サーリーから規格外のモンスターバイクが新登場!「月面探査機」と名付けられたファットバイクがおもしろすぎ
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    2024.09.15

    サーリーから規格外のモンスターバイクが新登場!「月面探査機」と名付けられたファットバイクがおもしろすぎ

    サーリーから規格外のモンスターバイクが新登場!「月面探査機」と名付けられたファットバイクがおもしろすぎ
    2004年に世界で初めてファットバイク用の量販リムを発売したアメリカ・ミネソタ州に本拠地を置く「SURLY(サーリー)」。続く2005年には、量販初のファットバイクフレーム「PUGSLEY(パグズレー)」を発売。タイヤ幅3.7インチの極太タイヤによる独特の浮遊感や、雪上や砂地でも走れる踏破性がウケ、世界的なファットバイク・ムーブメントを巻き起こした。

    そんなファットバイクのスペシャリストが、久しぶりにニューモデルを発表。2世代目となる新型「MOONLANDER(ムーンランダー)」の全貌を明かす。

    ファットバイクのスペシャリストが常識を打ち破る新型を発売

    初代「MOONLANDER(ムーンランダー)」は、2011年にデビューした。初代のタイヤサイズは、26×4.8インチ。それまでのファットバイクよりも約1インチ幅が広い、当時としては世界でもっとも太い新型タイヤを装備したことで大きな話題となった。従来の幅4インチクラスのファットバイクでも走れなかったコンディションの悪い雪道や荒れたトレイルを走破できることから、幅4.8インチのタイヤを履いたファットバイクが主役の座に躍り出た。

    ファットバイクの歴史に残る2モデル

    パグズレー

    2005年に発売された世界初の量産ファットバイク・フレーム「パグズレー」。その後、完成車も登場。

    初代ムーンランダー

    2011年に登場した初代「ムーンランダー」。サーリーは、このフレームに合わせた専用サイズのリム、リムテープ、タイヤなどを発売した。

    初代ムーンランダーが生まれたころには、まだ世の中にファットバイク専用設計の幅が広いハブやクランクが存在していなかった。そこでサーリーは、標準的なマウンテンバイク用のパーツを搭載するために、フレームを左右非対称に設計し、パグズレーと初代ムーンランダーの2モデルを完成させた。やがてファットバイク専用のパーツが流通し始めると、サーリーは、「ウエンズデー」「アイスクリームトラック」という新規格(左右ほぼ対称)のファットバイクを発売。パグズレーやムーンランダーの需要は減り、その後、生産が終了した。

    新型ムーンランダーの気になるスペックは?

    新型ムーンランダー

    ほんとうに月面を走れるのではないかと思わせる、新型ムーンランダーの圧倒的な存在感。

    新型ムーンランダーは、ファットバイクの進化の過程で大ブレークした名フレームの後継車種となる。ムーンランダー=月面探査機というネーミングに恥じない、とてつもない存在感のあるデザインに度肝を抜かれた方も多いのでは?

    タイヤサイズは、なんと24×6.2インチ!!

    新型ムーンランダーの最大の特徴は、これまでにない太いタイヤにある。サイズは、24×6.2インチ。サーリーは、フレームのみならず、専用のリムとタイヤを開発して、この新型ファットバイクを完成させた。

    モレンダという新型タイヤ

    新型ムーンランダーのために開発された「モレンダ」。しっかりとしたブロックがあらゆる地面をグリップする。軽量のTPUチューブもオリジナルで生産する。

    新型リム

    「クラウンロイヤル」と名付けられた幅100mmの新型リム。

    フレームに内蔵された内装9段変速

    チェーンライン

    変速機がないシングルスピードのように見えるが、クランク部分にギアボックスが組み込まれている。これだけ太いタイヤを履いて、チェーンがタイヤに干渉しないところがすごい。

    タイヤが太くなればなるほど、リアタイヤとチェーンが干渉しやすくなり、従来の外装変速機では、使えるギアが少なくなってしまう。そこでサーリーは、ドイツの「ピニオン」の協力を得て、専用の9段内装変速機を搭載した。通常の内装ギアは、リアホイールのハブの中に組み込まれることが多いが、この内装変速機はクランク内に組み込まれている。そのため6.2インチという太いタイヤの空気圧を極限まで抜いても、タイヤとチェーンが干渉しないチェーンラインを実現した。

    ドイツの「ピニオン」の内装変速機

    ドイツの「ピニオン」の内装9段変速機を搭載。フレームはもちろん専用設計だ。

    グリップタイプのシフター

    グリップタイプのシフターは、一般的なリア変速機と同じように右手で操作する。

    ただし、内装変速は、ペダルを漕ぐ足を停めないと変速操作ができない。短い距離を試乗したが、コーナーや上り坂に差し掛かったときに、漕ぎながら変速をすることができないのは、ちょっとしたストレスだった。ほかにも、空気圧を低くすればするほど、ハンドリングにクセが出て、勝手にハンドルが切れたり、まっすぐ進むことすら難しくなった。どちらも慣れれば問題ないレベルではあるだろう。

    しかし、そのクセこそが、乗る人をなぜか笑顔にしてしまう圧倒的な魅力ではないかと感じた。そんな並外れた個性をおもしろがれるかが、この自転車を買うか買わないかの分かれ目になる。この感覚は、パグズレーや初代ムーンランダー、ビッグファットダミーに初めて乗ったときに感じたものに近い。久しぶりにサーリーらしいパンチのあるカウンターバイクである。

    タイヤの空気を抜いて、あらゆる地形を走りに行こう

    砂丘を走る

    砂漠や岩場など、従来のファットバイクでも走れなかった場所へ誘う。<写真提供:Surly Bikes>

    ファットバイクのタイヤは、一般的な自転車と比べて極端に低い空気圧にセットする。これまで自分が乗ってきたフィールドでは、デジタルのエアゲージで測定して3~8psi(約0.2~0.54気圧)という範囲の空気圧で調整した。指でタイヤを押すとベコベコに感じるレベル。実際に乗って走っても、タイヤが深く沈みこむ。

    以前、サーリーの開発スタッフに話を聞いた際にも「ファットバイクで10psi入れることはない」と話していた。これはタイヤの弾性を利用して強いトラクションを引き出し、同時に振動吸収性やコーナーリング性能を高めるためだ。

    サーリーは、最初のリムやタイヤを開発する段階から、超低圧で走ることを想定して設計を始めた。数年のテストを繰り返し、リムの発売から遅れること2年、2006年に台湾のタイヤメーカー「INNOVA(イノーバ)」の工場に専用ラインを作り、低圧にした状態で走ってもタイヤがリムから外れない製品を完成させた。

    市販品としては世界初のファットバイク用リムとタイヤ

    サーリーが長い開発期間を経て完成させた超低圧に対応した、量産品としては世界初のファットバイク用タイヤ「エンドモーフ」(2006年)とリム「ラージマージ」(2004年)。これらの製品が歴史を動かした。

    新型ムーンランダーに装着された「モレンダ」というタイヤも、同程度の空気圧で乗ることを想定している。もちろんイノーバ製だ。空気圧を極限まで落として、砂漠、ゴロゴロの岩場、雪原など、これまでのファットバイクが入れなかった世界へ、さらに一歩踏み出せることは間違いない。

    しかし、これだけ太いタイヤとなると、低圧でも相当な空気量を必要とする。ロングライドする際には、手動の空気入れではなく、電動の小型エアポンプを用意すべきだろう。

    砂丘を走る

    接地したタイヤがよじれているのがわかるだろうか?この程度まで空気圧を落としてはじめて、並外れた走破性を生み出せる。<写真提供:Surly Bikes>

    丈夫で乗り心地がいいクロモリスチールフレーム

    フレームは、サーリー・オリジナルの4130ナッチクロモリスチールだ。サーリー全モデルに共通するフレーム自体の振動吸収性の高さは、このバイクにも踏襲されている。

    フレーム

    サーリーは、クロモリスチールフレームの専門ブランドとして、世界一の生産量を誇る。

    撮影したMサイズのホイールベースは1,248mmとある。サーリーがこれまで発売してきたファットバイク「アイスクリームトラック」が1,131mm、ロングテールのファットバイク「ビッグファットダミー」が1,563mmだ。また、「サルササイクルズ」が発売していた「ブラックボロウ」というセミロングテールのファットバイクが1,336mm(※いずれもMサイズ)。タイヤサイズのおかげで、見た目にはかなり長く感じるが、ホイールベースの数字を比べると、そこまで極端に長いわけではないことが分かる。

    真横から見たムーンランダー

    ホイールベースの長さもさることながら、クランクと後輪軸の間隔もかなり長いことがわかる。

    ホイールベースが長く、タイヤが太いことで低速安定性が高くなるので、不整地をゆっくりと踏みしめて前進するときには、その威力を発揮できるだろう。

    拡張性にもぬかりなし。バイクパッキングにも

    そのほか、フレームには、ラックやフェンダーを装着するためのアイレット(ネジ穴)が多数ある。サーリーから発売されているファットバイク用のリアラックが装着できるので、キャンプ旅はもちろん、国内外を問わずアドベンチャーなライドにも使えそうだ。この大きくて重いバイクを、どうやって目的地まで運ぶかが問題ではあるが…。

    フロントフォーク

    フォークの左右には、4連のアイレットがある。一般的な3連のものより1個多いので、市販の3連用小型ラックなどを上下好きな位置にセットできる。

    そのほか、大きな特徴としては、複数のタイヤサイズにコンパチブルできること。オリジナルのタイヤクリアランスは、24×6.2インチ。そのほかに、26 ×5.1インチ、 27.5 ×4.8インチ、29×3インチまでのタイヤを装着できるクリアランスがある。現存するファットバイク用のタイヤとリムを使えば、好みの仕様に組み替えることもできるのだ。

    その存在感は、まさにモンスタートラック級

    重量は軽く20kgを越える。それなりにサイズもあるので、フィールドへ運ぶためには、ワンボックスなどが必要になる。もはや普通のファットバイクが、ファットバイクに見えないほどの圧倒的なサイズ感や、極太のタイヤによる「ブリブリブリ…」という耕運機のような大きな走行音(ほぼ爆音)は、世の中に存在する市販自転車のなかでも屈指の存在感だ。

    自転車版のモンスタートラック。久しぶりにサーリーらしい一台の登場に、心躍らせている人は少なくないのでは?チャンスがあれば、このバイクに相応しいフィールドを走ってレポートしたい。

    前輪

    前後とも197mm幅のリア用ハブを使う。前輪側にもギアを装着しておけば、万が一、リアのフリーが故障してギアがかまなくなっても、前後を入れ替えて走り続けることができる。これは、初代パグズレーから受け継がれるサーリーの伝統のひとつ。

    ブレーキ

    ブレーキは、テクトロの2ピストンディスクを標準装備。価格、車重、用途を考えると、少々チープな印象だ。好みが分かれる部分にはコストをかけず、「購入した人が好きに交換してね」というメッセージだろう。

    ドロッパーシートポスト

    乗車したまま手元のレバー操作でサドルの高さを変えられるドロッパーシートポストを装備。これはありがたい。

    ◎商品情報

    サーリー/ムーンランダー

    • 価格(完成車):726,000円
    • サイズ:S、M、L、XL
    • カラー:ルナーダストグレー
    • フレーム/フォーク:4130クロモリダブルバテッド
    • 変速機:ピニオンC1.9 XR  9段内装変速
    • タイヤ:サーリー/モレンダ24×6.2インチ(60tpiチューブレスレディ)
    • ハンドル:サーリー/ターミナル
    • ブレーキ:テクトロ/HD-M285(2ピストン油圧)
    • シートポスト:トランスX/YSP15JLドロッパー
    • 輸入元:モトクロスインターナショナル
    • ホームページ:http://ride2rock.jp/
    • 商品情報(本国サイト):https://surlybikes.com/bikes/moonlander-v2
    私が書きました!
    フリーランスライター
    山本修二
    東京生まれ、名古屋在住。自転車好きライターとして本誌を中心に東京で活動し、2015年に名古屋へ移住。東海エリアの食とアウトドア環境を満喫中。肩の力を抜いてユルく自転車に乗りたい人のためにまとめた著書『スポーツ自転車でいまこそ走ろう!』(技術評論社)、好評発売中。http://yamabon.jp

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