
また、本来その言葉が持つ意味をユーモアを交えて釣りの世界に落とし込んだものも。
今回はそんな釣りの世界で使われている言葉を5つ紹介します。
おまつり

ルアー同士であれば比較的簡単に解けますが、サビキ針など複雑な仕掛けは切らざるを得ない状況となりやすいです。
釣りの世界においておまつりとは、近くで釣りをしている方と仕掛けや糸が絡んでしまうことをいいます。
その由来は、複雑に絡んだ糸を解く動作が両手を広げたり閉じたりと、まるでお祭りの音頭のようだからといわれます。
しかし和やかな言葉の由来とは裏腹に、実際の釣りにおいておまつりは絶対に避けるべきトラブルでしょう。
絡まった糸を解くのに時間を要し、その上で解けなければ、絡まった相手の物も含め仕掛けを切るほかありません。
人気の釣り場では隣の釣り人との距離は十分に取るなどの留意が必要です。
太公望

鮎釣りをする太公望たち、というような使われ方がメジャーです。
太公望とは、古代中国の軍師である呂尚(りょしょう)の通称で、大公が待ち望んでいた賢者ということに由来します。
呂尚が釣りをしながら自らを見出してくれる大公を待ち望んでいたことから(実際には釣りをしているフリだけで忍耐強さを顕示していたという説も)、釣りの世界においては特に釣りが好きな人や、忍耐強く釣りが得意という人を、ユーモアを込めて太公望と呼ぶことがあります。
新聞などに釣りに関する記事が載る際には、写真に写る釣り人を「太公望たち」と呼称するのもよく見受けられます。
太公望はすべての釣り人が名人であるという温かい親しみを感じる言葉といえるでしょう。
その他、中国には「一生幸せになりたければ、釣りを覚えなさい」などの釣りに関することわざもあります。
つ抜け

鮎の友釣りはつ抜けが精いっぱいというときもあれば、束釣りも視野に入る奥深い釣りです。
つ抜けとは主に引数を狙うスタイルの釣りで使われる言葉で、10匹以上の釣果をあげた際に「つ抜けした」などという形で使われます。
つ抜けの由来は魚を数を数える際に「ひとつ、ふたつ……」と数えていき、10尾に達すると「とお」となり、つが抜けることにあります。
10尾という区切りの良い数であることから、つ抜けは釣りをしていると頻繁に使われる言葉のひとつです。
さらに100尾の釣果を表す「束釣り」(そくづり)という言葉もあり、こちらは野菜や稲などの本数を数える際の単位である1束(100本)に由来します。
年無し

古くから釣り魚として親しまれているクロダイは大きさを表す年無しの他に、「チヌ」「カワダイ」など地域によって無数の呼び名があります。
年無し(ねんなし)とはクロダイの大物を指す言葉で、その目安は全長50cm以上です。
釣りあげたクロダイを見て、その大きさや顔つきから「これは〇年魚だね」というような年齢の推測をするのは、クロダイフリークの嗜みのひとつです。
クロダイは寿命が長い魚種で20歳を超える個体もいるといわれており、全長が50cmを超える個体は最低でも最低でも10年以上は生きていて、もはや年齢の推測は不可能……つまり年が無いということになるのです。
若い釣り人でしたら釣りあげた大物クロダイが自分より年上ということもありうる話です。
それだけ年を重ねた個体は警戒心が高いため釣るのは難しく、クロダイを狙ううえで年無しクロダイはひとつの目標といえるでしょう。
また、クロダイに限らず大物全般に対して年無しと呼ぶこともありますが、アオリイカや鮎など1年で一生を全うする魚種は全てが0歳魚のため、どれだけ大物であっても年無しとは呼ばないのが正解でしょう。
魚影

公園の錦鯉などは簡単に魚影が確認できますが、釣りで魚影を見ることは稀です。
魚影とは水面付近を泳ぎ、目視で確認できる魚のことを指します。
しかし釣りの世界では魚が見えずとも魚影という言葉を使うことがあり、よく魚が釣れる状況と、その反対に釣果が芳しくない状況でよく使われます。
よく魚が釣れる状況を「魚影が濃い」、なかなか釣れない状況を「魚影が薄い」と表現します。
実際に魚の姿が見えなくても、水中の様子を想像しながらのアクティビティである釣りならではの表現といえます。
釣りに楽しみを
今回紹介した言葉を使うことでより一層釣りを楽しめることでしょう。
釣り船の船頭さんや隣の釣り人との会話も弾み、「つ抜けしたよ~!」というような釣り仲間への釣果自慢なども饒舌になることうけあいです!