
【雪豹に会いに、インド・スピティへ 第7回】
標高4200メートルの厳寒の地で、雪豹の姿を探して

峡谷のキッバル側の断崖の端に集まった撮影者たちと、スキャナーと呼ばれる現地人のネイチャーガイドたち、そして撮影機材などを運搬する役割を担うポーターたち。
スピティの旅行会社が手配する野生の雪豹の撮影ツアーは、インド人の自然写真愛好家の間で人気なのだそうで、冬のスピティでは、現地の人々の貴重な観光収入源になっています。
僕の場合、かなりの長期間にわたって撮影に取り組むため、ポーターや移動用の車は雇わず、現地のスキャナーを1人だけ雇い、荷物の半分は自分で背負って、移動は徒歩やヒッチハイクという形にして、取材費用の節約を図ることにしました。

峡谷の対岸の断崖の中腹にある岩棚で、丸めた身体を寄せ合っている、2頭の雪豹。僕たちのいる側の断崖から、距離的には150〜200メートル程度とかなり近い場所にいるのですが、間を深い峡谷の高低差に隔てられているため、雪豹たちは人間の気配にそこまで警戒することもなく、のんびりと過ごしています。
この土地の特殊な地形が、野生の雪豹の観察に適した環境を生み出しているのです。

キッバル郊外の峡谷を主なテリトリーにしている2頭の雪豹は、一頭は雄でもう一頭は雌という、双子の兄妹でした。まだ2歳に満たない若い雪豹たちで、本来は母親の雪豹がまだ一緒にいるはずの時期なのですが、母親は前年の夏に病気か何かで早死にしてしまったらしく、以来、雪豹の双子は、一緒に過ごしながら生き抜いています。

成長した雪豹の体長はおよそ1メートルほどで、四肢はやや短めでがっしりと太く、険しい岩場を自在に歩き回るのに適しています。体長とほぼ同じ長さの太い尻尾は、身体のバランスを取るのに役立っているとか。目も眩むような断崖をものともせず、雪豹たちは、するりするりと器用に歩き回ります。

約1カ月にわたって、この雪豹の双子をひたすら探し、観察し続ける日々が始まりました。それは僕自身にとって、当初は想像もしていなかったほど数多くのことに気付かされた日々にもなったのです。