菌が育ちやすい森をつくり、トリュフを多く得ることに成功!

クロアチア・イストラ半島のパラディニ(Paladini)村で、トリュフ探索犬を使ったトリュフ・ハンティングの実演を見学した。日本の松茸山や舞茸の生える根株と同様に、トリュフの在処は親にも教えない秘中の秘である。今回は、ハシバミの植林での黒トリュフの探索を見せていただいた。
アカマツに共生するマツタケと同様、外生菌の人工栽培は困難である。現在、栽培されているキノコは菌根菌ではなく、木材腐朽菌、つまり木材を分解することで物質とエネルギーを得る菌類である。木材腐朽菌は、おが屑などの培地を使って栽培可能だ。しかし生きた樹木と共生する菌根菌の培地による栽培は、たぶんどこでも成功していない。
ただ、共生する樹木を植えたり、菌根菌がつきやすいように環境を整えたりすることは可能である。カルリック・トリュフ園(Karlić Tartufi)では、クロアチアで初めてハシバミを植林して、人手を加えることで黒トリュフを多く得ることに成功している。
6歳の「子豚ちゃん」は、すぐに黒トリュフを探し当てた!


今回、探索を見せてくれたイヌは、ラブラドールとポインターのミックスであるギツァ(Gica)号だ。クロアチア語で「子豚ちゃん」を意味するという。2020年生まれの6歳。すぐ近くのハシバミ植林へ行った。まず、ハーネスを解かれて、トリュフ・ハンターのフィリップさんからトリュフを探せという命令を受けて、林のなかを探す。わりとすぐに黒トリュフを見つけて、フィリップさんに知らせる。フィリップさんは指先で小さな黒トリュフを掘り出す。深い場所に埋まっているトリュフを掘り出すのは、専用の小さな鍬を使う。

不思議なことに、掘り上げた黒トリュフは、独特の香りはまったくせず、ただの土塊の味だ。トリュフは土の中で育つ段階では無臭であり、収穫されてから少し時間が経ち、外気に触れて熟成が進む過程で、あの独特の芳醇な香りを放つのだ。以前、コンゴ民主共和国で大型類人猿ボノボが一所懸命、掘っていたトリュフが、無臭で土の味しかしなかったのを思い出す。たかだか20分ほどの間に3個ほど黒トリュフを見つけ出し、見学は終了。いよいよトリュフ料理の試食になる。
繊細で保存が効かない。黒と白をつかったイヴァーナさんの前菜

料理をつくってくださるのは、ラドミラ・カルリック(Radmila Karlić)さんの娘さんのイヴァーナ(Ivana)さんである。まず白トリュフパテ載せのカナッペ、黒トリュフスライス載せのカナッペの前菜だ。それにトリュフ入りチーズにトリュフ入りサラミ、トリュフ入りオリーブオイル、トリュフ入りバルサミコ、トリュフ塩にトリュフ蜂蜜がついてきた。トリュフは、生のままでは保存が効かない。そのため、風味を移して香りを長持ちさせるようにオイルやバルサミコをはじめ、さまざまな加工品が開発されてきた。


他のキノコと同様、トリュフを洗うことは絶対に避けるべきだ。多孔質なので、水分を吸収して腐敗の原因となる。柔らかいブラシで土や枯れ葉などの汚れを落とす。トリュフを保存するにはキッチンペーパーで包み、ガラス製の容器やジプロックで密閉する。湿気が大敵であるため、毎日キッチンペーパーは交換すること。それでも冷蔵庫で最長1週間が目安だ。
白トリュフはさらに繊細なので、できるだけ早く食べた方がいい。食べるときには1時間程度、常温に置く。白トリュフに熱を加えることも禁忌である。薄くスライスしたものを暖かい料理に載せることで、香りを立たせる。黒トリュフは加熱してもよいが、焼き色がつかない程度に抑える。
メインはクリームパスタ、そしてトリュフを使った贅沢なおやつ!

メインはトリュフのクリームパスタ。いっぽうの鍋でパスタを茹でながら、もういっぽうの鍋では、まずバターを溶かしたうえに黒トリュフをチーズ削りのような卸金で擦り削って、少し加熱して香りを立たせる。そこに牛乳と生クリームを加え、塩で味を整えてソースをつくる。アルデンテに茹ったパスタをソースと和えたのちに皿に移し、その上に白トリュフをその場でスライスして載せて完成だ。
黒トリュフと白トリュフの2種類の芳醇な香りが楽しめるパスタである。ただし、白トリュフの香りは刺激が強く、ガソリンや漏れたガスの匂い、あるいはニンニク臭と形容されることがある。黒トリュフの香りは白トリュフよりはるかに刺激が少なく、新鮮な土あるいはマッシュルームのような典型的なキノコ臭である。
最後は、ピンポン玉大の揚げドーナッツにトリュフクリームとトリュフチョコを挟んだもの。この揚げドーナッツはフリトゥーレと呼ばれるもので、クロアチアの人たちにとって、おかあさんがおやつにつくってくれる思い出の味だという。それにトリュフ風味を添えた、まさにイストラ半島の贅沢なおやつである。

写真はすべて湯本貴和さんの撮影です。




