「アイスエイジ・トレイル」への準備!面倒だけどおろそかにはできない出発前の下調べ | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

山・ハイキング・クライミング

2026.06.05

「アイスエイジ・トレイル」への準備!面倒だけどおろそかにはできない出発前の下調べ

「アイスエイジ・トレイル」への準備!面倒だけどおろそかにはできない出発前の下調べ
アメリカには連邦政府によって認定されたトレイルが複数あり、そのうち「ナショナル・シーニック・トレイル」が全11ルートあります。プロハイカーの斉藤正史さんは、総距離が約17,800マイル(約28,646km)におよぶ11ルートのシーニック・トレイル全踏破に挑戦中です。

2025年秋、斉藤さんはアメリカ東北部のウィスコンシン州にある「アイスエイジ・トレイル」に挑みました。その1,200マイル(1,900km)のアイスエイジ・トレイルに挑戦した様子を、斉藤さん自身によるレポートで紹介します。
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【プロハイカー・斉藤正史の「アイスエイジ・トレイル」レポート」vol.3】

■前回はこちら

アメリカ・ウィスコンシン州にある「アイスエイジ・トレイル」ってどんなとこ? | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

ロングトレイルで現地調達という考え方は危険です

初回のvol.1で、なぜ2025年秋にアイスエイジ・トレイルを歩くのか、理由を述べました。前回のvol.2では、そのアイスエイジ・トレイルや舞台となるウィスコンシン州がどういうところなのか、出発前に調べた内容を記しました。もう少しだけ、下調べや準備について書きます。

何ごともそうですが、特にアウトドアの場合は事前の準備や下調べをおろそかにできません。ただ単にそのアウトドア・アクティビティを楽しめなくなるだけでなく、命に関わることもあるからです。

僕がチャレンジしているアメリカでのロングトレイルでは、1,000km以上の距離を数カ月かけて踏破します。例えば、アメリカだったらたいていの街にスーパーマーケットやコンビニがあるから食料の用意はだいたいでOKでしょ、などと考える人もいるかもしれません。

でも、ロングトレイルのコース上には、近くの街まで公共交通機関がなく、歩いて3、4日かかる場所もたくさんあります。だから、食料でも装備でも「現地調達でも大丈夫でしょ」という考えは、かなり危険なのです。実際、2024年に歩いたニューイングランド・トレイルでは、山火事の影響もあって飲み水の確保にとても苦労しました。

給水ポイントが少なく、ハードな道のりが続いたニューイングランド・トレイル。

しかも、vol.1でも詳述しましたが、僕は限られた予算でロングトレイルに挑戦しています。下調べがいい加減でアメリカ滞在が1週間ほど延びるなんてことになると、たちまち財政難に陥ります。身寄りがいないどころか人家もないアメリカの荒野で、文字通り身動きが取れない事態になりかねないのです。

公式サイト、クレジット決済できません

例えば、三大トレイルのひとつであるアパラチアン・トレイルなどは人気があり、日本でも幅広い情報を入手可能です。でも、そうではないロングトレイルとなると、情報収集のハードルがぐっと高くなることもあります。

公式サイトのはずなのに情報が乏しかったり、マップが不正確だったり…。以前、トレイルのルートが途切れ途切れのマップしか見当たらなかったので問い合わせたら、「事務局でも正確には把握していない」と正直過ぎる(?)返答をいただいたことがありました…。

その点では、僕が2025年に挑むアイスエイジ・トレイルの公式サイトはきちんとしていました。アメリカに渡る前に計画を立てるのに十分な情報が掲載されているし、見たところマップのルートも正確そうです。

こうしたネット経由の情報とともに、僕には事前に入手したいものがありました。それが、紙に印刷されたガイドブックと地図です。

計画段階でもトレイル中でも、インターネットやアプリなどに頼るし、大いに助けられます。でも、それだけでなく、紙のガイドブックと地図も不可欠なのです。必要な部分の情報にさっと目を通したり、ルートを俯瞰して先々の道のりを確認したり。時代遅れといわれたらそれまでですが、アナログな媒体でしか得られない安心感があるのです。

アイスエイジ・トレイルの場合、公式サイトでガイドブックも地図も販売していました。それぞれ20ドル以上なので、円安の現在、けっして安い買い物ではありませんが、背に腹はかえられません。そう思ったのですが、結論からいうと購入できませんでした。公式サイト上でクレジットカード決済ができなかったのです。

ただし、何でクレジットカードが使えないのかメールで問い合わせたところ、公式サイト側からある申し出がありました。紙のガイドブックや地図を購入すると、同じ内容の電子版も付録でついてきます。その付録の電子版を事前に送ってあげるといってくれたのです。その代わり、実際にトレイルを歩く際に事務局に顔を出し、紙のガイドブックと地図を買ってね、という話でした。

あとから冷静に考えると、サイト上でクレジットカード決済ができないし、紙のガイドブックは入手できないしで、あまり喜べる状況ではなかったのかもしれません。でも、アイスエイジ・トレイル側の対応に誠実さが感じられ、うれしかったのです。アイスエイジ・トレイルを歩こうという決断は間違いではないし、待ってろウィスコンシン州!という気分になったのでした。

結局、ほぼ歩き終わるころに現地で入手した紙のガイドブックと地図。

ちなみに、実際にトレイルを歩く際には、2023年にニューイングランド・トレイルを歩いた際に他のハイカーから教わった「FarOut」というアプリも活用します。単なる地図アプリではなく、知りたい場所のことが写真でも簡単にチェックできたりして、トレイルを歩く際にとても重宝しました。

FarOutは有料アプリですが、売り上げの一部がアイスエイジ・トレイルなどに寄付される点も良いなと思っています。とはいえ、紙の地図がないと、過剰にデジタル情報に頼ることになり、結果的にスマホのバッテリーという不安を抱えることになりますが…。

FarOut https://faroutguides.com/

西と東、どっちから歩く?

アイスエイジ・トレイルの西の起点は、ミネソタ州ミネアポリスからほど近いセント・クロア・フォールズ。一方の東の起点は、ミシガン湖に面したスタージョン・ベイという街の近くです。どちらがスタートで、どちらがゴールということではありません。いずれもターミナス(トレイルの起点)で、東西のどちらから歩き始めてもOKです。

どちらのターミナスとも、その街までの公共交通機関はなさそうです。なるべく近くまで行き、あとは歩いてターミナスにアクセスするしかありません。

次に、両ターミナスの緯度を調べます。僕は9月中旬にスタートし、11月中旬にゴールする予定です。少しでも緯度が低い方が、ゴール間近の11月でも多少は寒さが厳しくないのではと考えてのことです。そこで、やや緯度が高いセント・クロア・フォールズから歩き始め、東を目指すことにしました。あとから知ったのですが、僕とは逆に、アイスエイジ・トレイルは東から西に歩く人が多いそうです。なぜなんだろう…?

日ごとに寒さを増す紅葉の時期に歩きました。

ブーツの交代要員はいつ、どこへ?

海外でロングトレイルに挑むにあたり、いつも頭を悩ませる事前準備があります。それが、替えのブーツの用意の問題です。

経験上、1,200kmほど歩くと、たいていソールが大きなダメージを負ったりアッパーが切れたりしてきます。アイスエイジ・トレイルは1,900kmの道のりなので、間違いなくブーツ交換が必要です。だからといって、重くてかさばるブーツを歩き始めから持ち歩くのは、できれば避けたいところです。

現地調達もできないわけではありません。でも、円安の現在は日本で購入するより割高になる可能性もあるし、現地のショップで確実にジャストサイズのブーツが見つかると限りません。何より、アイスエイジ・トレイルはそれほど大きな街を通らないので、アウトドア・ショップがあるかどうかも不安です。

アイスエイジ・トレイルで履いたのは、キャラバンの「C1_02S」というトレッキングシューズ。

僕がよく使う手は、郵便局留めです。アメリカの郵便局留めの期限は、地域によってまちまちですが、だいたい3週間ほど。あまり早くに送ると、しばらく重いブーツを荷物として持ち歩くことになってしまいます。そこで、確実に立ち寄れる郵便局で、なるべく遅く受け取れるように、日本からブーツを送る必要があるのです。

実際に郵便局留めでブーツを送る際に同梱したメモ。到着予定などを記しています。

こうして書いてみても、面倒なことをしているなと感じます。でも、倹約しつつロングトレイルを着実に踏破するために欠かせない作業の一つなのです。

僕がアメリカ政府が認定したナショナル・シーニック・トレイルに挑むのは、アイスエイジ・トレイルが7番目。アメリカ以外の国でも、ロングトレイルを歩いてきました。いい加減、渡航前の下準備などルーティン化してスイスイできても良さそうなものです。

でも、いつも初めてかのように「どうすればいいんだ?」という事態が頻発します。今回も結局、出発直前までバタバタしっぱなしでした。情けない…。

著者画像

斉藤正史さん

プロハイカー

2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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