台湾の様々な文化が交わるトレイル「樟之細路」を歩く【プロハイカー斉藤正史の台湾トレイル旅 vol.5】
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    2023.05.26

    台湾の様々な文化が交わるトレイル「樟之細路」を歩く【プロハイカー斉藤正史の台湾トレイル旅 vol.5】

    日本で唯一のプロハイカーとして、世界各国の数百kmから数千kmにおよぶロングトレイルを次々と踏破している斉藤正史さん。2022年12月から2023年1月には、1カ月以上かけて台湾を巡りました。そんな斉藤さんによる「台湾トレイル体験記」をお届けします。vol.5は、台湾の国家トレイルのひとつ「樟之細道」についてです。

    樟之細道ってどんなトレイル?

    「樟之細路」の英語名はRaknus Selu Trailです。「Raknus」は、台湾の先住民族の言葉でクスノキという意味。「Selu」は「細路」で、客家(ハッカ:中国大陸北部から移民してきた民族です)語で「小道」という意味です。この異なる2つの言葉を組み合わせて付けられた名前からも、このトレイルが先住民族と客家民族にまつわることがわかります。両民族は、かつて土地や経済的利益を争って衝突を繰り返していたそうですが、現在では協力して暮らしています。

    「樟之細路」は、台3線沿いの、桃園龍潭から台中東勢までの古道や農業道路、小道をつないだ道で、新埔、関西、芎林、竹東、横山、北埔、峨嵋、南庄、三義、頭屋、獅潭、公館、大湖、卓蘭など、客家の10以上の村を通ります。総延長400kmの道のりですが、本線は張直渓道路運行で約220kmです。この本線から枝分けれして無数のルートがあります。今回は、本線である張直渓道路運行をスルーハイク(長距離トレイルを端から端まで歩くこと)します。

    初日から盛りだくさん

    おそらく樟之細路のスタート地点らしい場所で記念撮影。

    おそらく樟之細路のスタート地点らしい場所で記念撮影。

    樟之細路の初日は、朝から雨に降られ、駅からはバスでトレイルの起点に向かったのですが、車内は満員でぎゅうぎゅう。大きなバックパックを背負った僕があたふたしていると、バスの運転手が降りてきて、何やら話してきました。なんとなく邪魔じゃない場所に誘導されたような感じで。とっさの時に言葉がわからないのはなかなか大変。そのまま満員の車内は全く人が減る様子もなく、目的のバス停で何とか降りて、ようやくトレイルの起点、鯉魚伯公(りぎょぱくこうびょう)というお寺に着いのでした。

    特に何かがあるわけでもありませんでしたし、ここでいいのかもわかりません。お寺の方にお茶をご馳走になってから、多くの人で賑わう町を歩き始めたのでした。

    事前に調べたのですが、樟之細路の紙地図はありませんでした。こんなとき頼りになるのはGPSです。町を抜けて公園に入ると、多くの方が歩いていました。大きなバックパックを背負って歩く僕が珍しかったのか、多くの方に話しかけられました。もちろん言葉は通じません。身振り手振りで、通じないときは樟之細路のスタンプ台帳を見せると多くの場合頷いてくれるのでした。

    道が幾つか分岐する箇所があるのですが、一部消失しているルートもあります。僕は道があるルートを選びながら歩いていきました。実は、初日は泊まるポイントは決めていませんでした。なんとなくこの辺みたいな感じで歩いていくと、結構早めに予定地に着きました。GPSで確認すると1時間位歩くとキャンプ場があるようでした。

    一応色々とチェックしながら歩いていたのですが、Googleマップの情報とは少し違う場合が多くありましたGoogleマップで宿泊の出来る場所は、ピンクのベットのアイコンで表示されているのですが、のぞいてみると、農場だったり、飯屋さんだったり、公園だったり、営業していなかったり…。

    樟之細道はこのマークが目印になり、注意して見るとよく見かけました。

    樟之細道はこのマークが目印になり、注意して見るとよく見かけました。

    どうやら割と頻繁にいるそうです。台湾ハブかな?

    どうやら割と頻繁にいるそうです。台湾ハブかな?

    宿泊場所のあてが外れて…

    少し悩みましたが、とりあえず時間もあるしキャンプ場を目指すことにしました。農村地帯を歩き、ようやくキャンプ場らしき場所まで来たのですが、閉まっている様子。困った僕は、近くの小屋でブドウの選別作業している人たちに話しかけてみました。英語も日本語も通じません。身振り手振りで話していると、どうやら隣に住んでいる人が英語が話せるようで、間もなく帰ってくるそうでした。翻訳アプリで一方的に聞いてわかったことは、この辺に泊まる場所がない事と、キャンプ場は土日しか開いていないという事でした。ブドウをもらい、食べながらしばらく待つと、お隣さんの彭(ホウ)さんが帰ってきて、僕の宿泊場所探しを手伝ってくれることになりました。

    なぜか、このエリアはオブジェ多めでした。

    なぜか、このエリアはオブジェ多めでした。

    なぜか、このエリアはアニメキャラ(?)も多めでした。

    なぜか、このエリアはアニメキャラ(?)も多めでした。

    彭さんの車に荷物を入れ、当てのない泊まれる場所探しが始まりました。彭さんは、トレイルの存在を知りませんでした。とりあえずGPSを見せてトレイル上でテントが張れそうな場所を見てもらいました。やはり適当な場所は無さそう。唯一、お寺があったので、とりあえずそこを目指すことにしました。

    途中、江記永安喜餅旗艦店という有名なお菓子屋さんに寄って月餅みたいなお菓子を買ったのですが、彭さんは美味しいケーキ屋さんといっていました。きっと該当する単語が浮かばなかったのだろう。

    残念ながら、予想に反し、お寺は閉まっていました。僕は「水さえあれば駐車場にテントを張るから大丈夫」と言ったのですが、彭さんは近所の人に色々と話を聞いてくれました。鶏の首をもって自転車に乗っていたオジサンから、この家に行ってみてと言われました。彭さんが「MASA、あのニワトリは晩御飯だね」といい、なんだか台湾らしいと思いました。

    結果的に、お寺の直ぐ近くの劉さんのお宅に泊まることに。劉さんご夫婦は70代後半位の方で、お子さんたちは皆さん家を出て台北で暮らしているそうでした。英語も日本語もわからない劉さんご夫婦、中国語がわからない僕のために、彭さんは遅くまで夕食に付き合ってくれました。彭さんが帰ってからは、スマホももっていない劉さんご夫婦とは、身振り手振りでコミュニケーションをとりました。劉さんご夫婦も不安だったろうと思います。翌朝、ごはんをご馳走になり、お礼を伝えて出発しました。言葉が通じなくてもコミュニケーションは取れるものだなと改めて実感しました。

    彭さん(左)と劉さんご夫婦

    彭さん(左)と劉さんご夫婦。

    そして、この日以降、彭さんは樟之細路を歩いている途中だけでなく、台湾滞在中のよき相談者になってくれたのでした。樟之細路の道中は、たくさんの出会いがありました。台湾のトレイル協会に紹介していただいた李先生にお世話になったり、泊めてもらった小学校の先生方のお世話になったり、日々たくさんの出会いに恵まれ、素敵な時間を過ごしながら歩いて行くのでした。

    小学校に泊まらせてもらったり。

    小学校に泊まらせてもらったり。

    お寺に泊まらせてもらったり。

    お寺に泊まらせてもらったり。

    馮さん(左)、李先生(右)と。樟之細路拠点で李先生のお住まいの藍色小屋にて。

    馮さん(左)、李先生(右)と。樟之細路拠点で李先生のお住まいの藍色小屋にて。

    次回は「樟之細道」ゴール編です。

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。

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