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2026.04.24

九份老街の赤提灯の下を歩き、猴硐で猫たちにまみれる

九份老街の赤提灯の下を歩き、猴硐で猫たちにまみれる
旅行作家・写真家の山本高樹による、台湾写真紀行の短期連載。第12回は、台湾北部の山あいにある観光地、九份(ジョウフェン)と、100匹もの猫がいるという猫村、猴硐(ホウトン)を訪ねた時のレポートをお届けします。
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山本高樹の台湾鉄道環島旅・第12回:九份と猴硐

花蓮(ホワリエン)での数日間の滞在を終えた僕は、列車で2時間ほどの道程を北上し、山間部にある小さな街、瑞芳(ルイファン)に到着しました。この街にある安宿のドミトリー(多人数部屋)に数泊して、近郊のスポットを訪ねて回ろうと思っていたのです。

ここで、想定外の出来事が発生。台鉄の瑞芳駅から山間に伸びるローカル線、平溪線(ピンシーシエン)が、数週間前の台風接近に伴う土砂災害で、当面の間、運休になっていることが判明。平溪線には、瑞芳での滞在中に丸一日乗車して、沿線の写真をじっくり撮影したいと考えていたので、残念……。まあでも、乗れないものは仕方ないので、潔くあきらめて、瑞芳から訪問可能な別のスポットに行くことにしました。

九份老街の商店街、基山街。

瑞芳から路線バスで30分ほどの場所にある、九份。19世紀末、この近くに金鉱が発見され、街は日本統治時代に大いに繁栄したそうですが、金が枯渇してからは衰退。しかし、侯孝賢(ホウシャオシェン)監督の映画『非情城市』の撮影がここで行われたのを契機に、台湾国内でも屈指の人気の観光地として復活。日本でも、宮崎駿監督の映画『千と千尋の神隠し』の舞台となった湯屋に雰囲気が似ていると話題になり(スタジオジブリによると、九份をモデルにしたわけではないそうですが)、日本の観光客も大勢訪れるようになりました。確かに、僕が九份に行った時も、商店街を歩いていて、急に周囲から日本語がたくさん聞こえるようになったなあ、と感じたほどでした。

映画『悲情城市』が撮影された、豎崎路の階段。

九份の老街(ラオジエ)でも一番の映えスポットは、豎崎路(シューチールー)にあるこの階段のあたりなのかな、と思います。予備知識なしで歩いていても、ここが一番、写真映えしそうだなあ、と直感で感じたほどでした。『非情城市』の撮影もここで行われたそうですが、当時に比べると、家並などはいくぶん変わっているようです。この日は、雨模様の暗い曇り空だったからか、昼の間から赤提灯に光が灯っていて、思いがけず良い風情の写真を撮ることができました。

九份を象徴する建物、阿妹茶楼。

阿妹茶楼(アーメイチャーロウ)は、金鉱ブームで栄えていた頃に建てられた邸宅を改装して造られた、人気の茶芸館。たくさんの赤提灯が連なる佇まいは、言われてみれば、『千と千尋の神隠し』の湯屋に、ちょっと似ていますね。スタジオジブリと宮崎監督は否定していますが、店側では、「当店が、湯婆婆の湯屋のモデルになりました!」と今も主張しているそうです(笑)。

日本統治時代に建てられた映画館、昇平戯院。

同じく、街が金鉱ブームで栄えていた頃に建てられた映画館が、昇平戯院(ションピンシーユエン)。1986年にいったん閉館していましたが、往時の姿に修繕されて再オープン。今も『非情城市』などの映画が上映されているそうで、上映中以外の時間帯は、内部を自由に見学できます。

阿柑姨芋圓で食べた、温かい芋圓。

九份を訪れた日は、雨がぱらついていて肌寒く、どこかで温かいものを口にしたいなあ、でも茶芸館は料金が高すぎて入れないなあ……と思案して、九份の名物とされているスイーツ、芋圓(ユィユエン、タロイモ団子)を食べることに。急坂を登った場所にある阿柑姨芋圓(アーガンイーユィユエン)という店で、ホットの芋圓を注文(アイスの場合はかき氷の上に芋圓が盛られます)。ほどよい甘さの温かいシロップに、もちもちの芋圓がよく合っていて、ほっとする味。僕にとっての九份での思い出の味となりました。

100匹以上の猫がいる村、猴硐で味わうほっこり時間

至るところに猫がいる猴硐。

瑞芳滞在中の別の日、僕は、列車で一駅移動した場所にある村、猴硐に行ってみました。ここはかつて石炭の採掘が行われていた炭鉱街で、炭鉱の設備をネズミから守るために、まとまった数の猫を飼っていたのが、どんどん増えていったのだそうです。炭鉱が閉山となった後、街もさびれていったそうですが、100匹以上はいるのではと言われる猫たちの存在が新たに注目されるようになり、今は台湾屈指の猫スポットとして、大勢の猫好きな人々が訪れるようになりました。

村を歩いているだけで集まってくる猫たち。

猴硐は、駅と線路を挟んで東側に、炭鉱関連の博物館や公園があり、西側には家並が連なる集落があります。猴硐猫村と呼ばれるのは、西側の集落の方です。猫たちは両方にいますが、西の集落の方が、より多くの猫たちに出会えると思います。本当に、普通に歩いているだけで、猫たちがほいほい近寄ってくるんですよ……。

明らかに同じ血筋の、4匹の猫たち。

どう見ても、親兄弟か何かなのだろうなあ……と思えるほど似ている、4匹の猫たち。ここまでそっくりだと、笑えてきますね。みな、まったく物おじせずに、広場の地面に直列に並んでくつろいでいました。

猴硐の猫たちは、みな穏やか。

猴硐で見かける猫たちは、人慣れしているのもあると思いますが、みな、のんびりと穏やかな雰囲気の猫が多かった気がします。彼らがくつろいでいるのをできるだけ妨げないように、そおっとカメラを構えて、写真を撮るように心がけました。

猴硐に並ぶ、猫をテーマにしたカフェやショップ。

台湾随一の猫スポットということもあって、村には、猫をテーマにしたカフェや、猫モチーフのグッズを扱うショップが軒を連ねていました。駅の東側には、猫に与えるためのキャットフードやちゅーるを扱っている商店もありましたが、どうなんですかね……来る人来る人、餌をあげすぎるのは、猫たちにとってあまりよくないのでは、とも感じました。実際、午後になると猫たちもすっかり満腹になって、観光客たちが地面に置くキャットフードには、見向きもしなくなっていましたし。

猫たちには、無闇にちょっかいを出さないように。

猫が好きな人にとってはたまらないスポットである猴硐ですが、猫たちを思いやる配慮は、やはり忘れないようにしたい、と感じました。猫たちにむやみに近づきすぎてプレッシャーをかけたり、不用意に触りすぎたり、気を惹こうとして餌を与えすぎたり、という行為は、なるべくしないように心がけた方がいいでしょう。人間が適度な距離感を保ちながら見守ることで、猫たちの穏やかな日々が続いていくといいのですが。

「我是小花 請愛護我」という小さな看板のメッセージが、これから猴硐を訪れる人たちに届きますように。

山本 高樹さん

著述家・編集者・写真家

1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとその周辺地域に長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。近著に『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』(雷鳥社)、『流離人(さすらいびと)のノート』(金子書房)など。

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