何もなさそうな住宅街で歩く楽しさを実感する都電荒川線めぐり【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY FILE.46】 | アウトドア・外遊び 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

アウトドア・外遊び

2026.08.24

何もなさそうな住宅街で歩く楽しさを実感する都電荒川線めぐり【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.46】

何もなさそうな住宅街で歩く楽しさを実感する都電荒川線めぐり【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.46】
プロハイカーの斉藤正史さんが、独自の視点で東京23区内の緑道を「GREEN WAY」として捉え直し、実際に歩いた足跡を紹介します。身近なGREEN WAYでも四季折々の見どころがあり、街の意外な歴史にふれることができる、かもしれません。

今回は、都電荒川線の町屋駅前〜荒川車庫前停留場間を散策する「さくらトラム荒川GREEN WAY」です。
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46th ルート:さくらトラム荒川GREEN WAY

●前回はこちら

路面電車の線路脇を歩く都電荒川線トレイル、開始【プロハイカー斉藤正史の東京GREEN WAY  FILE.45】 | アウトドア・外遊び 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

前回、三ノ輪橋停留場から歩き始めた都電荒川線沿線トレイル。今回は、前回歩き終えた町屋駅前停留場からスタートします。題して「さくらトラム荒川GREEN WAY」です。さくらトラムは都電荒川線の愛称です、念のため。

町屋駅前停留場から線路沿いを西に向かって進みます。線路沿いに花壇が置かれ、並木もあり、思いのほか緑豊かな道のりです。朝早い時間に歩いたこともあり、多くの通勤・通学の人が行き交っていました。

ただし、このあたりは住宅街で特筆すべきことがほぼない、ということを事前に把握していました。そこで、歩く前に地図をチェックしていて見つけた神社へ向かいます。が、特に珍しい縁起や歴史はなさそうな神社でした。

都電荒川線の線路沿いに戻ろうと歩いていると、住宅街に「酒処 喜多郎」という看板を発見。もしや、すごい穴場の居酒屋かもと調べると、すでに7年前に「吉田類の酒場放浪記」で紹介されていました。

住宅街の中にさり気なく看板を掲げた「酒処 喜多郎」。

こんな住宅街の居酒屋も抑えているのかと感心しつつ番組のサイトをチェックしたら、番組開始は2003年で、放送回数は1,300回を越えていました。この「東京GREEN WAY」は連載開始から1年超で、連載回数はまだ50回弱。住宅街で書くことがないとボヤくなんておこがましいと思い知りました。

自分にムチを入れ直し、再び都電荒川線沿線を進んでいきます。でも、ないものはないんです。気づけば町屋二丁目、東尾久三丁目と2つの停留場を過ぎ、熊野前停留場まで歩いていました。

熊野前停留場の北側に、参道らしき道がありました。その道の先には寺か神社がありそうな雰囲気です。停留場の名前からして、熊野神社でもあるのでしょうか。と思ったのですが、参道らしき道は立入禁止でした。

何だか、街そのものから拒まれているかのような気持ちにとらわれかけます。が、ボヤくな、グチるなと自分に喝を入れたばかりであることを思い出し、あらためて熊野前停留場の南側に足を向けます。

すると、マンションの駐車場の奥に小さな鳥居を見つけました。周辺には植木鉢なども置かれていて、参拝していいのか判然としません。そこで検索してみると、ここは尾久浅間神社のようです。以前「TOKYO山頂ガイド」という連載をしていた僕はピンときました。浅間神社とは、富士山を信仰対象にしている神社です。

駐車場の奥にあった尾久浅間神社の鳥居。

尾久浅間神社も、鳥居の奥に富士山を模した富士塚らしきものがあり、その山頂付近には小さな赤い鳥居もありました。「TOKYO山頂ガイド」で都内の富士塚をもれなく巡ったつもりでしたが、ここは未踏峰でした。

尾久浅間神社の詳しい縁起などは不明です。ただ、都内の富士塚は時代とともに造成されるなどして姿を消すものも少なくありません。その点、尾久浅間神社は今なお健在ですし、山頂の鳥居には多くのお供え物もあるので、近隣の方々から大切にされていることが伺えます。

立入禁止などの看板も見当たらなかったので、そっと富士塚を登ります。山頂の赤い鳥居に手を合わせ、尾久浅間神社を後にしました。

尾久浅間神社の山頂にある小さな鳥居。

標高数m、登頂に要した時間約1分とはいえ、登山は登山です。何かを成し遂げたような気分になりかけました。が、ここまで都電荒川線沿いを1.5kmほど歩いてきて、尾久浅間神社以外に「これ!」というものを目にしていません。気持ちは焦りますが、どうしたってないものはないんです。

また都電荒川線の線路沿いに戻りますが、右を見ても左を見ても目を引くものが見当たりません。と思ったら、神社がありましたが、ここも縁起などに特筆すべきことはなさそうです。

がっかりしつつも視線だけはキョロキョロさせていると、神社の奥に趣ある山門が見えました。大林院(だいりんいん)というお寺です。

大林院

もともとこの地には願勝寺(がんしょうじ)がありましたが、明治時代に神仏分離で廃寺となります。その後、曹洞宗の尼僧寺である大林院が堂守(どうもり)を継承し、現在に至るそうです。

雰囲気がある大林院。

失礼ながら、お寺として特に珍しい歴史でもないし、どなたか著名人とゆかりがあるわけでもなさそうです。ただ、良い雰囲気の山門だなと思って近寄ったら、その山門の中にステンドグラスの風神雷神が飾られていたので、「お!」と思って書き留めた次第です。

ステンドグラスの風神雷神。

…いよいよ書くことがなくて困っています。いや、僕自身はとても楽しんで歩いています。都電荒川線沿線を歩きながら、時おりというか結構な頻度でやってくる路面電車に心が浮き立ったりしています。別に鉄道マニアではないのですが。

でも、「荒川線の線路沿いを歩きました。楽しかったです」では許されません。小学生だって、もう少し起伏に富んだ作文を書くでしょうし。だからといって、どうしたってないものはないんですよ…と思いつつ、ひたすら歩を進めていたら、荒川遊園地前停留場に着いていました。

あらかわ遊園

東京都内唯一の公営遊園地という、荒川区立あらかわ遊園。1922年(大正11年)開園で、現存するものでは日本で3番目に古い遊園地です(最古は1853年開園の浅草花やしき)。

アトラクションは、観覧車やメリーゴーランドなど、小さなお子さんでも楽しめるものが中心のようです。ただし、園内マップには釣り堀なども載っているので、大人でも楽しめそうです。

ここまで書くことがないとボヤき続けてきましたが、あらかわ遊園という都電荒川線沿線で有数の人気スポットを前に胸が高鳴ります。そう意気込んだものの、この日は休園日でした。「やっぱりか」と妙に納得する自分がいました。今までも取材の日は行く先々で休園や閉店、臨時休業などの文字を目にしてきたからです。

あらかわ遊園(休園日)。不穏な空模様なのは、たまたまです。

気持ちを切り替えて次に進もうとしたところ、遊園地の入園ゲートのそばに「煉瓦工場と荒川遊園」いう案内板を見つけました。

煉瓦工場と荒川遊園

かつてこの辺りでは、煉瓦(れんが)に適した土が採取できました。近くには荒川(現・隅田川)が流れていて船運も良かったことから、明治時代には煉瓦製造業が発展。しかし、時代とともに煉瓦製造業が斜陽になり、工場も次々と閉鎖されます。そうした煉瓦工場の跡地に誕生したのが、あらかわ遊園だったそうです。

煉瓦工場に関する案内板。

そんな歴史があったんですね。というか、ここまで都電荒川線沿線を進んできましたが、今回歩いたコースのすぐ北側を隅田川が流れています。書くことがないと嘆いていないで、隅田川沿いを歩いた方が良かったのかも…。

いや、それだと都電荒川線沿線トレイルではなく隅田川トレイルになってしまいます。ともかく、あらかわ遊園と荒川遊園地前停留場を結ぶ道沿いは植栽が整備されていて、なかなか心地よく歩けました。

グチってるヒマがあったら少しでも良いものを見つけ、気持ちを上向きにすること。そう自分に言い聞かせ、歩を進めていると、荒川遊園地前の次の停留場である荒川車庫前にたどり着きました。この停留場の目の前には、都電おもいで広場があります。

都電おもいで広場

1954年製の5500形(通称PCCカー)と1962年製の7500形(通学輸送に活躍した通称「学園号」)という都電の旧型車両2両を展示している施設。展示車両の中には、模擬運転台や都電荒川線沿線のジオラマなどもあるそうです。

都電おもいで広場(オープン前)。

 「あるそうです」と書いたのは、オープンよりも早い時間に着いてしまって中に入れなかったからです。開場時間の10時まで待つか、あるいはあきらめるか…と迷っていたら、都電おもいで広場の奥にある車庫から、車両が出庫してきました。その貴重な出庫シーンの写真が撮れたので、ここでフィニッシュとします。

都電荒川線の出庫シーン。車両の詳しい形式などは不明ですが、エヴァンゲリオンっぽいカラーリングです。

今回は、書くことがないとボヤいてばかりで失礼いたしました。でも、グチりながらも発見がいくつかあったし、何より楽しく歩けました。しかも、最終的に都電荒川線(の出庫シーン)に救われる形になったので、結果オーライな気がします。

前回と今回で都電荒川線の13の停留場を踏破しました。都電荒川線は30の停留場があるので、およそ半分まで歩いたことになります。個人的には、「まだ半分」というよりも、「もう半分」も歩いてしまった、という感覚です。残りのルートでどんなものを目にできるのか分かりませんが、書くことがないとグチらず、なるべく楽しく歩き続けたいと思います。

■今回歩いたルートのデータ
|距離約3.7km
|累積標高差約1m

今回のコースを歩いた様子は動画でもご覧いただけます。

●東京トラム三ノ輪GREEN WAY

著者画像

斉藤正史さん

プロハイカー

2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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