
インドと聞くと、とにかく暑い国、というイメージを持っている人は多いと思いますが、真冬になると、デリーはそれなりに冷え込みます。安宿の集まるパハルガンジの路上では、夜になると、チベット風の蒸し餃子、モモを売る露店が繁盛していました。
【雪豹に会いに、インド・スピティへ 第1回】
大都会デリーから、夜行バスでシムラーを目指す

冬のデリーは大気汚染がとにかく酷いため、屋外にいる間は不織布マスクが必須です。デリーに到着した翌日の夜、僕はデリーのカシミーリ・ゲートにあるバスターミナルに行き、ヒマーチャル・プラデーシュ州の州都シムラーに向かう夜行バスに乗りました。到着まで、およそ10時間かかります。

標高2000メートルの地にあるシムラーでは、灰色のスモッグが垂れ込めていたデリーとはうって変わって、冷えびえと澄み切った大気と、雲一つない青空が広がっていました。
スピティに至るまでのルートは、西側のマナリという街からのルートと、シムラーからキナウル地方を経由して東側からスピティに入るルートの二つがあります。しかし冬の間、西側からのルートは、クンザム・ラと呼ばれる峠が積雪で通行不能になってしまうため、シムラーとキナウルを経由する東側からのルートだけが、唯一の道となります。
シムラーから、キナウル地方のレコン・ピオへ

デリーに続き、シムラーでも1泊だけした僕は、翌朝発のバスで、キナウルの中心地、レコン・ピオの街に向かいました。この区間も、移動に10時間以上かかります。
レコン・ピオでは、2日間滞在ししました。この先にある国境付近の区間を通過する際に外国人が事前に取得しなければならない許可証(インナーライン・パーミット)を、この街で入手する必要があったからです。
取得手続きを代行してくれるはずの旅行会社のオフィスには、オフシーズンで客がいないからかスタッフが誰もおらず、少々焦りましたが、あちこちに電話をかけて探し出したスタッフに出勤してもらって、どうにか許可証を手に入れることができました。

レコン・ピオの街からは、晴れた日には、キナウルを象徴する聖山、キナウル・カイラスが間近に見えます。標高6050メートルに達するというその頂には、冬になるとシヴァ神が訪れて、ハシシをたしなまれるとも言われています。
僕の目指すスピティは、ここから北、さらにはるか彼方にあります。