
今回は、そんな鮎の取り込み技法を3つ紹介します。
鮎釣りの取り込み技法とは?

鮎釣り(友釣り)は、使用される竿が9m前後と長尺であることから、釣り人から掛かった鮎までの距離が9m程度という場合が大半となります。
また、鮎釣りは比較的強い流れの川の中に立ち込んで行うことが多い釣りです。
そのため、釣り人から9mも先で掛けた鮎をいかにタモに収めるか(取り込むか)、という課題が存在します。そして、あらゆる取り込み技法、つまりタモに取り込むための方法がいくつも編み出されてきました。
引き寄せ

引き寄せは、掛かった鮎を一旦流れの穏やかな岸際まで誘導し、釣り人のすぐ傍まで引き寄せてタモに取り込む技法です。
鮎が掛かるたびに岸際まで移動が必要であることから掛かった鮎を手に取るまで時間を要し、その動作も一見地味である引き寄せですが、確実に取り込めるという大きなメリットがあります。

鮎の友釣りは、釣った鮎が次のオトリ鮎になる「循環の釣り」です。
オトリ鮎が元気であるほど次の鮎が釣れやすくなるため、取り込みのミスによって掛かった鮎を逃がしてしまい、同じオトリ鮎を使い続けて弱らせてしまうというのはできるだけ避けたいところです。
そこで慣れない初心者の方にこそ実践してもらいたいのが確実に取り込める引き寄せです。
また、抜き上げると竿が折れる恐れがあるような大型の鮎の取り込み技法としても大変有効です。
引き抜き

引き抜きは、掛けた鮎を水面から抜きあげ、宙を舞う鮎をそのままタモでキャッチするという、鮎釣りといえばコレといえるような華麗な取り込み技法です。
しかし、ミスなく引き抜きを決めるには練習が不可欠であることは想像に容易いでしょう。
実際の鮎釣りで練習しようにも、前述の通り掛けた鮎を逃がすことは鮎釣りにおいて大きなミスになるため、熱心な釣り人はオフシーズンに鮎の代わりとなる模型などを使用して練習するほどです。

かつて鮎竿の材料が柔軟性に富んだ竹やグラスファイバーだったころは水面から鮎を抜きあげようにも竿が曲がり込んでしまい抜けず、引き寄せで取り込むというのが一般的でした。
その後の材料の進化によって、張りのあるカーボン製の鮎竿が主流となると水面からの鮎の抜き上げが可能になり、引き抜きが確立されたとされています。
また、引き抜きが編み出された当初は曲芸かと貶されたそうですが、掛けてから取り込むまでのあまりの速さや、わざわざ岸際まで移動せずにその場で釣りを続けられるといった利点から、実用的な取り込み技法であると認知されていったとされています。
返し抜き

返し抜きは、水面から抜き上げた鮎を一旦上流側へ放って着水させ、釣り人のそばまで流れてきたところを釣り糸を掴んだり、再び軽く抜き上げてからタモで受けるなどして取り込む技法です。
激しい流れに立ち込むシチュエーションでは、水流抵抗の観点から身に付けるタモは超小型のものが用いられることがあり、枠の小さなタモでは引き抜きで鮎をキャッチするのが困難になります。
また、激しい流れに乗って一直線に下流に向かう鮎を抜き上げると、大きく曲がり込んだ竿の復元力により凄まじい速度で鮎が飛んでくることになり、この場合もタモでキャッチするのが難しくなります。
一旦上流側へ鮎を飛ばしてしまえば、着水した鮎は流れておのずと釣り人に接近してくるため、じっくり確実に取り込めるのが返し抜きというわけです。

返し抜きの一連の動作はタモでキャッチする引き抜きよりも派手です。
返し抜きは急流で知られる福井県の九頭竜川などで広く用いられ、九頭竜返しという別名もあり、まさに奥義ともいえる取り込み技法です。
鮎釣りの奥深さ
鮎釣りは大変奥が深く、釣り開始時にオトリ鮎を弱らせないように手に掴むところから掛かった鮎をタモに収める取り込みまで、一挙手一投足に技術が必要といっても過言ではありません。
しかし、これらの動作を間違うことがなければ、これほど簡単に釣れる魚はいないと思えるほど誰でも簡単に釣れるのが鮎釣りで、多くの釣り人を魅了しています。
ぜひ、鮎釣りの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。