オーストリアで最も急勾配なラック式シャーフベルク登山鉄道と絶景山歩きの乗り鉄旅 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2024.04.15

    オーストリアで最も急勾配なラック式シャーフベルク登山鉄道と絶景山歩きの乗り鉄旅

    ヨーロッパ大陸の中央に位置するアルプスは、山好きのあこがれの地。日本の中央部にある山々もその名を借りて北アルプス、中央アルプス、南アルプスと呼ばれていますね。
    もしかしたら、「マッターホルンとかハードルが高そう!」と思っていませんか?

    ところが実は、気軽に行けるアルプスもたくさんあって、しかも絶景が楽しめるのです。

    ここは、オーストリアでもドイツとの国境からもほどほど近いヴォルフガング湖。この辺り一帯は起伏が激しく美しい、ザルツカマーグートと呼ばれる観光地です。「ドレミの歌」などで有名な名作ミュージカル「サウンドオブミュージック」の舞台としても知られています。

    標高差1000m以上、シャーフベルク登山鉄道で30分の乗り鉄旅

    赤い車体が鮮やかなシャーフベルク登山鉄道。

    シャーフベルク登山鉄道(以下シャーフベルク鉄道)は、オーストリアのラック式鉄道(アプト式)の中で最も急勾配だとされています。運行距離は5,85km、標高差1190m、最大傾斜が26%です。シャーフベルクアルム駅までは約30分(3月から4月下旬まではここが終着になります)。さらに二つのトンネルを通り抜け山頂駅まで向かいます。

    ヴォルフガング湖を出発してすぐは44パーミルと比較的緩やかですが、途中から常時ほぼ2500パーミルと急勾配になります。

    湖の水面と電車の窓枠の角度に注目ください!この急勾配。

    鉄道ファンの目線で見ると、オーストリアには興味の対象となりそうな鉄道が意外とたくさん。ただ実際に旅行の日程に組み込もうと思って調べると、そう簡単ではなさそうです。

    例えばこのシャーフベルク鉄道は、3月は時折晴天に恵まれるものの運行は週末のみ。それでも早春に訪れることができる数少ないアトラクションとして魅力的です。

    実は昨年2023年はシャーフベルク鉄道運行開始130周年。オーストリアにあり、かつ今でも運行可能な蒸気機関車の中で、最も古いものの一つがここシャーフベルク鉄道にあり、記念の年である昨年は数回運行されました。今年2024年も8月19日に運行予定です。蒸気機関車ファンにとってはたまらないイベントですね。チケットはオンラインにて3日前から販売開始です。(ちなみに今回私が乗ったのは2016年製のディーゼル機関車でした。)

    ただ鉄道ファンであろうがなかろうが、車窓からの眺めが林や崖、湖、野花など、絶え間なく変わり退屈する暇もないため、誰でも楽しめます。

    例えばクリスマスローズ。鉄道の窓からも登山道でも見かけました。我が家の庭にもありますが、こんなにたくさん自生しているのは初めてでびっくりしました。

    車窓からクリスマスローズもたくさん見えます。

    自然の雄大さを楽しめる、ここシャーフベルク。鉄道が建設される以前は、ウィーンの貴族やヴォルフガング湖周辺の富豪のための荷物や籠を担ぐ仕事をする人たちがたくさんいたそうです。鉄道建設には、イタリアからの労働者350人とラバ6000頭が力を発揮しました。

    ヴォルフガング湖駅には1893年製蒸気機関車Z1が展示されています。

    早速シャーフベルク鉄道に乗ってみよう!

    電車に乗ると、進行方向左手にヴォルフガング湖が見えます。車体がかなり上に向かって傾斜した状態で進むので、進行方向を向き、かつ左側に座わるのが理想です。

    3月いっぱいは土日のみの運行。鉄道ファンの同行者が、「以前は山頂まで行ったのに、なぜここで終点?」と残念がっていたので、鉄道の従業員さんに聞いてみると、「山頂にはまだ雪があるから、4月末にならないとね」とのこと。

    鉄道で標高542mからアルム駅のある1360mまで一気に

    おおよそ樹木限界線にあるアルム駅で電車を降りると、目下に広がる緑と空や湖の青、電車の赤と鮮やかな色が目に飛び込んできます。写真を撮りたくなるところですが、下車したばかりの人が我先にと記念撮影をするので、ぐっと我慢。時間を無駄にせずまず山歩きをし、早めに戻ってきて撮影するのが賢いでしょう(山の天気は変わりやすいのでこの時点で天気が良ければ念の為1枚撮影しておけば安心)。復路の時間を確認したら、はいスタートです。

    見晴らしの良い山の上、湖を見ながらのハイキング

    駅から山頂に向かおうとまずは標識をみると、山頂までは1時間。ということは写真をゆっくり撮り山頂をしっかり楽しんでも、往復で2時間もあれば十分です。

    私は運動とは縁がない割に、山道を含め歩くことは全然平気。ただこの日は鉄道に乗り、写真を撮っておしまいだと思っていたので、山登りをする用意を全くしていませんでした。洗い立てのジーンズとスニーカー(幸いリュックサックに水500mlとスカーフがあったから良いものの)という出立ち。

    道標には山頂まで1時間と書かれています。

    家族や仲間とは時々山に出かけるのですが、一人で山登りをしたことがなく、方向音痴なので多少心配。ですが頂上までは道に迷っても線路を辿れば良いわけですし、同じ鉄道で来た人たちがすでに山道を歩いているはず。見晴らしも良いし道も比較的歩き易く子供連れでも大丈夫そう。ということで軽快に歩き始めました。

    積もった雪に野生動物の足跡が!

    案の定、登山道の印を見逃したのか、私は途中から違う道に出ていたようです。近くを走る線路を見つけたのでそこに軌道修正したのですが、その線路はどんどん雪に埋もれ、これ以上行けない状態となりました。

    靴が良くないのでそろそろ引き返さなきゃ。

    ここで仕方なくUターンします。

    先ほどから何度か動物の足跡や糞があり気になっていたのですが、ちょうどここにも足跡が。

    何の動物の足跡かなぁと思いつつ収めた証拠写真。

    元来た道に戻ろうと、体の向きを変えようとしたその時のこと、偶然見つけた動物の群れ。

    足跡や糞を残していった動物発見。 カメラのレンズを一番望遠(マイクロフォーサーズ150mm  35mm判換算300mm相当)にして撮影したシャモア。

    これってヤギ?

    その後偶然やってきた二人の若い女性に、「ヤギがこの先にいたよ」と言うと、「ヤギ? あ、それはシャモアだわ!」と教えてくれました。シャモアという日本語も、ドイツ語のGämse(ゲムゼ)も私には新しい言葉でした。

    いかにも登山という服装の二人の背中をちょっと恨めしく眺める。

    彼女たちはそのままこの雪の道に消えていきました。そもそも普通の出立ちの私とは装備が違います。私だって登山シューズ履いていたら、雪が積もっていようが歩いたのに。

    残念に思いながら引き返してすぐに、正しい登山道を見つけました。

    よかった。道を間違えたからこそシャモアに出会え、路線が雪に埋もれていることも確認できたわけだから、寄り道も結果オーライです。

    頂上まではもう少し

    晴天に恵まれたこの日、適度に人の往来がありました。

    頂上からすでに戻ってくる人もいたので「どうだった?」と聞いたら、「風がかなり冷たいよ」との答え。私はこの時点でコートとカーディガンを脱いで半袖でしたが、耳が冷たくてちぎれそうなのでスカーフを巻いて歩いていました。山歩きには帽子と手袋は必要ですね。

    前方を見上げると最終駅やホテル、レストランと思われる建物があります。

    頂上まではもう少し。

    時計を見ながら考えました。山頂に行くのは簡単なことだけれど、私はここまで見てきた景色に満足。普通の運動靴で何も準備しないでこのまま駆け上がり、雪で足を滑らして骨折ったらどうする?(しかもこの時私は通訳の仕事で出かけていて、その合間のプライベート旅行中でした)。欲張らないことも美徳!と今度こそ本当に引き返すことにしました。

    改めて来た道を振り返ってみると、最高の眺めです。あっちにもこっちにも湖があります。

    ほぼどこにいても湖が見える。

    道を間違えたり、小走りで行ったり、写真をじっくり撮ったりしながら、私は歩き始めてからここまで1時間ほど。道標で表示されている目安時間の3分の2もあれば普通は辿り着くのですが、今回はまだ山頂にも到達していません。

    復路、先ほど私が追い越して行った人の良さそうなご夫婦に出会いました。私のことを覚えてくれていてちょっと嬉しい。

    先ほど追い越し際にお話ししたご夫婦。

    一気に下山

    道が険しくない分、軽く走りながら一気に下山。その後鉄道で再びヴォルフガング湖まで降りた後、湖を見ながらビールと昼食を楽しんだことは、言うまでもありません。

    オーストリアのビールを飲みながらヴォルフガング湖を眺める。

    オーストリアのビールはまだまだ日本ではあまり馴染みがないですが、美味しいビールがたくさんあります。

    シンプルだけれど美味しい魚料理。料理が届くまでにはビールはかなり減っているのはご愛嬌。

    番外編 : もし上まで登っていたら

    後で分かったのは、この山頂には本当の絶景が待っていた、ということ。

    これ以上美しい景色はない、と思うくらい始終美しい風景に囲まれていたのに、もっと美しい景色があったのだそうです。なんといっても、ここはオーストリアの山と湖の最も美しい風景が広がるスポットと言われているくらいですから。

    山頂と絶壁。©️Salzburg AG Tourismus GmbH

    山頂に向かって伸びる鉄道路線とパノラマ風景。©️Salzburg AG Tourismus GmbH

    私が書きました!
    ドイツ在住ライター
    吉村美佳
    2002年12月からドイツ・バイエルン州に在住。「旧市街とシュタットアムホーフ」と「ローマ帝国の国境線」という二つの世界遺産を擁するレーゲンスブルク市の公認ガイド。日本人に知られていないこの町について、認知度を上げることがライフワークの一つ。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

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