タヒチ島で四駆に立ち乗りして「鼻吹きオヤジ」の謎を解く【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

海外の旅

2024.10.14

タヒチ島で四駆に立ち乗りして「鼻吹きオヤジ」の謎を解く【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

タヒチ島で四駆に立ち乗りして「鼻吹きオヤジ」の謎を解く【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。

いや、写真にうつっている「鼻から息を出して笛を吹いているオヤジ」は私ではありません。言わなくてもわかりますね。笑

けどこのお方、いい大人なのになぜソプラノリコーダーを初めて手にした小学3年生レベルの悪ふざけをしているの?…いえいえ、じつはすご~く深い話があって、それを聞いたとき私は少しウルッとしてしまいました。

【タヒチ旅vol.1】パペノオの谷に「本当のタヒチ」を探しに行く!

さて今回から紹介するのは「タヒチ」です。みなさん、「タヒチ」と聞いて何を思い浮かべますか? たぶん「水上に浮かぶバンガロー」とか「ビーチサイドのプール」ではないでしょうか。フランスの香りが漂う優雅なリゾートですよね。

デッキチェアに寝転びながら「なにもしない時間」を楽しむ楽園。それもタヒチ。

もちろんそれが世界中の旅行客をタヒチにひきつける魅力でしょう。でもたくさんの島々があるんだから、それらの内陸部にもきっと「何か」があるはず!手つかずに近い大自然が残されていて、アウトドアの楽しみもたくさんあるはず!

というわけで、そんな「優雅な水上バンガローでのんびり」じゃないタヒチを探す旅に出かけることにしました。そこで見つけたのが「鼻吹きオヤジ」なんですが。笑

今回まず向かったのはタヒチ島。日本からは成田空港から「エア タヒチ ヌイ」の直行便が出ていて、約11時間の旅です。タヒチ(フランス領ポリネシア)には118の島があり、その「総面積」は約440平方キロメートルで、日本最大の佐渡島のたった半分ほど。ただそれらが広範囲に点在しているため、排他的経済水域は約170万平方マイルでEU加盟国を全部合わせたよりも広いのだそうです。

もちろん無人島などもあるのですが、観光客を普通に受け入れている島々だけでも少なくとも15島あるのです。で、その中心というか唯一の国際空港があるのがタヒチ島です。「タヒチ」は島の名前でもありエリアの名前でもあるのでちょっと紛らわしいですが。

そのタヒチ島の地図がこちら。二つの島がくっついて、まるで「ひょうたん」のような形です。

タヒチ島の地図。 (c) タヒチ観光局

内陸部への冒険ツアー!でもメンバーはまさかの…。笑

そのタヒチ島で最初に紹介するアクティビティー。それは四輪駆動車に乗って、島の内陸部にあるパペノオ谷(Papenoo Valley)を探検するというものです。場所は地図の大きな円のほうの右上あたりです。

このツアーのガイドを務めてくれた「鼻吹きオヤジ」ことティーバさんによると、タヒチ島には約70の谷があるとのこと。はい、谷があれば山もあります。最高峰は標高2241メートルのオロヘナ山! 

たいした標高ではないと思われるかもしれませんが、タヒチ島の大きいほうを一周する道路が約120キロメートル。その小さな島に2241メートルの峰がそびえるのだからなかなかです。

てなわけでタヒチ島の中心街で、フランス領ポリネシアの首都でもあるパペーテの街を出発します。

パペーテの様子。人口約2.6万人で海外からの観光客も多いのでそれなりの街です。

ドッピーカンとは言えませんが、それなりに青空も見えます。ただし懸念材料もないわけではありません。それはそのツアーには2台の四輪駆動車で分乗して合計12人の客が参加したのですが、私以外すべてフランス人であること。笑

【オーストリア・ザルツブルク旅vol.4】で書いた「絶叫トロッコ」に乗れるハラインの岩塩抗博物館で、ドイツ語話者のオーストリア人の中にポツンと放りこまれたのに続く完全アウェイ状態です。

オーストリアの岩塩抗博物館で地下爆走の「絶叫マシン」に乗ってみた!【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

けどあのときは59人対1人の圧倒的な差だったけど、今回はわずか11人対1人。…はい、「五十歩百歩」ですね。反乱を起こしても瞬時に制圧されるでしょう。…起こしませんが。

さて谷と同名の「パペノオ」という町から内陸部に入ったころから、なにやら急に雲行きが怪しくなってきました。いや、安心してください。別に「ツアーの車内の」という話ではなく、文字通り「空の」です。

さのてパペノオの谷に入る前に、車を降りて説明を受けます。

荷台に乗って「お山の大将」状態のティーバ。

そしてここでティーバは私に向かってこう言ってきました。「ここからは未舗装道路をノロノロ運転するので後部座席の幌を外します。座席に立って景色を眺めてもいいですよ」。

うわっ、楽しそうとは思いました。

でも。普段はまずフランス語でみんなに説明したあとに、私に向かって英語でフォローしてくれるティーバですが、このときはなぜか私への英語が最初。

「一人立ち上がるのも恥ずかしいなあ。なんたって11対1だし」と気兼ねしていたのですが、フランス語の説明を聞き終えたみんなは競うように靴を脱ぎはじめました。

旅に出るとみんな童心に帰るものです。

というわけで2号車からの中継画像です。前を行くのがティーバ運転の1号車。

悪路で車がグラングランと揺れ、絶叫マシーン並みの迫力。6人乗車のうち2組はハネムーナーで、残り一人で隣に立っていたオバサマがキャーキャー言いながら「おまえ、わざとオレにカラダぶつけてるだろう」状態だったのですが、そこはもう小国の悲哀で「スマイル外交」を続けましたよ。

そっぽを向いて「私は関係ないわ~。ジュヌコンプランパ~」という顔をしている人がいますが。笑

まあ、最初はそんな感じでみんな童心に帰って大はしゃぎだったのですが…なんと途中から「本降りの雨」に。再び幌がかけられました。

橋のない川を渡り、いよいよ秘境へ

そして四輪駆動車は川の手前で停まります。そしてその川には橋がない!

同乗のツアー客たちは「えっ? マジ?」「本気でここを渡るのか?」「ヤバいでしょ、絶対に」などなど慌てふためいています、たぶん。フランス語なので推測しかできませんが。

でも私は【オーストラリア・アーネムランド旅vol.1】でも橋のない川を経験しているので慣れたものです。

オーストラリア最後の秘境(?)アーネムランドに潜入【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

はい、橋がなくても堰を渡ればいいのです。

橋なんていうやわなものではなく堰を越えたところから冒険は始まるのです! 橋ではなく堰を越えるから秘境なんです! …ちょっと勢いで言ってみました。

1号車を運転していたティーバが車外に出てきました。アーネムランドでは「ワニ注意」の看板があったのでちょっと心配になりましたが、タヒチにはあの猛獣はいません。

代わりに餌を撒いたらウヨウヨ集まってきたのは…なんと丸々と太った巨大ウナギです! 

はい、まさにウヨウヨです! これがヘビだったら爬虫類が苦手な私は絶対に気絶しています。

ポリネシアではウナギは「神の使いの神聖な生き物」とされているので食べないのだそうです。

堰を渡ってさらに奥地に進みます。しばらくするとまた車を停止。ちょうど雨が少し小降りになっていて、みんなも外に出て、道路からそれて数十メートル歩きます。

それでも小雨なのでみんなポンチョ姿。

そしてやってきたのがこんな場所。

「マラエ」というポリネシア人の祭祀場です。

石だけが並んでいました。ああ、壁や柱や屋根はこの島々の文化を否定したという宣教師たちによって破壊されたのか。それで土台となる石だけがかろうじて残されたのか。そんな感傷に勝手にふけっていたのですが…「マラエ」にはもともと壁も屋根もないとのことです。

鼻息で笛を吹く深い理由

ここでティーバが取り出したのが例の笛です。「一見普通の笛ですが、ポリネシアのは世界の他の地域とはまったく違う特徴があります。なんだかわかりますか?」

私は素材か何かかなあと思っていたのですが、ティーバは「ポリネシアでは笛はこうやって吹くんです」。

そう告げてから鼻から息を出して吹きだしました。

ではなぜ鼻で吹くのか。ティーバこう説明してくれました。「口は悪口を言ったりけんかをしたり、悪いことに使うものですよね。だから聖なる音楽を奏でるのにふさわしくないんです」

仲のいい友だちやガールフレンドにひどいことを言ってしまった過去を思い出して、ちょっとウルッとなりかけました。日本では「口は災いのもと」と言いますよね。

次に披露してくれたのが「ほら貝」です。遠くまで音が響くので、離れた場所に住む部族間の交易の際の通信手段に使っていたとのこと。だけど一つ疑問が。

「ほら貝の音程は一つだし、息をたくさん吹き込まないと音が出ないからリズムを作るのもむずかしそうですよね? 一体どういうことを伝えることができたんですか?」と質問してみました。するとティーバの回答は。

「確かに複雑なコミュニケーションは無理でシンプルなことしか伝えられません。1回吹くとここにいるという意味で、2回だとここで会おうという意味です」。なるほど。「そして3回だと、5時からアルコール半額のハッピーアワーが始まるよという意味です」。

…真面目な顔してギャグをぶっこむのはやめてくれ~。

まさに「ほら吹き」のティーバ。笑

もうひとつティーバから聞いておもしろいなと思った話。それはほんの20~30年前まで本国フランスの政府がポリネシア伝統の入れ墨を「野蛮だ」と禁止していたというもの。

「それが今じゃ世界中で人気のファッションアイテムになっているんですからね」。冗談めかした口調ですが、怒りを隠しているように感じられました。

今は歯医者さんのドリルのようなもので彫りますが、昔の入れ墨はこれを使ったそう。

パペノオの谷にいる間、天気はずっとこんな感じ。これはこれで神秘的で冒険感を増します。

さてこれで探検は終わり。そして来た道を戻り、海沿いに出た途端晴天になりました。ツイてないとも言えますが、これもまた旅。

途中休憩でフルーツを用意するティーバ。

バナナの葉がお皿代わり。

このあたりがサーフィン発祥の地だとか。

まあ、そんなわけで天気もめまぐるしく変わるわ、フランス人ばかりのチームに飛び込むわで、波乱万丈のうちにタヒチ旅が始まりました。

だけど宿に帰ってきてから一つ疑問が。ねえ、ティーバ。口は悪いことに使うから鼻で笛を吹くっていったよね? じゃあなんでほら貝は「口」で吹くの?

【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら

タヒチ観光局
https://www.tahititourisme.jp/

エア タヒチ ヌイ
https://jp.airtahitinui.com/

今回の「TAHITI DISCOVERY」ツアーに関する日本語での手配問い合わせ先(ただしツアーそのものは日本語非対応):タヒチ・ヌイ・トラベル
https://tahitinuitravel.com/(サイトは英語またはフランス語のみ)
日本語対応メールアドレス:japan@tahitinuitravel.pf

私が書きました!
オーストラリア在住ライター
(海外書き人クラブ)
柳沢有紀夫
1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係

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