アイスエイジ・トレイル、地元の人が整備する気持ちの良い道を歩く | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

山・ハイキング・クライミング

2026.06.27

アイスエイジ・トレイル、地元の人が整備する気持ちの良い道を歩く

アイスエイジ・トレイル、地元の人が整備する気持ちの良い道を歩く
アメリカには連邦政府によって認定されたトレイルが複数あり、そのうち「ナショナル・シーニック・トレイル」が全11ルートあります。プロハイカーの斉藤正史さんは、総距離が約17,800マイル(約28,646km)におよぶ11ルートのシーニック・トレイル全踏破に挑戦中です。

2025年秋、斉藤さんはアメリカ東北部のウィスコンシン州にある「アイスエイジ・トレイル」に挑みました。その1,200マイル(1,900km)のアイスエイジ・トレイルに挑戦した様子を、斉藤さん自身によるレポートで紹介します。
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【プロハイカー・斉藤正史の「アイスエイジ・トレイル」レポート」vol.9】

■前回はこちら

アイスエイジ・トレイル3日目。どんな道でも、どんな体調でも、ロングトレイルを歩きます | 山・ハイキング・クライミング 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

Ice Age Trail DAY3:2025年9月14日

快適な道のり、心地よい陽気

アイスエイジ・トレイルは、基本的に氷河で削られた大地を通っています。ヒル(丘)が多く連なっていて、その丘の上までの道が直登になっているケースが多い印象です。この連なった丘を直登していると、約20年前に歩いたアパラチアン・トレイルを思い出しました。

アパラチア山脈を通るアパラチアン・トレイルですが、特にバージニア州エリアには丘がたくさんあります。もともとの地形を生かし、なだらかな丘を利用してつくられた牧場をいくつも目にしました。どことなくですが、アイスエイジ・トレイルにも共通する雰囲気を感じるのです。

アイスエイジ・トレイルは、アップダウンはきつくありません。

アイスエイジ・トレイルのあるウィスコンシン州は緯度が高く、北海道とほぼ同じです。今のところ、日中の日なたの気温はだいたい25度くらい。歩いていると、軽く汗ばむような陽気です。

ただし、日陰は涼しいというか、風が吹くと寒さを感じるほどです。天気予報をチェックする限りでは9月いっぱいは同程度の気温が続きそうですが、朝晩の寒暖差は徐々に大きくなるのかもしれません。

少しずつ木々が色づきはじめています。

心配なバッテリー、不安な飲み水

僕はここ数年、ロングトレイルを歩く際はスマホを2台持ちしています。1台は電話・SNS用として、もう1台はカメラのサブ機用として使用します(別途コンデジも持っています)。さらにモバイルバッテリーも持ち歩き、最長で6〜7日間はスマホを使用できる見通しです。場合によっては1週間近く市街地を通らずにトレイルを歩くケースもあるので、いろいろ勘案して上記のようなスマホの使い方をしているのです。

今回のアイスエイジ・トレイルでは、事前に紙の地図を入手できませんでした(詳しい経緯はvol.3参照)。個人的に紙の地図の方がなじみがあるということもあるし、過剰にスマホに頼らずに済むという利点もあります。

でも、今回は紙の地図に頼れないので、ちょくちょくスマホでマップを確認しています。案の定、スマホのバッテリーが順調に(?)に減っていきます。まだ、歩き始めて3日目ですが、何か対策を講じた方がいいのかもしれません。

また、2024年にニューイングランド・トレイルを歩いた際は、山の火事の影響もあって給水ポイントが少なく、水の確保にとても苦労しました(参照:https://www.bepal.net/archives/541856)。

この連載を読んでいただいている方ならお分かりのように、アイスエイジ・トレイルはアメリカの五大湖の近くにあり、ルートの多くが水辺を通ります。でも、すぐそばに川や湖があるからといって、簡単に飲み水が確保できるとは限りません。まだスタート3日目ですが、浄水を補給できるポイントはそれほど多くないようです。

湖や川など「水」は豊富にあるのですが。

僕の場合、飲み水以外に就寝前のルーティンでも水を必要とします。別に、1日の終りにシャワーを浴びるわけではありません。ただし、水に浸した手ぬぐいで体を拭わないことには、どうにも寝付きが良くないのです。潔癖症ではないのですが…。

また、先述のニューイングランド・トレイル以外でも、飲み水の確保に苦労した経験が何度もあります。そのため、少しぐらい荷物が重くなったとしても、多めに飲み水をキープしておかないとどうにも不安になるのです。アイスエイジ・トレイルの場合は、わりと市街地に近い場所を通るので、スマホのバッテリーも飲み水もそこまで深刻に悩まなくても大丈夫だと思いますが…。

公園の水飲み場。大事な給水ポイントです。

ハイカーとして守るべきこと

市街地の近くを通るということは、それだけ私有地との遭遇率が高いことを意味します。また、僕がスタートを切ったアイスエイジ・トレイルの西側エリアには、自然保護区がたくさんあります。私有地も自然保護区も、基本的にテント泊はNGです。

そこで、フェイスブックにあるトレイルのコミュニティやアプリの投稿欄などをチェックして、他のハイカーが過去にテントを張ったポイントを参照します。でも、実際に目当ての場所まで足を運んでみたら、明らかにテントを張れない場所だったこともあります。過去のトレイルでも、目論見が外れ、テントを広げられないまま右往左往したことが一度ならずありました。

だからといって開き直って(あるいはこっそりと)、テントを張ってしまうことは許されません。違反行為が発覚した場合、僕一人が怒られて済む話ではないからです。私有地の場合は、あくまでも所有者の方の好意でトレイルとしての利用が許可されています。もし違反行為によってトレイルの利用が不可となったら、他のハイカーにもトレイルの整備に尽力しているボランティアの方々にも申し訳が立ちません。

ロングトレイルのガイドブックや案内板などでよく目にする「Leave No Trace」という言葉があります。「足跡を残さない」という意味合いで、自然保護の観点から提示されている言葉です。それに加え、他のハイカーに迷惑をかけない、トレイル文化を損なうようなことはしない、という戒めでもあると思っています。トレイルに限ったことではありませんが、「恥ずかしいことはしない」ということです。

「Leave No Trace」を呼びかける看板(写真は2024年に歩いたニューイングランド・トレイルで見かけたもの)。

いくつもの条件を満たした最高の道のり

3日目のこの日に通過したのは、ストレートレイクというエリアでした。苦にならない程度のアップダウンが続いて歩きやすく、紅葉もきれいです。原生林に近い広大なオーク(ナラ)林を通り抜けた際には、キノコ狩りをしているおじいさんを見かけました。個人的にすごく好きな雰囲気の森です。

トレイルには、1日だけ歩くデイハイクという楽しみ方もあります。ストレートレイクは、ミネアポリスからクルマで2時間半ほどの場所です。初心者にも歩きやすいエリアだと思うので、ミネアポリス近辺に来る機会があったら、ぜひ立ち寄ってみてください。

フカフカで歩きやすい落ち葉の道。

この日は歩いている途中で、3人のご高齢の方がトレイルの整備をしている場面にも行き合いました。思わず足を止め、「ありがとうございます」と頭を下げます。

アイスエイジ・トレイルは総距離1,200マイル(1,900km)です。冷静に考えたら、これだけの長距離ルートを日々メンテナンスするにはかなりの労力を要します。ボランティアの皆さんのおかげで、僕らハイカーはトレイルを楽しめていることをしっかり心に刻まなければなりません。

通過してから顔写真を撮り忘れていることに気づき、慌てて写したボランティアの方のトラック。感謝!

この日は、仕事で日本に滞在していたことがあるというおじさんにも遭遇。励ましの言葉とともにペットボトル入りの水をいただきました。ありがたい。

ただ、3日目はあまり人に会いませんでした。僕は人見知りというか、初対面の人といろいろ気を使いながら言葉を交わすことが苦手です。気疲れしてしまうので、トレイル中に出会う人は多くても1日に2、3人で十分。誰とも会わなくても、寂しさなどはまったく感じません。そういった意味でも、この日歩いたストレートレイクというエリアは人口密度が低く、快適でした。

著者画像

斉藤正史さん

プロハイカー

2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載。

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