2025年秋、斉藤さんはアメリカ東北部のウィスコンシン州にある「アイスエイジ・トレイル」に挑みました。その1,200マイル(1,900km)のアイスエイジ・トレイルに挑戦した様子を、斉藤さん自身によるレポートで紹介します。
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【プロハイカー・斉藤正史の「アイスエイジ・トレイル」レポート」vol.1】
シーニック・トレイルって?
僕は、アメリカのナショナル・シーニック・トレイルの全踏破を目標にしています——。そう話すと、アウトドアに興味を持っている人や山登りなどに親しんでいる人でも、たいてい「ん?」となります。
アメリカでは1968年にトレイルに関する法律が制定され、それ以降、連邦政府によってトレイルが指定されるようになりました。アメリカ連邦政府が指定するトレイルは、National Historic Trail(歴史トレイル)、National Scenic Trail(景観トレイル)などに大別されます。
このうち、長距離の徒歩ルートとして指定・整備されているのは、主にナショナル・シーニック・トレイルです。アメリカのロングトレイルとしてよく名前があがるアパラチアン・トレイル(AT)やパシフィック・クレスト・トレイル(PCT)も、ナショナル・シーニック・トレイルとして指定されています。

法律が制定されてからの約60年間でナショナル・シーニック・トレイルに指定されたのは11ルート。その総距離は約28,000kmにおよびます。参考までにいうと、赤道上の地球の外周は約40,000km。とてつもない距離のトレイルが徒歩ルートとして指定・整備されていることが多少はご理解いただけたでしょうか。
つまり、僕の目標であるアメリカのナショナル・シーニック・トレイルの全踏破とは、30,000km近い距離を自らの足で歩こうという計画なのです。「ん?」となるのも当然なのかもしれません…。

出典「National Trails System Map – courtesy of National Park Service」
National Trails Guide https://test2.nationaltrailsguide.com/wp-content/uploads/2017/05/National_Trails_map_BB4.jpg
いつ悩ましい、トレイル選び
僕はアパラチアン・トレイル約3,500kmを踏破したのを皮切りに、毎年のようにナショナル・シーニック・トレイルに挑んできました。2023年にはニューイングランド・トレイルに挑んだものの、コロナ・ウィルスによって途中で断念。そこで、2024年にはニューイングランド・トレイルの残りを歩き切るとともに、ポトマックヘリテージ・トレイルも踏破しました。
ニューイングランド・トレイルやポトマックヘリテージ・トレイルに挑んだ様子は、こちらを参照してください。

ポトマックヘリテージ・トレイルは、僕にとって6番目のナショナル・シーニック・トレイルでした。さて、7番目となる2025年は、どこを歩こうか…。
これが、とても悩ましい問題でした。残りのナショナル・シーニック・トレイルは下記の5つです。
- アイスエイジ・トレイル(IAT)
- パシフィック・ノースウエスト・トレイル(PNT)
- ノースカントリー・トレイル(NCT)
- フロリダ・トレイル(FT)
- ナチェズ・トレース・トレイル(NST)
このうち、NSTは複数の短いルートで構成され、どのルートを通るかで長さは前後するものの、総距離は約740kmといわれています。ナショナル・シーニック・トレイルとしてはかなり短く、後回しにしようと考えていました。
その他のトレイルの距離は、IATが約1,900km、PNTも約1,900km、NCTは約7,700km、FTは約2,400km。いずれも日本で調べられる情報は限りがあるので正確なところは微妙ですが、それでも長距離であることに変わりありません。
次に挑むナショナル・シーニック・トレイルの選定を難しくしている理由は、主に2つあります。1つ目は、費用の問題です。いうまでもなく、ここ数年は円安が続いています。超長距離のロングトレイルを歩く→アメリカの滞在日数が長引く→滞在費が膨れ上がる、という問題が起きます。
では、それほど距離の長くないNSTはというと、これには2つ目の理由が関係してきます。ありがたいことに、ここ数年はイベントや執筆などが忙しく、体力づくりのトレーニングになかなか時間をさけません。イベントなども収入を得るための大事な仕事なので、痛しかゆしです。しかも、当然ですが年々体力は下降線をたどっています。なので、NSTは後回しにし、少しでも体力があるうちに超長距離トレイルに挑む必要があるのです。
また、現在のアメリカでは長期滞在のビザ取得のハードルが高いという問題もあります。3カ月滞在のビザなら取得はそれほど難しくありませんが、その期間に歩ける距離となると必然的に挑戦可能なナショナル・シーニック・トレイルは絞られてきます。

悩ましい…などといったものの、シビアな現実のもろもろを考え合わせると、今の僕が挑めるのはIATかPNTだけです。この2のトレイルはほぼ同じ距離ですが、山岳地帯を通るPNTはアップダウンがあるので1日に歩ける距離は短くなることが予想されます。しかも、山の天候や気温を考えると装備も増えそうです。
ということで、2025年はIAT=アイスエイジ・トレイルを歩くことにしました。いろいろグチやボヤキのようなことを漏らして申し訳ありませんが、最後にもう一度だけ。早くおさまれ、円安!




