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「生涯を添い遂げるマグ」とは

2017年から「ワイヤードビーンズ」が展開する日本各地の職人が同一のデザインでマグをつくるという「生涯を添い遂げるマグ」シリーズが、10周年を迎えました。生涯使い続けたくなる飽きのこないデザインを考案し、『職人とお客様をつなぐ』という理念のもと、全国の職人さんたちの技を駆使し、美しさと実用性を併せ持つ器を生み出しています。単なる器ではなく、伝統工芸を次世代につなぎ、ハンドメイドならではのアーティストのマグが、大切な人へのギフトや自分自身へのご褒美として、長く日常に寄り添い続けることを願ってつくられています。

10周年を迎えた発表会では、現時点での日本各地の窯元でつくられたマグが展示されていました。「GKインダストリアルデザイン」がデザインを手掛けたマグは、シンプルでありながら、窯元によって全く違ったマグのように表情豊かでした。同じデザインで、違った窯元の器を見るということがなかったこともあり、それぞれの窯元の特徴を改めて楽しむことができると感じました。現在、47都道府県のうち44都府県との協業が進み、全国網羅が目前です。ただ、焼き物の器ということは、生涯使い続けるということに対して疑問が残ります。残念なことに、うっかり割ってしまうこともあるからです。実は、そこに職人さんとユーザーをつなぐ仕掛けがありました。それが、生涯補償制度です。破損してしまった場合、新しい製品と交換することができるという制度です。マグには、補償書が同梱され、シリアルナンバーがついています。破損してしまったマグと補償書を送ることで、交換ができ、初回は送料のみで交換できます。2回目以降は、製品交換手数料(金額は付属の補償書に記載あり)と送料、代引き手数料がかかります。製品によって多少価格は異なりますが、筆者のマグの場合、3,000円でした。破損時に新品と交換するという制度は、職人が「つくり続けること」と、生活者が「つかい続けること」の循環を実現するための制度です。ひとつひとつ職人さんのハンドメイドということで、技術の継承が行なわれるのですね。
なんだかいいことばかりのようですが、ここまでの道のりは、平坦ではなかったようです。
「それぞれの窯元の職人さんたちは、クリエイターでもあります。なぜ、同じデザインのマグをつくらなければいけないのかと、なかなか窯元さんたちとの協業が進まない時期もありました。」(ワイヤードビーンズ代表取締役 三輪寛さん)
こだわってものづくりをしている職人さんだからこその反応とも言えますが、取り組みについて理解してもらい、今では全国へと広がっています。
思い出を継続してもらうために
同じものを使い続けることにこだわるのには、三輪さんのある体験がありました。
「成人したときに、父からロックグラスをもらいました。大人になったから、一緒に飲もうという意味も込められていたのかもしれません。大切に使っていましたが、割れてしまったんです。落ち込んでいたら、もうひとつ、同じグラスがあったんです。すっかり忘れていたのですが、ペアでプレゼントしてもらっていたんですね。形あるものは、いつか壊れてしまうのですが、ただのモノではなく思い出が詰まっています。その思い出を継続してもらいたいという思いから、生涯補償を考えました。」(三輪さん)
そのモノに宿った思いをつなぐための取り組みでもあるのですね。

また、生涯補償を通して回収したマグと、能登半島地震の被災地から回収された能登瓦を使用した再生陶器のマグもありました。滋賀県の「菱三陶園」による独自の薪ハイブリッド窯でつくられています。通常の窯が、100%の安定を目指すのに対して、90%安定に10%のゆらぎ(奇跡)をあえて加えるために設計しているとのこと。画一的なリサイクル製品として均一に焼き上げたくなかったという菱三陶園の5代目当主・小川公男さんのこだわりだそう。手仕事だからこそ、ゆらぎやそのときどきの出会いを楽しむことができます。
次なる10年に向けて10周年プロジェクトがスタート

人とモノとの地域の関係性も再定義する生涯補償制度。10周年をひとつの節目として、新たな一歩がスタートしました。それは、日常を彩るアートの可能性を追求するというもの。国内外で活躍する4名のクリエイターを迎え、マグカップというキャンバスに、それぞれの世界観を表現したマグが登場しました。第1弾として、2026年5月16日に登場したのが、ファッションデザイナーの丸山敬太さんが手掛けた2モデルです。

花柄が印象的な「PSYCHEDELIC FLOWER」と、ブルーが基調の「SWEET MEMORIES」です。全く違った印象で、手にとるたびにワクワクしそうなマグカップです。筆者は、高校生のころから「KEITA MARUYAMA」のファンでもあるため、生涯添い遂げてくれると思うと、うれしくなりました。

今回のコラボについて、三輪さんと丸山敬太さんのトークセッションも行なわれました。中でも、印象的だったのが、
「今が職人さんと若者をつなぐラストチャンスだと感じています。」という丸山敬太さんの言葉です。伝承するには、時間がかかるため、引退してしまう前に、次世代へとつないでいきたいという思いは、どの業界でも同じようです。
「ファッションは、人生を彩るために必要なものだと感じています。心が躍るものは、服だけではありません。マグカップもとてもパーソナルなものです。生涯補償がよりパーソナル感を伝えてくれると思います。」(丸山敬太さん)
「真似をする人が出てきてもいいと思っています。この活動をもっと加速して、地域活性化につなげたいです。」(三輪さん)
手仕事のぬくもりとつながりを大切にしているという思いが伝わってきました。
「生涯を添い遂げるマグ」は、厳密には一生ものではなく、破損してしまったときに新しいものと交換できるというシステムです。ただ、お気に入りだけれど、割ってしまうのが不安でしまい込んで使わないというのは、道具としての本来の機能を果たしていないことになります。思い入れがあるからこそ、毎日、手にとり、使ってほしいとの思いが込められたマグ。キャンプに陶器を持っていくことはレアケースかもしれませんが、このマグでお気に入りのコーヒーを飲んでみたら、また違った気分を味わえるかもしれませんね。
ワイヤードビーンズ
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