英ロングトレイル「COAST TO COAST」いよいよ出発! | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2019.03.11 イギリス横断人気トレイルC2Cを歩く!

    DAY 1 【St Bees to Ennerdale  総距離 22.5km】

    これから14日間、毎日平均22kmかそれ以上の距離を連日歩くことになる。

    それにはエネルギー満タンであるに越したことはないと思い、ズボンのボタンがはち切れんばかりにイングリッシュ•ブレックファストを頂き、スタート地点のFleswick Bayを目指す。

    いよいよC2C恒例の儀式の時がやってきた。

    まず登山靴をアイリッシュ海に浸す。これによって本当に海から海に歩いた証になる、とトレイルの発案者、ウェインライトは考え、歩く前に行なうように、と提唱した。

    海に登山靴を浸すアリー。

    次は、ゴールのRobbin Hood’s Bayまで連れて行く石探し。出発前はいかに荷物を軽くしようと、試行錯誤したものの、目に飛び込んできたのはおにぎり大の白い石と、梅干し程度の黄色い石だった。少し重いが、この「子」たちを旅の相棒にすることを決めた。

    スタート地点にある「Coast to Coast」のモニュメントの前でお決まりショット。

    波模様はトレイルの標高を示している。前半の数日間を乗り越えればあとはさほどきついアップダウンはないことがわかる。

    さあー、いよいよSTART!いきなり砂岩の崖沿いを急登する。

    セラフィールド核燃料再処理工場群。

    後ろを振り返ると遠くにセラフィールド核燃料再処理工場群が見えた。1957年に火災が起き、イギリス史上最悪の原子炉重大事故となった。大量の放射線物質が放出され、原子力廃止措置機関は2120年までに廃炉・除染作業を終了させるとしている。そんな途方も無く膨大な負の遺産に皮肉にも空からの光が差し込んでいた。

    対照的に前方にはのどかな田園風景が広がる。

    朝露で草花も煌めき、まさに平和そのもの。

    しばらくすると、昨日、出会ったエリザベスにトレイルで合流。

    朝露の麗しさに負けない爽やかな笑顔を見せてくれた。

    彼女は、荷物の配達サービスを利用している為、日中に必要な装備だけ担いでいるので、とても身軽な感じで実にうらやましい 。

    このあたりは海鳥の保護区でもあり春には5000羽ものウミガラスが岸壁に卵を産みにくるというので一緒に崖を覗き込むが、あいにく今回は時期が遅すぎたようだ。

    糞だらけで一羽も見当たらず少し虚しい。

    フットパスの多くは羊や牛が放牧されている牧草地に入っていき、それらを歩いていると、幾度もキッシングゲート(Kissing Gate)と呼ばれる人のみを通し、家畜が通れないように工夫が施された門を通過する。

    キッシング(Kissing )の名前の由来としては、2段階で門が開閉する際に門同士が唇のように軽く触れそうになるからだという説と、門は一人ずつしか通れないので先に通過した男性が門を閉じ、後の女性に「キスをしてくれたら通してあげるよ」というお茶目な交渉が行なわれたからだ、とも言われている。

    前方のSt.Bee灯台を目指して歩く。

    まさに空中散歩のように気持ちがいい。空気が澄んでいればマン島が見えるという。

    海との絆がようやく深まった頃、内陸に入る道に差し掛かかり、これからはひたすらイギリスの東岸を目指すこととなる。

    海にしばしの別れを告げる。

    St.Beeを離れる頃、蜂にも出会い、見送りにきてくれたようだった。

    しばらく歩いていると、オーストラリアからやってきたジェフ(80歳)とトレイルで一緒になる。彼のザックのサイドポケットには豪快にもウィスキーボトルが一本入っており、旅慣れた雰囲気がムンムン漂っていた。

    「僕はこれまでC2Cを4回歩いて、何度も道に迷い、ありとあらゆる失敗をおかしてきたよ。それでも再びここを訪れたいと思うのは、歩くたびに違う風景や出会いがあり、感動するからなんだ」と、話してくれた。

    「道」はこうして場所と場所をつなぐだけでなく、人と人をも繋いでくれる。

    昔の線路跡を活用した道や牧草地を抜け、Cleator 村と変化の富んだトレイルが続く。

    Cleator 村の住宅街。

    日差しが強くなってきた頃、Blackhow Woodに入り、少し休憩。

    針葉樹の植林地。

    野生のキノコ。お腹が空いていたが、念の為食べなかった。

    森を抜けると、今日の目玉、Dent Hill(352m)を息を切らしながら登る。

    振り返ると、歩いてきたルートがはっきり見える。

    家畜や動物が通れず人だけが越せる梯子型のスタイルと呼ばれる踏み越し段にもしょっちゅう出くわす。

    Ravan Craig Hillを下る。

    一見、何ともないような下り坂に見えるが、昨日のパブのオーナー、アランのアドバイスで、先日、ここで転げ落ちて大腿骨を骨折した人がいるとのことで、気を引き締めて、注意をして歩く。

    しかし、一歩一歩、膝に重心がかかるたびに、ザックの重さも加わることで激痛が走りぎこちない歩き方になる。

    そんな情けない姿をじっと羊に見つめられていると、応援されているようにもバカにされているようにも見える。

    歯を食いしばりつつも、何とかようやく無事に、今夜お世話になるB&B Low Cock Howに到着。

    口は笑っているが目は明らかに死んでいる。

    筋肉痛と膝の痛みで2階の部屋に上がるのも、やっとこ。B&Bなので夕食はないので、近所のインド料理屋のデリバリーを注文する。猛烈な勢いで食べるや否や、疲労と眠気に襲われた。今夜のベッドもベッドに扮したハンモックのごとく、バネはヘタレていた。しかし、そんなのも一切気になることなく、初日を歩き切った安心感も加わり、瞬時に深い眠りについたのだった。

    (実際歩いた距離26.2km, 万歩計39,104歩)

    写真・文/YURIKO NAKAO

    プロフィール
    中尾由里子 YURIKO NAKAO

    東京生まれ。4歳より父親の仕事の都合で米国のニューヨーク、テキサスで計7年過ごし、高校、大学とそれぞれ1年間コネチカットとワシントンで学生生活を送る。
    学生時代、バックパッカーとして世界を旅する。中でも、故星野道夫カメラマンの写真と思想に共鳴し、単独でアラスカに行き、キャンプをしながら大自然を撮影したことがきっかけになり、カメラマンになることを志す。
    青山学院大学卒業後、新卒でロイター通信社に入社し、英文記者、テレビレポーターを経て、2002年、念願であった写真部に異動。報道カメラマンとして国内外でニュース、スポーツ、ネイチャー、エンターテイメント、ドキュメンタリーなど様々な分野の撮影に携わる。
    休みともなればシーカヤック、テレマーク、ロードバイク、登山、キャンプなどに明け暮れた。
    2013年より独立し、フリーランスのカメラマンとして現在は外国通信社、新聞社、雑誌、インターネット媒体、政府機関、大使館、大手自動車メイカーやアウトドアブランドなどから依頼される写真と動画撮影の仕事と平行し、「自然とのつながり」、「見えない大切な世界」をテーマとした撮影活動を行なっている。
    2017年5月よりオランダに在住。

    好きな言葉「Sense of Wonder
    2016 Sienna International Photography Awards (SIPA)  Nature photo 部門 ファイナリスト
    2017  ペルー大使館で個展「パチャママー母なる大地」を開催

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