サーリーが魔法をかけて生み出した新型MTB「ソーサレス」。その実力を自転車ライターがレビュー! | 自転車・MTB 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

自転車・MTB

2026.09.01

サーリーが魔法をかけて生み出した新型MTB「ソーサレス」。その実力を自転車ライターがレビュー!

サーリーが魔法をかけて生み出した新型MTB「ソーサレス」。その実力を自転車ライターがレビュー!
なんだかんだで20年以上SURLY(サーリー)の自転車に乗り続けている。理由はシンプル。乗っていて楽しいから。近所の買い物から未舗装路まで肩ひじ張らずに気楽に乗れる。しかも丈夫で飽きることもない。そんなお気に入りのバイクブランドから、新型MTBが登場した。名前は、Sorceress(ソーサレス)。魔女とか魔術師という意味を持つ名前に込められた彼らの思いを試乗しながら考えてみた。
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乗って分かったソーサレスという魔物の正体

ソーサレスのプロモーション画像
魔術師が焚き火になにかを投げ込み、呪術を使って生み出したバイク=ソーサレス。photo by surlybikes

デカくて重い。それがソーサレスのファースト・インプレッションだった。お借りしたテストバイクをステーションワゴンの荷室に入れるのも一苦労。マンションのエレベーターに入ったら、タイヤがドアにあたって閉まらない。なんてやんちゃな自転車なんだ(汗)。しかし、自転車とは乗るものである。少々運びにくくても、走る喜びが大きければそれでいい。

まるでアメリカのピックアップトラックのように豪快な走り

ソーサレス
インプレ初日は、バイクに慣れるために近くの都市公園まで出かけてみた。

テストライド初日は、近所をのんびりとサイクリングした。テストバイクのサイズはM。身長170cmの筆者の適正サイズだ。

タイヤサイズは、29×2.5インチ。トレイルで攻め攻めに走るためにデザインされた高さのあるブロックとソフトコンパウンドを採用した本格的なMTBタイヤだ。空気圧を40PSIにセット。アスファルトの上を走り出して、その乗り心地の良さにほっとした。タイヤの性能と低めにセットした空気圧によるところは大きいが、フレーム自体のしなやかな乗り心地は、アルミフレームのバイクとは一線を画す快適さだ。

テラベイル/ケッセル(29×2.5インチ)というタイヤ
前後ともにテラベイル/ケッセル(29×2.5インチ)というタイヤを装備。購入後にチューブレスにできる仕様。

タイヤ径が大きい分だけ、走り出しこそ力がいるが、走り出してしまえばよく転がりスピーディーにクルージングできる。幅が80cmもあるアップライトなポジションのハンドルに、ゴーっというタイヤ音。独特の世界観を楽しみながら走った。それはまるで大排気量のアメリカン・ピックアップトラックに日本の道で乗るような感覚といえば分かりやすいだろうか。

ハンドル
トレイルにおけるコントロール性能を高めるため、幅80cmのハンドルバーが標準装備されている。
サドル
都市の移動でも快適だった、厚すぎず、薄すぎないシンプルなサドル。

都市移動を考えた場合、さすがにハンドル幅の広さだけは現実的ではないが、思いのほか快適だったことに驚かされた。この感じなら、シンプルなキャンプ道具を積んでバイクパッキングに出かけるのも楽しそう。本格的なトレイル専用バイクという思い込みは初日にして一蹴された。

ソーサレスのロゴとフレーム上のアイレット
フレームのアイレットは計3セット(Mサイズ)ある。これはトップチューブ上の2連マウント。
ダウンチューブのアイレット
ダウンチューブの上には、2連と3連のアイレットが各1セットある。XSとSサイズは3連のみ。

MTBパークでテストライド

翌日は、自力で上って下る里山系のMTBパークに持ち込んで走ってみた。長さ約100~700mのシングルトラックが多数あり、初心者から上級者までがマイペースで楽しめるパークだ。空気圧は25PSIにセット。

12段変速のドライブトレイン
日本市場では、試乗したシマノ/デオーレ12段変速仕様と、シングルスピード仕様の2種類の完成車が展開されている。

緩い上り坂では、なにも考えずにペダルを踏むだけでグイグイと進む。まったく滑ることなく、しっかりとトラクションを地面に伝えながらスムーズに上っていく。シマノ/デオーレの12段変速のギア比も余裕があり、後半の急な上り以外は一番軽いギアの出番もなし。ギア比の構成は、フロントが32Tのシングルで、リアが10~51Tまでの12段仕様。誰が乗っても扱いやすい標準的な仕様だ。多少、小石が浮いた路面でも力強く踏破できた。唯一気になったのは、急な上り坂をゆっくり上っているときに、急にハンドルが切れて止まってしまったことぐらい。これは自分のパワー不足が主な原因ではあるが、29インチの大径タイヤと65度のかなり寝ているフォークアングルの特性(クセ)とも考えられる。特徴をとらえた乗り方が必要な部分もあるようだ。

ソーサレス
トップチューブの後方を低い位置にすることで剛性を向上させながら、同時に足つき性を高めている。

買ってすぐにトレイルデビューできる考え抜かれたパーツスペック

ダウンヒルを楽しむ前に、ドロッパーシートポストのレバーを引いてサドルを下げる。なんと200mmもサドルの位置を下げられる。ギア比を少し重くして走り出す。連続するタイトなコーナーには、バンクが付けられている。序盤はコーナーに慣れるため、ゆっくりと走った。ラインをしっかりと考え、道幅をいっぱいに使えば、かなり小さなコーナーでも問題なく走れた。というよりバイクコントロールが楽しい。小さなコーナーが連続すると、口元が開いて笑ってしまうくらい楽しい。ヒューヒュー!!

ドロッパーシートポスト
200mm(XSは170mm)も伸縮できるドロッパーシートポストを標準装備。
ドロッパーシートポストの操作レバー
ドロッパーシートポストは、左手近くにあるレバーで操作する。

フレームのジオメトリー表を確認してみると、BBハイトが314mmと低く、さらにトップチューブを低い位置にセットしスタンドオーバーも十分に確保されている。フレームの重心をグンと下げることで、コーナーでのバイクコントロール性と直進安定性を同時に演出していることが分かる。

テラベイル/ケッセルというタイヤのグリップ力は申し分なし。シマノ/MT420(前後180mmローター)、4ピストンのディスクブレーキは、思いのままにスピードコントロールするためには十分すぎる制動力だ。

ディスクブレーキ
ハイスピードでトレイルを走ることを想定した制動力の高い4ピストン仕様のブレーキ。

SRサンツアー/Zeron36というフロントサスペンションは、乗った瞬間に剛性の高さを感じられる。かなり寝かされたヘッドアングル(65度)のおかげで、路面に多少のデコボコがあってもスムーズにクリアできるから不安なくコーナーに入っていける。しっかりとサドルを下げているので、重心移動がスムーズで、停止して足をつくときにもまったく不安がない。シマノ/デオーレの変速操作のスムーズさについては文句のつけようもない。そして、約15.4kgという重量は、走り出してしまえばまったく気にならない。むしろバイク全体の剛性感が心地よく、不安なくトレイルライドを楽しめた。

フロントサスペンション
140mmトラベルのサスペンションに合わせてフレームが設計されている。

高い剛性感と体にやさしい乗り心地を両立。トレイルを思いのままに

ライディングシーン
フレームサイズは、XS、S、M、L、XL。XSのみタイヤサイズが27.5×2.5インチになる。XSは、身長146cmから適応。フレームのみの販売もある。photo by surlybikes

地形の変化をダイレクトに楽しめるハードテールモデルでありながら、エアボリュームの高いタイヤと、剛性と振動吸収性が高度に計算されたクロモリフレームにより、マシンコントロールが楽しく、快適かつ思い通りのラインをトレースできた。今回は、短い距離のトレイルでテストをしたが、いつかは距離が長くテクニカルなダウンヒル系のパークを走ってみたくなった。乗れば乗るほど難しいトレイルにチャレンジしたくなる魔力を秘めたバイクだ。

トランペットチュービング
クロモリ製のチューブの形状を接続部に向かってトランペットの先のように変形させる高度な技術を駆使。高い剛性と上質な乗り心地を両立する。

サーリーの原点はシングルスピードにある

テクニカルな部分では、『DUHドロップアウトシステム』という、サーリーがパーツメーカーのSRAMの協力を得て開発したオリジナルのリアエンドが新採用されている。完成車は、SRAMが提唱するリアハンガーの標準規格『UDHハンガー』に対応。UDH/Full-Mountに対応したギア付き仕様に加えて、別売りの専用パーツに交換することで、簡単にシングルスピード(前後のギアが各1枚で、変速機がない仕様)にもできる。各社のリア変速機に対応し、たとえリアエンドが折れても、その部分だけを交換できるUDH本来の利便性に、シングルスピード化できる機能を加えたところにサーリーのこだわりをみた。UDHをもじったDUHという、ややこしい名前もサーリーらしさか!?

DUHユニット
別売りのDUHユニット。ソーサレスをシングルスピードにするための交換パーツ。photo by surlybikes

ご存知の方も多いと思うが、サーリーの歴史は、ブランド立ち上げ前の1998年にRat Ride 1×1というシングルスピード専用のMTBフレームを作ったところから始まった。その後、サーリーというブランド名が生まれ、多段ギアの自転車を簡単にシングルスピードにするためのシンギュレーターという変換パーツを発売した。その後も、スチームローラーや1×1というシングルスピード専用フレームを販売してきた。2000年代初頭に世界的に巻き起こったシングルスピード・ムーブメントに少なからず影響を与えたブランドなのだ。

これまでもクロスチェックやパグズレイ、カラテモンキーなど、数々の名車にシングルスピード化できる機能を搭載してきた。ガチのトレイルバイクでありながら、シングルスピード化できる機能を盛り込んだことは、サーリーファンからすれば、なんの違和感もないあたりまえのこと。それだけではなく、ソーサレスには、最初からシングルスピード仕様にした完成車をラインナップしているからおもしろい。

ロードバイクや普通のMTBに乗り慣れている人からしたら、シングルスピードなんて馬鹿げた代物だと感じるだろう。しかし、変速機を取り払うことで得られる自由な感覚ったらない。例えるなら、変速のことを考える必要がない、メカトラブルがほとんどない、余計な費用がかからない、などなど。急な上り坂に差しかかったら降りて押せばいいだけ。余計な操作から解放されることで、過ぎ行く景色をうっとりと眺めたり、ほかのことを考える余裕が生まれたりする。同じ自転車でありながら、頭を緩め、感性を潤す効果があるような気がしてならない。

1×1
筆者が所有する2台目のサーリーが、2012年モデルの1×1。ソーサレスにも受け継がれるDNAを持ったシングルスピードMTB。飽きることなく、今もMTBパークで遊んだり、ゆるくシティクルージングを楽しんでいる。

ソーサレスは、最先端のハードテール・トレイルバイクをサーリーが作ったらこうなる。そんなサーリーらしさがプンプンと香るバイクだった。計算されつくしたクロモリフレームの快適な乗り心地と耐久性、クセのないハンドリング、シングルスピードにもできる拡張性、さらにはヘンテコなカラーのネーミングまで、これぞサーリーといわんばかりだ。

サーリーのウェブサイトでは、魔術師が呪術を使って作ったかのようなプロモーションを展開している。ならば、その魔法の正体はなにか。僕は、25年以上に亘りスチールフレームを作り続けてきたサーリーの高度な技術と、脈々と受け継がれてきたシングルスピードの思想なのではないかと思う。

約40万円という価格帯をみると、そこには名だたるメーカーの優れたMTBがいくつもある。軽いものもあれば、フルサスペンションも選択肢に入る。MTBのトレンドをおさえつつ、独創的なアイデアをいくつも取り入れているソーサレスは、ある種マニアックな違いに敏感な人にとっては、かけがえのない1台になるだろう。

サーリー/ソーサレス デオーレ 12

ソーサレス

Specifications

  • フレーム:クロモリスチール
  • カラー:Hot Honey Bling
  • サイズ:XS、S、M、※L、XLは要問合せ
  • サスペンションフォーク:SRサンツアー/Zeron36 140mmストローク
  • シートポスト:TranzX/YSI05 +RAD Dropper Post
  • サドル:WTB/Solano Medium
  • リアディレーラー:シマノ/デオーレ M6100 SGS
  • カセット:シマノ/デオーレ M6100、10-51T、12速
  • クランクセット:シマノ/MT512、32T
  • シフター:シマノ/デオーレ M6100
  • ブレーキレバー:シマノ/デオーレ M4100
  • ブレーキキャリパー:シマノ/MT420、4 piston
  • ローター:シマノ/RT30 前後180mm、センターロック
  • タイヤ:テラベイル/ケッセル 29×2.5インチ(XSは27.5×2.5インチ)
  • 重量:約 15.37kg(Mサイズ)
  • 価格:401,500円(ペダルは別売)
  • 発売元:モトクロスインターナショナル https://ride2rock.jp/
著者画像

山本修二

ライター

東京生まれ、名古屋在住。自転車好きライターとして本誌を中心に東京で活動し、2015年に名古屋へ移住。東海エリアの食とアウトドア環境を満喫中。肩の力を抜いてユルく自転車に乗りたい人のためにまとめた著書『スポーツ自転車でいまこそ走ろう!』(技術評論社)、好評発売中。

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