海外の山遊び王国、チリでびしょ濡れ「ラフティング」体験! | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.12.22

    海外の山遊び王国、チリでびしょ濡れ「ラフティング」体験!

    海外の山遊び王国、チリでびしょ濡れ「ラフティング」体験!
    3月にオーストリアの雪山、6月にスイスの夏山を楽しんできて、この【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】でもたくさんの記事にしました。

    で、次に目指したのはチリの山々です! 「なんで山ばっかり行くんだよ~」と普通ならツッコミを入れられるところでしょう。でもその理由、「BE-PAL.net」の読者のみなさんならおわかりいただけるはず。……はい、「そこに山があるから」です。笑

    どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
    Text

    【柳沢有紀夫の世界は愉快!山遊び王国チリ・プコン旅・その1】

    ただの「細長い国」ではないんです!

    でも「ん? チリ? チリに山なんてあるの?」と思われる方もいるかしれません。私が「今度チリに行く」と伝えたときの反応は、日本人からもオーストラリア人からも100パーセント異口同音で「ああ、あの細長い国?」でした。

    まあ私が持っていたチリのイメージも「細長い国」でしたから、他人のことは言えません。笑

    でも考えてみてください。なぜチリが細長いのか? それは西側の太平洋と東側のアンデス山脈にはさまれているからです! つまり細い国中、どこでもすぐ山。だとしたら山を中心にしたアウトドアアクティビティが楽しくないわけない!

    しかも最高峰のオホス・デル・サラード山は標高6893メートル! で、富士山より高い4000メートル級の山々はどれくらいあるのかGoogle検索してみたら、AI先生から返ってきた答えが「チリにある4000メートル級の山の正確な総数は特定できませんが、同国の大部分を占めるアンデス山脈には、数百から数千もの4000メートルを超える山々が存在すると推測されます」

    ……なんともAIらしからぬ大雑把さですが、まあ推測をまるで事実のように言いきらないのはかわいいところです。

    というわけで今回からチリの山のアクティビティーを紹介します! その記念すべき第1回は「ラフティング」! はい、「ゴムボートでのスリル満点の急流下り」ですね。

    向かったのが中部のラ・アラウカニア州にあるリゾートタウンのプコン近郊の総延長で14キロメートルのコース。ラフティングのグレードは世界基準で1から6まであって、1がゆるやかで6が超激流になります。事前にもらっていた説明では今回のコースはグレード3から4とのこと。ちなみに東京近郊でラフティングの名所として知られる長瀞はグレード2なのだとか。

    店でウェットスーツを着用したあと送迎車に乗り30分ほどで移動。

    この地図の左のほうに描かれた大きな湖の真東で、上の細長い湖の真南あたりが出発地点です。
    この地図だとPIEDRA LA BALLENAと記された場所です。

    そこから西のプコン方面に向かい、ブルーの地図の左側枠外がゴールになります。

    さて現地に着いて最初は陸上で安全講習があります。「ボートから放り出されたときにはライフジャケットがあるのだからあわてずに。近くの場合はボートにしがみついてください。遠く離れてしまった場合はまず仰向けになって、背中を起こして、足を下流に向けて岩に背中からぶつからないようにして流されてください。絶対川の上で立とうとしないで。川底の岩が引っかかって前のめりになって倒れてしまうこともありますから」

    確かにボートから放り出されて離れてしまうとパニックに陥りそうですが、慌てないのが大切とのこと。

    「そして遠くに離れた場合は浮き輪を投げます。それをあなたが捕まえたら、ボートのほうに引っ張ります。そしてこの先が重要です。ボートの近くにまできたら、まずはあなたではなくパドルのほうを先にボートに上げてください。パドルの方があなたよりも大切だからです」

    このブラックジョークに笑いが起こります。パドルを先にボートに上げるのは、もちろんそれを持ちながらだったらボートに上がりにくいからです。

    さてラフティング中はカヤックに乗ったガイドたちも同行してくれます。そしてボートから放り出されたときは彼らも救助に当たってくれるそうです。

    「カヤックの前からはこういう風につかんでください」
    「後ろからならこういう風につかんでください」

    ガイドが体当たりで実演してくれます。ふと思い出したのはオーストラリアのモートン島で「砂すべり」をしたときのガイドのウェインさん。

    オーストラリアの砂の島で、なんだか『VIVANT』な砂すべりをやってみた

    日本のネイチャーガイドのみなさんも、特に外国人相手のときはアホになったほうがウケます。外国人旅行客は大抵「しらける」という言葉を知りません。たぶん。笑

    いよいよ乗船!

    そして3艘に分乗して出発です。一艘の定員はガイドを除いて6名ですが、私が乗った船は5名乗船。

    若干2名ほど「堂々やり遂げたぞ~」的な笑顔を浮かべていますが、終えたのは乗船だけ。笑
    私たちの船長の名前はアンドレスさんです。
    最初のほうは流れが緩やかです。

    ここでパドルの使い方の練習をします。「フォワードといったら前へ漕いでください。バックワードを言ったら後ろへ。ライトバックワードと言ったら右は後ろという意味だけど、左の人たちは逆に前へ漕いでください。レフトバックワードと言ったらその逆で左の人たちは後ろで、右の人たちは前へ」。

    そして「シットダウン」という指示もあります。「ボートが跳ねるようなところでは、放り出されないようにボートの内側に素早く移動して立膝になって座ってもらいます」とのことですが……特に最前列は幅が狭いので身長180センチの私では入りきらない。笑

    とにかくそんな感じでスタートですが、最初はペダルを使うこともなくただただ流されるだけ。まるで私の人生です。

    他のボートにぶつかったらにこやかに「向こうへ行け」とパドルで押しあいます。

    そして素知らぬ顔で近づいて行って、射的距離に入ったところで「いまだ!」という船長の指示のもと、パドルで水を掛け合ったりします。そんなふうにうららかな春の日差しの中、和気藹々と進みます。笑

    上陸もあるんです!

    昼寝したくなるくらいのうららかさですが、ラフティングならではの「スリル感」がゼロ。ツアー催行会社も何かイベントがほしいだろうと思ったのか、ガイドのアンドレスが「この先で上陸します!」

    けもの道みたいなところ1分ほど歩きます。
    そしてやってきたのは渓谷の下流。

    カヤックに乗ってボートのまわりでサポートしてくれたガイドが渓谷を降りてくるのを見せてくれました。間近で見るカヌーのスラロームはものすごい迫力です。

    ちなみにこの渓谷から泳いで……というか流されてラフティングのボートまで戻るというオプションもありますが、水が冷たそうなので私は陸路をもどりました。ちなみにチャレンジした人たちは「もう、サイコ~! なんでユキややらなかったの~」と自慢してくれました。舌をぶるぶると震わせながら。笑

    陽ざしは穏やかですがこの日の最高気温は10度くらい。ウェットスーツ着用とはいえ、水に入ったら当然冷たいです。

    さて再びゴムボートに乗ってのラフティング。いや、まだまだ浮いたまま流されるだけの「フローティング」状態ですが。

    出発から1時間20分後。進行方向に明日登山する予定のビジャレカ火山が見えてきました。
    本当に富士山みたいなシェイプです。

    流れがゆるやかでやることがないこともあり、ガイドのアンドレスにあれこれ聞いてみることにしました。

    このプコン旅でずっとお世話になったツアー催行会社「アミティーツアーズ(Amity Tours)」では、一年中ラフティングやカヤックのサービスは提供しているそうです。でも川の水位が上がりすぎると危険度が増すため、政府の指導でツアーは禁止。でも個人で楽しむ分には「自己責任」なのだとか。

    ちなみに事前にもらっていた行程表では難易度のグレードが3~4のコースと書かれていたのに、現地の説明では2~3と下がったのですが、こうした水位の変化が理由なのかもしれません。

    川の水位が上がるのは主に冬(南半球なので6~8月)。理由はその時期、雨が多いからだそうです。

    そしていよいよ激流へ

    なんてのんびり話をしていたら、「さあ、そろそろ漕ぐことが増えますよ~」とガイドのアンドレス。2つの川が合わさるところで流れが急になって、いきなり迫力が出てきてきました。

    ゴムボートの船首が水平から30度くらい上がったり下がったりしてラフティングらしさも出てきました。アンドレスの指示に合わせてパドルを必死で漕ぎます。

    他の人に撮ってもらった画像です。(写真:Kristen Kellogg/Adventure Travel Trade Association)
    でも画像だとやっぱり船首が上がったり下がったりの迫力は伝わりにくいですね。(写真:Kristen Kellogg/Adventure Travel Trade Association)
    マジで「荒波にもまれている」という状態なのですが……。(写真:Kristen Kellogg/Adventure Travel Trade Association)

    取材なので私はスマホを防水ケースに入れて首にかけておいたのですが、写真を撮る余裕がほとんどありません。撮影をしたい人はヘルメットにつけられる小型のアクションカメラがオススメです。

    船首がアップダウンするところは水も白くしぶき状になっています。
    渦を巻いているところも。

    激流のあとがまたまた過激

    そんな激流部分を何カ所か通過したあと、川の流れはゆるやかになりました。ところがここからがまた大変です。というのは「強い逆風」が吹き始めたのです。

    「流れがゆるやか」ということは「ゴムボートはあまり自然に前には進んでくれない」ということ。というか「逆風」で上流にもどされそうになるのです。

    ……てなわけでかなり長いことパドルをこぎ続けました。しかも先ほどの激流地帯で私のウェットスーツも濡れてしまい、強風で冷えます。晴れているのがせめてもの救い。

    結局3時間近く川の上にいました。陸に上がったところで送迎車が待っていてくれて、車内に置いておいた服をピックアップして、2つある小屋で着替えます。

    こちらが着替え小屋。

    でもトイレはなく、女性も「茂みで」です。まあ、「海外あるある」ですね。

    最後にコーヒーや紅茶やソフトドリンク、お菓子が用意されていました。

    明日はこの日のラフティング中に見たビジャレカ火山に登ります。

    【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら

    Amity Tours (今回のプコンでの各アクティビティーのツアー催行会社)
    https://www.amity-tours.com/

    CHILE TRAVEL(チリ政府観光局の旅行者用サイト)
    https://www.chile.travel/en/

    ATTA (ADVENTURE TRAVEL TRADE ASSOCIATION。アトベンチャートラベルに関する世界的な業界団体。今回のイベントを主催)
    https://www.adventuretravel.biz

    柳沢有紀夫さん

    オーストラリア在住ライター (海外書き人クラブ)

    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係

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