、真っ白なボードから、なんと表現したらいいのでしょうか、オーラのようなものが放たれ始めました。くすんだ空から、少しずつ光が差し込んでくるような、そんな感覚です。

美馬さんの、類まれなる集中力と、経験によって磨き抜かれた技が矢継ぎ早に繰り出され、あの美しいサーフボードが、シェイプルームに現れ始めたのです。

一見すると粗野でぼんやりとした1枚のフォームから、光り輝くオルタナティブボードが生み出される——そんな魔法のような時間に居合わせることができました。なんと幸せな体験でしょう。一本のギターや一台のピアノからメロディと歌詞が生まれるような、そんな感覚にも似ているのかもしれません。

美馬さんがサーフボードを作るようになったきっかけも、聞けばとても興味深いものでした。ある時、ご自身のサーフボードがクラッシュしてしまい、その断面が露わになったのを見た瞬間、こう思ったそうです。

美馬さんの様々な工程における磨かれた技は、目を見張るものがあります。

「これ、自分で直せるな。あれ、いや、作れるかも」

いやいや、本当に選ばれし人ですね。

僕だったら同じことが起きた時、こうですよ。

「やべ、やっちまった〜。どこに出したらいいかな、リペア!」

そんなものです、実際。

そんな美馬さんのこれからの夢は、「誰が乗っても楽しめるサーフボードを作る」ことだそうです。なんて愛のある言葉でしょう。

僕も、誰が聴いても気持ちのいい音楽を作り続けたい。そう思います。

なれない手つきながら、自分のボード作りに携われる喜びを味わう東田さん。

とにかく、素晴らしきクリエイター美馬さんのもとで、自分の思いを込めさせてもらった唯一無二のオリジナルボードが出来上がりました。この後、クロスや樹脂を巻き、サンディングというさらなる専門的な仕上げの工程へと進んでいくのですが、ひとまずサーフボードの核心部分は完成です。

この夏の北海道ツアー「なつ旅」が、今から楽しみで仕方ありません。

もうひとつ、嬉しかったことがあります。今回の板は僕独自の好みを反映させてもらったものですが、美馬さん曰く「シリーズ化してもいいかも」とのこと。うーん、自分のセンスも、結構いい線いっているのかもしれません。なんてね。

シェイプルームの前で、生まれたばかりのオリジナルボードを手に記念撮影。

美馬さんのブランド「HICA」
https://www.instagram.com/hicasurf?igsh=N2VndHFta2xzd3Br

Abechanのインスタグラム
このエッセイは、今回のボードシェイププロジェクトをプロデュースしてくれた、網走在住のカメラマンAbechanの写真でお届けしました。
https://www.instagram.com/the_day_photography?igsh=MWFkbnRsMno3NnhnOA=

東田トモヒロNEWS

【2026.4.17.18.19 CIRCUS @ CINEMA HEAVEN】 
https://www.cinema-heaven.com/circus2026 ※東田トモヒロ出演は17日



東田 トモヒロさん

シンガーソングライター

1972年生まれ熊本市在住。ニューヨークでのレコーディングを経て2003年にメジャーデビュー。旅とサーフィン、スノーボーディングをこよなく愛し、そのオーガニックなサウンドを通して「LOVE&FREEDOM」を発信し続けるシンガーソングライター。

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