著述家、編集者、写真家・山本高樹のタイ辛旨縦断紀行③
チェンマイで見かけた、コロナ禍からの復活の兆し
2020年から始まったコロナ禍の影響で、多くのショップやレストランが閉店の憂き目に遭った、タイ北部の街、チェンマイ。それでも、数日間にわたる取材で街を巡っていると、再び戻ってきた海外からの観光客の姿とともに、彼らを受け入れるべく始動した店で、現地の人々がかいがいしく働く姿も、あちこちで見かけました。
チェンマイ旧市街のワット・プラ・シンという寺院の近くにオープンしたカフェ、アカ・アマ・プラ・シンは、タイ北部の少数民族アカ族の村で、持続可能な農法で栽培されているコーヒーを販売するブランド、アカ・アマ・コーヒーが経営するカフェの2号店。ここはどこの国か一瞬わからなくなるほど瀟洒な雰囲気の店内で、芳醇ですっきりした味わいのコーヒーを楽しむことができます。おいしかった……。
ワット・プラ・シンの近くの路上で、ロット・デーン(赤い車)とも呼ばれるソンテオ(乗り合いタクシー)と料金交渉をしている旅行者たちを見かけました。しばらく前までは、こうした何気ない光景すら、コロナ禍によってこの街からは消えてしまっていたのかと思うと、この街で観光産業に従事していた人々の苦労が偲ばれます……。
チェンマイの旧市街の路上に駐車されていた、トゥクトゥク(三輪タクシー)。タイの交通手段といえばこれ、というイメージですが、最近はトゥクトゥクもソンテオも、急速に台頭してきた配車アプリのGrab勢に押されているという話も聞きます。とはいえ、トゥクトゥクはやはり、佇まいが絵になりますね。
老舗のカオニャオ・マムアン、そしてガイヤーン
タイでは一年のうちでも比較的過ごしやすい季節だったとはいえ、カメラザックを背負って日中ずっと動き回っていると、さすがに消耗してきます。この日は水分補給とおやつをいただきに、ターペー門の近くにあるサイロムチョーイという老舗のお店へ。カオニャオ・マムアンとマンゴースムージーを注文。カオニャオ・マムアンは、生のマンゴーにココナッツ風味の蒸したもち米を添えたもので、甘いマンゴーともち米の甘じょっぱさが奏でる無限ループが、やみつきになる味です。
そしてこの日の夕食は、ガイヤーン(鶏肉の炙り焼き)がおいしいことで有名なチェンマイの老舗、エスピー・チキンへ。閉店時間が17時なので、その少し前に滑り込みました。ガイヤーンのハーフサイズとかき菜炒めを注文し、手の指を脂でぎとぎとにしながら、熱々の炙り鶏肉を手づかみで、わしゃわしゃっといただきました。いやあ、旨い……本能に刺さりますね……。
サイロムチョーイやエスピー・チキンといった、チェンマイを代表する老舗の店たちが、どうにか無事にコロナ禍を切り抜けたことを知って、個人的にも少しほっとした気持になりました。
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取材協力:
『地球の歩き方タイ 2024〜2025』
(地球の歩き方 2023年6月8日発売)