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山本高樹の台湾鉄道環島旅・第4回:彰化と鹿港
台中から西南西に20キロほどの場所にある街、彰化。台湾の中部でも、商業が盛んな街として古くから栄えてきた街だそうです。台中での滞在中に、僕はこの彰化を日帰りで訪れてみることにしました。台鉄の台中駅から在来線に乗れば、ほんの15分ほどで彰化駅に到着します。

僕が彰化を訪れた目的のひとつは、彰化駅にほど近い場所にある、扇形車庫を見学すること。この街には、日本統治時代の1922年から10年ほどかけて建設された、鉄道の機関車を保管するための扇形車庫があるのです。
台湾にはかつて、5か所に扇形車庫があったそうですが、今も残っているのは、彰化のものだけだとか。現役で使用されている車庫なのに、一般の人でも間近で見学できることから、彰化でも随一の観光スポットになっています。月曜日を除く13時から16時まで(土日は10時から16時まで)、無料で見学可能です。

扇形車庫の近くには見晴し台があり、機関車の出庫の様子などを、少し高い場所から見学することができます。いくつも並ぶ車庫の中から、ずずい、と機関車が出てくるさまは、見ていて単純に楽しいですし、テンションが上がりますね……! 扇形車庫での機関車の出し入れがいつ行われるのか、そのスケジュールは定かではないのですが、敷地内で1、2時間ほどぶらぶらしていれば、その間に見られる可能性はかなり高いと思います。

扇形車庫から出てきた機関車は、扇の要に当たる場所にある転車台に乗せられてから、回転して向きを変え、外に向かう線路に移動します。外から戻ってきた機関車が、車庫のどこかに格納される際も、この転車台が用いられます。実際に転車台に乗せられた機関車が回転するのを見学しましたが……このずしっとした重厚感……ロマンだ……ここにはロマンがある……。普通に子供のような気分で楽しんでしまいました(笑)。

彰化に来たもうひとつの目的は、本場の肉圓(バーワン)を食べること。肉圓は台湾の至るところで目にする軽食で、肉やタケノコなどの餡を、サツマイモのでんぷんなどで作った皮で包み、蒸したり揚げたりしたものです。地域によってさまざまな調理法があるそうですが、一説によると、彰化が肉圓の発祥の地なのだとか。
彰化駅の近くには、肉圓を出す店がたくさん軒を連ねている一角があり、お昼時にはあちこちで行列ができていました。油の煮えたぎった鍋で、ぷにゅんとした姿の肉圓がひょいひょいと手際よく揚げられていくのを眺めるのは、なかなか楽しいです。

いくつも連なる食堂の中で、空いた席があった店に入ってみました。英語も何もまったく通じなかったのですが、何となく、フィーリングみたいなもので話が通じ(笑)、首尾よく肉圓にありつくことができました。
この店の肉圓は、いったん蒸したものを軽く揚げたもので、中には刻んだ豚肉や椎茸がたっぷり、甘辛いタレもぴったり。見た目以上に食べごたえがあって、この1個だけで、夕方まで、まったく腹が空きませんでした。
鹿港の老街をさまよい歩く

台中に滞在中の別のある日、鹿港という近郊の街に、日帰りで行ってみることにしました。台中の街からは、路線バスで片道1時間ほどの道程です。
鹿港は古くから港町として栄えてきた歴史があり、街には航海の安全を司る女神、媽祖(まそ)を祀る道教の廟、天后宮(ティエンホウゴン)があります。台湾全土には数多くの媽祖廟がありますが、鹿港の天后宮は、16世紀末頃に台湾で最初に建てられた媽祖廟だそうです。17世紀には、媽祖信仰の発祥の地である福建省から、媽祖像を迎え入れたとか。そうした由緒のある廟だけあって、天后宮は佇まいも非常に立派で、僕が訪れた日も、大勢の参拝客でにぎわっていました。
媽祖は、10世紀後半に中国の福建省に生まれた女性とされていて、法術によってさまざまな奇跡を行い、特に水難事故から大勢の人々を救ったため、没後に神と崇められるようになった、と伝えられています。中国から海を渡って台湾や東南アジア各地に移り住んでいった人々は、船出の際に守り神である媽祖像を船に乗せ、無事に目的地に着くと、感謝してその土地に媽祖の廟を建てました。それが、今も各地に数多くの媽祖廟が残っている理由だそうです。

鹿港には、細い路地の左右に福建風の家屋が軒を連ねる老街(ラオジエ)が、今も残っています。建ち並ぶ商店や屋台も、老街の雰囲気に合ったノスタルジックな店が多く、縁日のような懐かしいにぎわいです。この日は日曜日だったからか、場所によっては路地がぎっしり人で埋まるほどの混雑ぶり。鹿港から台中に戻るバスの席を確保するのも一苦労でした。

老街には、こんな牧歌的な佇まいの、輪投げ屋も。ほかにも、素朴な木箱のようなピンボール台を並べている店などもありました。昔懐かしいアナログな遊び方のゲームも、台湾では根強い人気があるようです。

鹿港の老街にある九曲巷(ジォウチューシアン)と呼ばれる一角には、とりわけ細く曲がりくねった路地の左右に、レンガ造りの家々が建ち並んでいます。この地域では冬になると、九降風と呼ばれる強い季節風が吹くため、強風や飛砂から家並を守るため、このような街の造りにしたのだとか。路地が入り組んでいるのは、どこかの家に泥棒が入っても逃げづらくするという防犯上の意味合いもあったそうです。

鹿港には、台湾でも随一の肉包(ローパオ、肉まん)の店、阿振肉包があります。お店に行ってみると、箱入りの肉包をまとめ買いしに来た人々の行列ができていて、大人気。確かに、街ですれ違う人の中にも、このお店の肉包を持っている人が結構いましたね……。
肉包はバラ売りもしてくれるそうなので、おひるに2個ほど買い求めました。路上で、ぱくっと頬張ってみて、びっくり……! 白い皮はふわふわと柔らかく、ほんのり上品な甘みがあります。豚肉とネギの餡はあっさりした味付けで、皮との組み合わせが絶妙。無限に食べられますね、これは……。いつか再びこの街に来る機会があれば、必ずまたこの肉包を食べたい、と思わせる味わいでした。





