
野点とは
野点は、日本の伝統的な文化の一つですが、現代においてもその魅力は色あせることがありません。まずは、野点がどのようなものなのか、基本的な心得を知っておきましょう。
屋外でお茶を入れること
野点とは、野外で抹茶を点てること、つまりアウトドアでお茶を入れることです。室内の茶室で行われる茶道とは異なり、カジュアルで格式にとらわれないスタイルが魅力です。
自然の音・風景に囲まれながら、お茶の香りと味を五感で感じるその瞬間は、心を落ち着かせ、日常の喧騒を忘れるひとときとなります。
野点に、特別な知識・技術は必要ありません。ただ自然を感じ、道具を大切にし、お茶を心から味わおうとする気持ちさえあれば、野点を十分に楽しめるでしょう。
アウトドアで野点を楽しむ3つのポイント
野点は、通常の茶道とはひと味違った魅力を楽しめます。しかし、準備を怠ると、せっかくの体験を台無しにしてしまうかもしれません。そこで、野点をより楽しむための三つのポイントを紹介します。
愛着の湧く野点セットを作る
お茶の道具は、個性やスタイルを反映するアイテムでもあります。キャンプギアを選ぶように、和の伝統美を感じさせる古典的なもの、現代風にアレンジされたものなど、色やデザインにこだわってみましょう。
道具は繊細なものが多いため、持ち運びの際には傷つかないように、クッション性のある素材で包んだり、しっかりと固定したりしておく必要があります。
お気に入りのバッグを、野点用にカスタマイズするのも一つの方法です。また、専用の茶箱や茶籠を用意すると、より本格的な雰囲気を味わえるでしょう。
好みのお菓子を用意する
野点をするときは、お菓子を用意するのがおすすめです。抹茶の苦味・渋味が、お菓子によって引き立てられ、その風味がいっそう豊かになります。
本格的な茶道の作法では、濃茶には生菓子、薄茶には干菓子が添えられるのが一般的です。しかし、野点においては、厳格なルールは必要ありません。
お気に入りのチョコレートやクッキーなど、好みに合わせたお菓子を選ぶことで、よりリラックスした雰囲気をつくり出せます。
子どもやお茶にあまり興味のない同行者も、おいしいお菓子があれば、一緒にアウトドアシーンでの野点を楽しめそうです。
すっきり片付けて帰る
キャンプから帰るときは、ごみやたき火の跡をしっかり片付けて、原状回復するのが基本です。野点も同じように、来たときよりも美しい状態にするくらいの気持ちで片付けを行いましょう。
コーヒーを入れるとフィルターや豆のカスが出るのに対し、抹茶はごみがほとんど出ません。油も使用しないため、お茶わんや茶せんなどの道具をさっと水ですすぎ、布巾で丁寧に拭き上げるだけで十分です。
アウトドアでの野点の魅力は、自然との調和を保ちながら心を落ち着かせられることです。片付けがすっきりと終わると、心からリフレッシュできるでしょう。
そろえておきたい野点アイテム

参考記事「キャンプギアで茶の湯[読者投稿記事]」
茶道具それぞれが持つ独自の魅力と役割を理解することが、野点の充実度をアップさせる手助けになります。ここでは、野点に欠かせない基本的なアイテムについて見ていきましょう。
抹茶
抹茶は、野点に欠かせないアイテムです。抹茶には大きく分けて、一般的に飲まれる薄茶と、格式高い茶席で用いられる濃茶があります。
濃茶は深い味わいで茶道の奥深さを感じさせてくれますが、初めての野点では、軽やかで親しみやすい薄茶がおすすめです。
抹茶を選ぶ際には、製菓用ではなく、お茶用のものを選びましょう。高級な抹茶は青緑色が美しく、視覚でも楽しませてくれます。
価格の目安は、10gあたり300~500円ほどです。この価格帯の抹茶であれば、その見た目の美しさと味わい・風味を堪能できるでしょう。
お茶わん
お茶わんも、野点に必要不可欠なアイテムの一つです。お茶わんを選ぶ際は、形状に注目しましょう。お茶わんの底から中ほどにかけての部分を、『見込み』と呼びます。
抹茶を点てる際は器の中で茶せんを振るうため、湯飲みのように見込みの狭いお茶わんは、お茶には向いていません。見込みの広いお茶わんを選ぶと、茶せんを振るいやすく、抹茶をきれいに泡立てられるでしょう。
ただ、野点の楽しさは形式にとらわれず、自由な楽しみ方をすることにあるため、手元に特別なお茶わんがなくても心配ありません。
見込みが広く、熱い飲み物を入れられる器であれば、家にあるお茶わんやキャンプの際に使うシェラカップでも、十分に代用が可能です。
棗(なつめ)
棗は、抹茶を持ち歩くための、丸みを帯びた小さな入れ物です。主に漆でできており、凝ったデザインや装飾が施されているものもあります。
棗を使うメリットは、抹茶をこぼさずに運べることと、湿気・光を遮断できることです。抹茶は湿気・光に弱いのですが、棗に入れることで風味・香りを損なわず、よい状態で保存できます。
しかし、アウトドアシーンでは、多くの道具を持ち運ぶことが難しい場合もあるでしょう。そのようなときは、飲みきれる分だけを入れておく小分け容器で代用することも可能です。
茶せんと茶しゃく
茶せんは、抹茶をお湯と混ぜ合わせるために使用する道具で、お茶に欠かせないアイテムです。竹でできており、細い穂先がたくさん並ぶ形状になっています。
薄茶を点てる場合には、八十立や百本立といった穂先が多い茶せんが適しています。抹茶をきめ細やかに泡立てることができ、味も見た目もより素晴らしいものになるでしょう。
一方の茶しゃくは、抹茶を取り分けるための道具で、細長い木製のスプーンのような形をしています。茶しゃくが手元にない場合は、スプーンで代用することも可能です。
アウトドアの野点におすすめのアイテム2選
野点に挑戦してみたい人から、本格的な野点にステップアップしたい人まで、それぞれにぴったりなアイテムを紹介します。便利なアイテムがあれば、きっとすてきな野点を体験できるでしょう。
スノーピーク「サヨウ」
「抹茶を点てるのは難しそうだ」と感じている人には、スノーピークの『サヨウ』がおすすめです。茶葉を使った気軽なお茶から、野点を始められます。
透明なデザインが特徴で、お湯を注いだ際に茶葉からお茶の成分がじわじわと溶け出し、広がっていく様子をじっくり観察できます。
ふたと茶こしが一体化しており、使用後の片付けも簡単です。風呂敷タイプの収納ケースが付属しているため、持ち運びや収納にも困りません。
お茶・紅茶などさまざまな飲み物を用意できるので、アウトドアだけではなく、自宅でも活躍するでしょう。
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- 商品名:スノーピーク「サヨウ」
- 公式オンラインストア:商品はこちら
スノーピーク
サヨウ
本体サイズ:ティーポット/φ100×130(h)mm、クリア湯呑み/φ78×43(h)mm、収納ケース(展開時)/380×380mm 重量:390g
モンベル「野点セット」
本格的な野点に挑戦したい人におすすめなのは、モンベルの『野点セット』です。お茶わん・茶せん・棗・茶しゃく・茶巾・盆の6点がそろっており、初心者でも抹茶を点てられるようになっています。
コンパクトサイズで持ち運びがしやすく、キャンプ・ピクニックなど外出先での使用にぴったりです。収納サイズは約115×120×135mmとなっており、リュックの中にも収まります。
また、セットに含まれるお茶わんは陶器のような風合いですが、実はメラミン素材で作られています。うっかり落としても割れにくいため、野外でも安心して使えるでしょう。
- 商品名:モンベル「野点セット」
- 公式オンラインストア:商品はこちら

まとめ

参考記事「キャンプギアで茶の湯[読者投稿記事]」
野点とは、日本の伝統であるお茶を、屋外で楽しむことです。自然の中で風や音に包まれながらお茶を点てていると、日常の喧騒を忘れられます。
特別な知識・技術は必要なく、自分のスタイルで道具やお菓子を選び、ゆったりとした時間を過ごせることが野点の魅力です。
ゆっくりとお茶を飲んでみて、キャンプでの野点にはまってしまう人も少なくありません。もしリフレッシュできたと感じられたのなら、こだわりの茶道具をそろえてみてはいかがでしょうか。