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台湾南部の知られざる秘境。ルカイ族の里、霧台を訪ねて

2022.07.04

標高約1000メートルの山中にある台湾南部の秘境、霧台。

台湾南部の山中にある村、霧台

日本人の海外旅行先として、常に一、二を争う人気の国、台湾。九州とほぼ同じ面積のその国土には、日本でもまだあまり知られていない秘境が残されています。

台湾南部の屏東県、標高1000メートル前後の山の中に、霧台と呼ばれる村があります。台湾で台湾原住民と呼ばれる先住民族のうちの一つ、ルカイ族(魯凱族)の暮らす村です。ほんの数年前まで、旅行者は入山許可証を取得しないと訪れることのできない場所でした。

霧台へは、屏東駅のすぐ近くにあるバスターミナルから、小型のバスが1日に3本往復しています。所要時間は1時間半から2時間弱程度。台湾南部の大都市、高雄からは、早朝発の列車で屏東に移動すれば、日帰りで霧台を訪れることも可能です。

霧台の魯凱文化廣場に置かれている、勇壮な風貌の像たち。

台湾には、政府に指定されている民族だけでも16もの台湾原住民が存在し、その総計は50万人を超えます。彼らは、17世紀頃に大陸から漢民族が移住してくるよりもずっと以前から、南方から海を越えて台湾にやってきて、定住していたと考えられています。

現在のルカイ族の人口は、1万3000人程度。山中での狩猟や採集で生活していた彼らは、小さな部落ごとに、いくつもの階級からなる貴族社会を営んでいました。花やビーズ、獣の牙などで美しく彩られた冠や装飾品が、それぞれの身分を表すものだったそうです。今はもちろん行なわれていませんが、かつては、漢民族や日本人に「出草」と呼ばれていた、敵対する部落の人間の首を狩る風習もあったと伝えられています。

霧台にある魯凱文物館は、数はそこまで多くはないものの、ルカイ族についての貴重な資料と解説が展示されている博物館です。英語での解説がまだ整っていないのが少し残念ですが、一見の価値はあります。建物自体の装飾も非常にユニークです。

カラフルでユニークな装飾が施されている魯凱文物館。

ルカイ族のアイデンティティーがあふれ出る家並

魯凱文物館のすぐ隣には、霧台國小という小学校があります。校舎の壁画に描かれている百合の花は、ルカイ族にとって非常に大切な存在で、英雄とされる男性や未婚の女性だけが身につけることのできる花なのだとか。

ルカイ族を象徴する百合の花の壁画に彩られた霧台國小の校舎。

霧台に暮らすルカイ族の人々は、キリスト教(プロテスタント)を信仰しているそうです。17世紀頃にスペインやオランダの宣教師が台湾で布教活動を行なったのが、その始まりだったとか。霧台の村の中心部には、霧台基督長老教会という石造りの立派な教会が建っています。地元出身の芸術家の設計によるものだそうで、この建物も装飾やデザインが非常にユニークで、見応えがあります。

独創的なデザインと装飾が施されている、霧台基督長老教会。

カメラを手に、村の中を歩き回りました。多くの家が石造りで、軒先や壁面など至るところに、かつてのルカイ族の社会や暮らしぶりを象徴する個性的な像やレリーフ、壁画の数々がひしめいています。あふれんばかりのルカイ族のアイデンティティーに、終始圧倒されっぱなしでした。

村の至るところにひしめく、ルカイ族を象徴する装飾の数々。

霧台ならではの食と人の温かさに触れて

山の上手にある霧台部落から少し下ったところにある、神山部落に行ってみました。ここには、オーギョーチ(愛玉子)というデザートで有名な神山愛玉氷という店があります。オーギョーチは台湾に自生するつる性の植物で、その果実を水の中で揉み出すとゼリーのように固まるのだそうです。緑豆と小米をトッピングしたオーギョーチを食べてみましたが、ひんやり、つるんと食べられて、後味もさわやか。やみつきになりそうなおいしさでした。

神山愛玉氷でいただいた、緑豆と小米をトッピングしたオーギョーチ。

ルカイ族の作ったトンボ玉のアクセサリーを売っている土産物屋で、お店のおばあさんのポートレートを撮影させてもらいました。僕が日本人であることを知ると、小柄なおばあさんは流暢な日本語で、それぞれのトンボ玉に込められている意味を教えてくれました。

流暢な日本語で話しかけてくれた、土産物屋のおばあさん。

この日の夜は、霧台にある夢想之家という民宿に一泊しました。1人では食べ切れないほどたくさん用意していただいた晩ごはんのおかずは、どれもあっさりした自然な味付けで口に合いました。部屋も快適で、電波は弱めですがWi-Fiも使えます。夢想之家はFacebookページを持っているので、そこからメッセージを送れば予約の問い合わせが可能です。

夢想之家のFacebookページ

https://www.facebook.com/dreamhouse.wutai/

たっぷり用意していただいた夢想之家の晩ごはん。

宿のロビーの一隅には、ルカイ族の人々が正装する時に身に着ける、独特の意匠の冠や装飾品の数々が置かれていました。

ルカイ族の人々が身に着ける冠や装飾品。

あらゆるものが刻々と移り変わっていく時代の中にあっても、霧台で暮らすルカイ族の人々の矜恃は、ひっそりと、しかし途絶えることなく、受け継がれていくのだと思います。

写真の中に流れる、かつての時間。

※この記事は2020年1月初旬に取材しました。

 

私が書きました!
著述家・編集者・写真家
山本高樹
1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとザンスカールに長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。
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