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2025.02.05

水を掻き出して魚を捕る「掻い出し漁」でエビや魚を!コンゴの森の民は日々の食材を自然から得ていた

水を掻き出して魚を捕る「掻い出し漁」でエビや魚を!コンゴの森の民は日々の食材を自然から得ていた
ボノボの調査地ワンバ村の人々は、焼畑耕作で主食の栽培を行いつつも、日々の食材は小規模な狩猟、漁撈、採集によって得ていた。少年少女たちも籠と鉈を持って毎日よく働く。彼ら彼女らが森で集めてきた食材のなかには、アスパラガスかタケノコかと思えるほど美味な植物の新芽もあった!

※写真はすべて湯本貴和さんの撮影

熱帯雨林に定住しつつ森の幸で生きるワンバの村人たち

ワンバの焼畑

コンゴ民主共和国ワンバにある焼畑。この写真ではキャッサバが植えられているが、他にもトウモロコシや陸稲が植えられる。

コンゴ民主共和国赤道州(2015年の行政区画改革後はチュアパ州)にあるボノボの調査拠点・ワンバ。ボノボ調査のため、早朝からヘッドライトをつけて村から森への路を急ぐ。ボノボが寝床から出る前に、昨晩の休場まで辿り着きたいからだ。

村から森に通う途中には、村人たちの焼畑がある。この土地に住む人たちは、ボンガンドと呼ばれている。彼ら彼女らは村に定住しながら焼畑耕作を営むとともに、この熱帯雨林で森の幸に依存した狩猟・漁撈・採集生活を送っている。

ボノボの長期的な調査は、彼ら彼女らの野生動植物の知識と、森での探索能力および身体能力に大きく依存してきた。

日常の会話は、彼ら彼女ら自身のロンガンドということばでおこなわれている。わたしたちとはコンゴ民主共和国共通語のひとつであるリンガラ語が主にコミュニケーションに使われる。また教育を受けた人たちはフランス語の読み書きもできるので、改まった席ではフランス語の会話にもなる。

ワンバの焼畑2

低木やツル植物に覆われた薮に火をつける少年たち。ワンバにて。

交通の便の悪さから、この地にはガソリンや電気を使う動力機械がほとんどない。チェーンソーもないため、原生林を伐り開くにはとてつもない労力がかかる。

世の中にはあまり知られていないことだが、湿気が蓄えられている熱帯雨林の原生林に、そのまま火をつけて大規模に燃やすのはまず不可能といってよい。

そのため焼畑耕作のために燃やすのは、いったん原生林の大木だけを伐ってよく乾燥させた後か、または伐採地から再生した二次林と呼ばれる林である。作物の植え付け前に、低木やツル植物で覆われた林に火をつけるのは少年たちだ。

焼畑には、陸稲、トウモロコシ、キャッサバなどが植えられている。かつては換金作物としてコーヒーが植えられたり、天然ゴムのプランテーションが盛んだったりしたことがあったが、いまでは交通の便が途切れているのですっかり下火になっている。

狩猟、漁撈、採集による食材集めは少年少女も大活躍

ワンバの少年たち

ワンバの森に向かう少年たち。手にはマシェット(鉈)とボコンベでできた籠をもっている。

人々の日常食は、焼畑の産物に加えて、狩猟・漁撈・採集で得られたものだ。狩猟も漁撈も採集も、個人あるいは少人数で極めて小規模におこなわれるのが大部分で、少年少女の活躍の場も多い。しばしば森のなかで、少年や少女の小さなグループに出会うことがあった。

彼ら彼女らは、手には小さなマシェット(鉈)と籠を持って、森に採集に出かける。便利な籠は、ボコンベと総称されるクズウコン科植物(Haumania liebrechtsianaなど複数種)の茎を割いて、そのヒゴを編んだものだ。

クズウコン科は単子葉植物で、オーストラリアを除く熱帯や亜熱帯に広く分布していて、日本にも鑑賞植物として植物園の温室や沖縄など暖地の植え込みで見ることが多い。

アフリカ熱帯雨林に分布するボコンベの仲間は竹状の節をもった茎がツルになって、森の低木層を長く延びていくものである。籠だけでなく、筌(うけ)などの漁具にも用いられる有用植物だ。

ワンバの少女

ワンバの森に向かう少女たち。手には種火を持ち、籠を額から背負っている。

マシェットは森で生きる彼ら彼女らの生活必需品で、多くはブラジル製で街から買ってくるものだ。焼畑の地拵えや樹木の伐採、薪の調整から肉や魚の調理まで、マシェットなしの生活は考えられない。

少年少女が持っているのは、オトナたちのお下がりだろう。マッチやライターなど現金で購入しなければならないものはすべてオトナの占有物であり、彼ら彼女らは焚火で熾になった種火を森に持っていく。

クズウコンの新芽、小魚やエビが食卓に並んだ

 女性の採集物でもっとも重要なのは、ベイヤであろう。ベイヤは、クズウコン科のMegaphrynium macrostachyumの新芽である。ベイヤが成長して大きな葉になったものをンコンゴと呼ぶ。これは食べ物などを包むリボケに極めて有用である。

少女を含めた女性たちは最低でも週に1回はベイヤやンコンゴを求めて森に入っていく。わたしたちの食卓にも、ベイヤの茹でたものが頻繁に出てくる。とてもおいしいもので、タケノコやホワイトアスパラガスにも似た食感と味だ。

ワンバの女性たち

森のなかでベイヤとンコンゴ(それぞれMegaphrynium macrostachyumの新芽と葉)を調整する女性たち。

クズウコンの新芽

茹でたベイヤ。タケノコやホワイトアスパラガスに近い食感と味だ。

いっぽうで少年たちは、ごく幼いうちは女性に混じって漁撈や採集をおこなう。とくに掻い出し漁、つまり湿地林のなかの小さな流れを堰き止め、水を掻い出して取り残された小魚やエビを獲る漁法に従事する。

コンベの少年と漁

森の小川で、掻い出し漁をおこなう少年たち。掻い出し漁は、女性の仕事とみなされている。

ワンバの掻い出し漁の小魚

掻い出し漁で得られた小魚の一部。

ワンバの食卓

掻い出し漁で得た小魚やエビは煮て日常の食卓に上がる。

収穫物は、簡単に煮て村人たちの日々の食卓に上がる。少年たちはだんだん成長して大きな川に出られるようになると、本格的な漁撈や狩猟に携わることになる。

湯本貴和さん

1959年徳島県生まれ。日本モンキーセンター所長。京都大学名誉教授。理学博士。植物生態学を基礎に植物と動物の関係性を綿密に調査。アフリカ、東南アジア、南米の熱帯雨林を中心に探検調査は数知れず。総合地球環境学研究所教授、京都大学霊長類研究所教授・所長を務める。京大退官後も旅を続け、調査を続け、食への飽くなき追求を続けている。著書に『熱帯雨林』(岩波新書)、編著に『食卓から地球環境がみえる〜食と農の持続可能性』(昭和堂)などがある。日本初の“食と環境”を考える教育機関「日本フードスタディーズカレッジ 」の学長も務める。

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