浜辺を駆ける白いミユビシギと並走!冬の砂浜でフォトジェニックなシーンを狙おう | 自然観察・昆虫 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.12.15

    浜辺を駆ける白いミユビシギと並走!冬の砂浜でフォトジェニックなシーンを狙おう

    浜辺を駆ける白いミユビシギと並走!冬の砂浜でフォトジェニックなシーンを狙おう
    寒さをものともせず波乗りを楽しむサーファーのそばで、健気に浜辺を駆けるミユビシギたち。寄せては引く波にあわせて忙しなく採餌する可愛らしい「ミユビーズ」に魅せられた筆者の撮影記と合わせて、冬の「推しドリ」をご紹介しましょう。今回は動画もお届けします!
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    近所での鳥見に飽きたころに見た、夕暮れどきの砂浜を駆けるシギの姿

    皆さんはどんなことをきっかけに野鳥観察にハマりましたか? 今までに私が見聞きして多いと感じたのはカワセミとの出会いですね。カワセミは一見目立つ色彩を持つ人気の野鳥ですが、身体は小さく遠目には意外と地味な印象の鳥です。でも、望遠レンズでその姿をクローズアップすると、やはりその彩りとともに頭や尾羽をぴょこぴょこさせる可愛らしい動きや、ホバリングから水中に真っ逆さまに飛び込む豪快な動きなど釘付けになってしまう魅力があります。

    多くの人が野鳥に興味を持つきっかけとされるカワセミ。

    私も、近所の川でカワセミを目撃したのが野鳥に本格的に興味を持つきっかけでした。もともと生き物好きであり、昔、野鳥を飼っていた父の影響で(かつてはウグイスやメジロ、アオジなどが普通に飼育されていた)、インコや文鳥などの飼い鳥以外の野鳥も身近な存在でした。

    カワセミは、そんな「籠の中の野鳥」とは色彩や姿形、動きがまったく異なる野鳥でした。カッコよくて可愛いカワセミにすっかり魅せられ、その後は近くの川へ通い、いつしか同好者とともにカメラをカワセミに向ける日常となりました。

    夕暮れの湘南海岸で採餌するミユビシギ。

    そんなある日、鎌倉に出かけた夕暮れ時に近くの海岸に立ち寄り、暮れなずむ江ノ島と富士山のシルエットを眺めて帰ろうとすると、砂浜を駆ける鳥の一群が目に入りました。波が洗う浜辺は夕日を受けて琥珀色に輝き、そこをちょこちょこと可憐な鳥たちが駆け抜けて行きます。私はそのシーンにすっかり魅了されてしまったのです。後から知ることになるのですが、そこに居たのはミユビシギやハマシギたちでした。

    ミユビシギの英名はSanderling。正い語源は不明だが、砂浜の小鳥を表しているとも言われる。

    写真好きのココロに火を点けた野鳥

    もともと中学一年の時から写真・カメラに夢中になっていた私は、被写体が野鳥であっても風景の撮影を楽しむように光線の具合や構図を意識してシャッターを切るのが好きでした。ミユビシギが駆ける砂浜やその場その時の雰囲気を切り撮ることは、そんな自分流の写真の楽しみ方にマッチしていました。

    フォトジェニックな時間といえば早朝や夕方。印象的な光が写真の表情を豊かにしてくれる。


    自分の野鳥撮影の心得として、いわゆる野鳥の「図鑑写真」を押さえるだけでは勿体無い、という想いがあります。なかなか思い通りにならず、ある種の緊張感を持って被写体と対峙する感覚こそが野生の生き物を撮る醍醐味だと思っています。それを再認識させてくれたミユビシギたちに感謝しています。

    ミユビシギに会えるのは秋から翌春

    まだ朝日が昇る前の時間、「ミユビーズ」の群れが待っていてくれた。

    ミユビシギの体長は20㎝ほど。見た目の印象はスズメより少し大きめです。日本では冬鳥に区分され、シベリアやアラスカなどで繁殖した個体の群れが毎年秋から翌春にかけて飛来・滞在するとされています。繁殖期以外、つまり冬の日本で見られるのは白っぽい冬羽の状態です。ちなみに繁殖期の夏季は赤褐色に黒っぽい斑がある夏羽に衣替えします。日本に早めに渡ってきた個体に夏羽が混じっていることもあります。

    不意に群れが一斉に飛び立ったかと思うと、数百メートル離れた浜辺に降り立った。

    ところで名前の「ミユビ」が示すように、彼らの足指は3本しかありません。鳥の指は「趾」(し)と書きます。多くの鳥の足は人間の親指にあたる第一趾(後趾ともいいます)、そして他の第二趾、第三趾、第四趾の4本から成りますが、ミユビシギには第一趾がありません。チドリ類もそうですが、これは退化してしまったからです。目にも止まらぬ速さで脚を動かすことができる理由は、この「三本指」のおかげなのかもしれませんね。

    ミユビシギは第一趾(後趾)が退化している。

    採餌のため浜辺を駆ける

    夕暮れの波打ち際で採餌をするミユビシギの群れ

    1羽1羽はとても小さなミユビシギ。彼らはいつも5羽から20羽ほどの群れで行動しています。自ら砂浜の波打ち際にやって来るのに、波が打ち寄せるとそれを避けるように陸側に逃げて行き、波が引けば再び波打ち際へ、という動きを繰り返しています。その動きは健気で微笑ましく、スマートフォンで動画を撮っている人の姿も時折見かけます。

    彼らはただ駆けているのではなく、時々砂の中にくちばしを差し入れて採餌しているのです。繁殖地と越冬地とでは食べ物が異ります。日本で越冬中のミユビシギは、主に甲殻類や貝類を採餌しています。時にはゴカイの仲間を引っ張り出している場面も目撃したことがあります。

    特に冬には粒の細かい砂浜に生息するフジノハナガイという僅か1cmほどの大きさの二枚貝の足の部分だけを捕食していることが判っています。この採餌場面はまだ撮影できていないので、今シーズンこそは成功させようと思っています。

    10〜20羽の群れで採餌しながら常に移動していくミユビシギ。

    会えば会うほどハマる「ミユビーズ」の魅力

    珍しく、波打ち際で休憩中の群れ。

    私はミユビシギたちのことを、愛情を込めて「ミユビーズ」と勝手に呼んでいます。彼らに会いに行くときは始発電車で出かけます。越冬地の一つである湘南の浜辺は広く、行けば必ず「ミユビーズ」に会える訳ではありません。最寄駅から海岸までは小走りで約5分。居てくれることを祈りながら海岸へ急ぎます。

    江ノ島から富士山まで見渡せる海岸のポイントに到着して双眼鏡を覗き、浜辺に群れる白い鳥たちを探します。そこからかなり距離がある場所であったとしても、レンズの向こうにミユビーズを見つけられればとりあえずは安堵です。もちろん会えない日もあります。

    動きを不意に止めたかと思うと、のんびり羽繕い。

    早朝の砂浜を駆ける「ミユビーズ」の近くに着いたなら、朝の光を意識してとにかくシャッターを切ります。望遠ズームと広角ズームを使い分けながら、そして彼らと併走しながら、気付けば数時間。かつてランニングで少しばかり鍛えた足腰も、砂浜ダッシュでヘナヘナ、という有様です。

    レンズ越しに見る群れとしての「ミユビーズ」の可愛らしさ、または一羽一羽をクローズアップした時の健気さと逞しさ。そして彼らが越冬地に選んだ湘南の海の美しさ。会えば会うほど新たな魅力を発見するミユビシギを観に、冬の浜辺を訪れてみませんか。

    望遠レンズでなくても情感たっぷりの撮影が楽しめるのが、ミユビシギ撮影の醍醐味。

    中村雅和さん

    野鳥好き編集者

    幼少期から生き物や鉄道に親しむ。プロラボ、住宅地図会社の営業マン、編集プロダクション、バス運転士、自然保護団体職員などを経てフリーの編集者に。現在はライターの仕事をしながら、バードウォッチング専門店 店長として勤務。

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