え、アンモナイトって、あのアンモナイトですよね…?本当にそんな簡単に発掘できるものなの?
化石ってどんなところで採れるの?
赤茶けた荒地だけじゃない!こんなところでも化石が採れる
「化石発掘」というと、太陽照りつく赤茶けた荒地で作業しているイメージがありますが、実はそういう場所ばかりではありません。例えば白亜紀前期の恐竜が見つかった福井県の北谷層は山の中だし、北海道夕張市では炭鉱の中で新生代のシダ植物など植物の化石が見つかっています。
荒地のような植物で覆われていない場所だと、地層が露出して化石が見つけやすいという点があります。でも実際には山の中や海岸線の崖、炭鉱現場などさまざまなところで化石を見つけることができます。
小学生の頃、校外学習で化石堀りをしたのですが、そこは海沿いにある山の斜面でした。山の土から貝殻が出てくるとこと、それが遠い昔に存在してた生命だということがとても衝撃的で、見つけた巻き貝の化石は綿を詰めた箱に入れてしまっていた思い出。そこは海底の地層が地殻変動による隆起で山となった場所でした。
さて、今回私がやってきたのはドイツ南部のオームデンという町。シュトゥットガルトから車で約40分のところにあります。
ここはかつて建材などに使われる黒色頁岩の採石地でした。その過程で化石が見つかったという歴史があります。黒色頁岩とは海底に堆積した泥が固まってできた、黒っぽい堆積岩。今では海岸線から約200kmも離れた内陸ですが、大昔にはここも海底だったというわけなんですね。
時代でいうと約1億8000万年前のジュラ紀にあたります。酸素が少ない環境のため、生物の遺骸が分解されにくく、保存状態が良い化石が多く発掘されてきました。
私たちはまず、URWELT-MUSEUM HAUFF(ハウフ古生物学博物館)に行き、オームデン周辺の地質や、ここで発掘された世界最大級のウミユリ化石などを見学しました。この地域の地層がどのようにできたのかを体感できる、とてもわかりやすい展示がたくさんありおすすめです!
しかもこの博物館は個人による私設博物館で、ベルンハルト・ハウフ氏によって1936年に作られ、その後親子4代にわたって運営されているとか。美しい大型の化石が並び、とても見ごたえがありました。化石発掘の前にはぜひ立ち寄ってみてください。
その後、そこから車で5分ほどのところにあるSchieferbruch Kromer(クローマー採石場)へ向かいました。


掘るのではない、境目を見つけるのだ
クローマー採石場に到着。ここでは入場料(大人4ユーロ、子ども2.5ユーロ)を支払うと、後は好きなだけ化石を掘っていいとのこと。時間制限もなく、見つけた化石は持ち帰りOK。
道具のレンタルもあるので、手ぶらでも楽しめます。道具はハンマーとノミのセットで1.5ユーロ。どちらか片方の場合は1ユーロです。入場料もですが、めちゃくちゃお手頃価格!

入口、といっても簡易な小屋があるだけですが、そこで入場料を払ってさっそく場内へ。かなり広い河原のような場所です。
足元には灰色の石がたくさん。でも丸い石ころではなく、よく見ると層状のかたまりのような石。場内の端の方に行くと、土の斜面に薄い石がたくさん埋まりこんでいました。

さてここでは、土を掘っていくのではなく、石を割って化石を探していきます。この黒色頁岩、泥が堆積してできた石ですが、側面をよく見ると「境目」があるんです。そこにノミを当ててハンマーで叩くと、層が剥がれるように石を割ることができます。実際にやってみると…。


おぉー!!本当にアンモナイトだ!最初はやみくもに手近な石を割っていましたが、だんだんと見る目ができてくるといいますか、「あ、このあたりにありそうだな」とか、「ここはきれいに剥がれそう」というコツが掴めてきます。

大小さまざまなサイズのアンモナイトがどんどん見つかりました。他にも現在のイカに近い仲間のベレムナイト、二枚貝、流木らしき化石たちも。
この周辺の地層はポシドニア層といいますが、その名前の由来となったポシドニアとよばれる、うちわのように丸い二枚貝もたくさんありました。



場所を変えてみると、大きな石もありました。これも慎重にノミを当ててハンマーを打ち込んでいきます。


不思議なことに、内陸の石の山の中にいるのに、私の頭の中は海の光景が広がっていました。シュノーケリングをしている時に見た、光が差し込む浅い海のことを思い出していたんです。「ここは水の力でいろんなものが集まってた吹き溜まりみたいな場所だったのかな」ということが、容易にイメージできました。
たとえばこの石の断面を見てください。くっきり二層に分かれています。海底の泥と、その上に波に寄せ集められてきた細かい貝殻や流木たちといった、太古の浅瀬の光景がここに閉じ込められているようでした。

海を漂っていたアンモナイトが命を終えて泥の中に沈んでいき、そこからどれだけの時間と地殻の動きを通して、今ここにあるんでしょうか。ちょっと変な話ですが、自分も土の中で延々と時間をかけて世界中を旅できたらおもしろそう!とも思いました。
そして遠い未来の誰かに拾い上げてもらったらいいなぁ。その時は地球のどこにたどり着いているでしょうね。
黄金に輝くアンモナイトの謎
さて石を開けていくと、灰色っぽい化石と金色に輝いているような化石があることがわかりました。もしやレアアイテム?と思ったものの、実はこういった金色の化石は珍しいものではないそう。その正体は「黄鉄鉱」という鉱物です。
海底のように酸素が少なく、硫黄と鉄が豊富な環境では、硫化水素と鉄が反応して黄鉄鉱が形成されます。これが生物の表面を覆ったり、組織が置き換わったりすることで、金色に輝く化石ができあがるのです。
ただ調べてみると、オームデンではそれに関する新しい発見が最近ありました。2023年の研究結果によると、オームデンの化石の場合、金色の正体は黄鉄鉱ではなく、主にリン酸塩鉱物であることがわかったのです。この化石化の過程では、リン酸塩鉱物が形成されるために、酸素も必要であった可能性があるとのこと。
これまでオームデンの地層は、酸素が少ないから化石の保存状態が良いと考えられていました。でも実際には酸素も必要だったのではないかということを示唆する研究結果だそうです。生物が化石になる過程は、まだまだ新しい発見がありそうですね。


戦利品を一挙公開!
さて、多くの化石をゲットしたわけですが、この中から持ち帰る化石を選ぶというのもなかなか至難の業でした。あれもこれも持って帰りたい!と思うけど、要は石のかたまりなのでそれなりに重いわけです。
形がはっきり残っているものなどを選び、それでも大きな袋いっぱいに入れて持ち帰りました。私たちは車で旅行中でしたが、日本から来る場合は帰りの荷物の重さに要注意です!
場内には仮設トイレはありますが、売店はありません。おやつや飲み物は事前に購入してから行くことをおすすめします。また石を割る際のかけらが小さく鋭利なので、作業手袋の持参をお勧めします。

帰宅し、改めて採集した化石を広げてみました。アンモナイトばかりと思っていたけれど、他にもさまざまな化石がありました。どれも気が遠くなるくらいの太古に、本当にこの地球に生きていたんだよなぁ。長い地球の歴史に思いを馳せるひとときとなりました。
好きなだけじっくりと化石を探せる、オームデンの化石堀り。そして、誰でも確実にアンモナイトを見つけることができるというのがすごい!化石好きの方にぜひおすすめしたいスポットです。




※記事内の写真は全て筆者撮影。ハウフ古生物博物館内の写真は施設に許可を得て撮影しています。
URWELT-MUSEUM HAUFF(ハウフ古生物学博物館)
https://www.urweltmuseum.de/
Schieferbruch Kromer(クローマー採石場)
https://www.schieferbruch-kromer.de/
参照サイト
What role does anoxia play in exceptional fossil preservation? Lessons from the taphonomy of the Posidonia Shale (Germany)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0012825223000120
“Golden” fossils reveal origins of exceptional preservation
https://www.newswise.com/articles/golden-fossils-show-exceptional-preservation-origins




